Fashion and Textile
Museum
83 Bermondsey St.
London
SE1 3FX
Tel: 0207 403 0222
駅:London Bridge
www.ftmlondon.com

展覧会:
My Favourite Dress

文:Nagako Hiratsuka
写真:Nagako Hiratsuka
& Patrick Anderson
Direction:Toyoko Ito





Photo: Nagako Hiratsuka, 2003©

テムズ河の南、デザインミュージアムやシティホール等の立ち並ぶ地区に、ファッションデザイナーのザンドラ・ローズがプロデュースしたファッション・アンド・テキスタイル・ミュージアムが登場。

ロンドンブリッジから南に抜けると広がる静かな住宅地。そこに突然そびえたつライトオレンジとピンクの四角い建物は、見過ごすにはあまりにも印象的。偶然に見つけたとしても、つい中が気になって入ってしまうような不思議な魔力を漂わせています。

構想に6年をかけて、今年の春にやっと完成したこのミュージアム。エントランスを入ると、ショッキングピンクの高い壁がいきなり目に入ります。右手にはショップ、ブルーが鮮やかな通路を抜けると奥はエキシビションスペース。


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閑静な住宅街に忽然と現れたザンドラ・ローズの「おもちゃ箱」。ライトオレンジとピンクが眩しい建物は メキシコの建築家リカルド・レゴレッタによる設計。
 

 


入り口を入ると中はピンクとブルーの世界。インフォメーションの横の壁にはハート型に切り抜かれたデザイナー達の顔写真が貼られ、ラメのような輝きを見せていました。こういう遊び心のある演出にも、美術館を開くのが永年の夢だったというザンドラ・ローズの思い入れが感じられます。

 

Photo: Patrick Anderson, 2003©

黄色で枠どられたショップの入り口をくぐると、中には誰もがくつろげるソファのセット。売られているグッズは、ザンドラ・ローズ(Zandra Rhodes)本人のイメージスケッチやエキシビションのドレスのポストカード。勿論、彼女のデザインしたバッグやドレス、家具も置いてあります。ショップの奥にはトイレ。その方面に厳しい私は、勿論こちらも真っ先にチェック。中は何の変哲もなく少し残念でしたが、ショップからそこに続く廊下は壁一面が淡いオレンジ。よく見るとオレンジ色の和紙のようなものが壁に貼ってありました。そのテクスチャーと色合いがなんともほっとする感じでよい具合。

今回これを書く目的で初めてこのミュージアムを訪れてみましたが、まずこの色の洪水というか色のおもちゃ箱に圧倒され、子供が抱くようなドキドキ・ワクワク感を密かに募らせてしまいました。さらに何気なく床を見ると、埋め込まれたビー玉や星や丸などのきらきらひかるシールが床一面を覆い、訪れる人達を奥の空間へと導いてくれているようでした。私もそれに足並みをそろえるように奥へと進んでみると、黒い布で壁面をすべて覆われた暗いスペースに、沢山のドレスが天井からワイヤーで吊られて展示されていました。



照明を落としたスペースに浮かび上がるようにドレスが吊るされた展示室。各ドレスの足元には、オレンジのアクリル板で立体的に綴られたデザイナーからのコメントが。展示は正面の黄色の階段を上って二階へと続いていました。
 

Photo: Nagako Hiratsuka, 2003©

「My Favourite Dress」と題されたこの展覧会では、今をときめく若手から大御所まで、総勢70人のデザイナーの一押しだったりお気に入りだったりするドレス70体が紹介されていました。ドレスが吊られたワイヤーには、小さなライト3つとドレスを回転させるためのモーターがついていて、これに会場のどこからか吹いてくる風があわさり、ほの暗い空間にいい感じの演出効果をつくりあげていました。日頃、人が着て有機的な状態になった「服」しか目にしていない私は、天井から吊られて無機的にクルクルと回転し続ける「服」に、未知のものに出会ったかのように圧倒されてしまいました。

それぞれのドレスの足元には、デザイナーの名前と年代、そしてそのドレスのコンセプトやそれを選んだ理由、またはドレスが作られた年代のデザイナーの動機などが、オレンジのアクリル板で立体的に綴られていました。イギリスのデザイナーとして世界的にも有名なヴィヴィアン・ウェストウッドは、私達からするとヴィヴィアンらしくないような、シンプルでフラットなワンピースドレスを出品。同じくイギリスで、現在若手のなかでもイチ押しのマーカス・ラッファーは、クラシックな雰囲気を漂わせた白と黒の膝丈のドレスをチョイス。

 

Photo: Patrick Anderson, 2003©

なかでも私の目を引いたのは、一着の元は純白だったであろうウェディングドレスです。周りのデザイナーズドレスに比べひとまわりもふたまわりも小さく、しかもその裾はやぶけています。年代は1960年。全てのドレスがデザイナーの作品だと思い込んでいた私は、その違和感に思わずじっと立ち止まってしまいましたが、よくよく足元を見ると、ラッセル・セイジのチョイス。そしてそのウェディングドレスは、彼の母親が結婚したときのもの。その一着の古びたドレスこそ今回のエキシビションの隠れたコンセプトなのでは、と感じました。

私は自分が服を作る側の人間でありながら「My Favourite Dress」の意味するところをただ単に「デザイナーが自分の作品を出品する展示」だと短絡的に考えましたが、それよりももっと、自分に影響を与えた服だとか自分のオリジンである服といった意味合いを含んでいるのではないでしょうか。そういった目でもう一度ドレスたちを見直すと、いろんな思いや言葉が伝わってくるようでした。それが何かは人によっても違うので、ぜひ一度足を運んでそれらを感じてください。