1月29日

マイケル・ランディ&クリス・オフィリ

 

先週紹介した展覧会のなかから、まずはYBA系二名、マイケル・ランディとクリス・オフィリの展示を観てきました。下はそれぞれのクイック・レポート。

Michael Landy:Art Bin @ South London Gallery
バブル崩壊の後はアート破壊か。またもや必見の展示が始まった。ロンドン南東ペッカム・ロードに面するサウス・ロンドン・ギャラリーに入ると、いきなりマンモス級の「ゴミ箱」に遭遇。容積にして600立方メートル、猛獣の檻のようにがっしりとした鉄筋の容器が床一面を占拠し、白手袋をしたスタッフがごみ箱の縁から美術品を放り投げていく。「ダーン!」という炸裂音とともに、キャンバスの背中がぼっきりと折れ、辺りから拍手と歓声が湧き上がる。

破壊の王者ことマイケル・ランディ《Art Bin》の中には、昨晩のオープニング開始の時点で、既に30点ほどの「ゴミ」が散在。そのなかには、デミアン・ハーストのダイヤモンド・スカルのプリントなどお馴染みの作品もあったが、これらはみな作家やコレクター自身から寄せられたもの。ギャラリーのウェブサイトを通じて廃棄を申し込める仕組みになっている。「インベストメント」を合言葉に、猫も杓子も買いまくったアート。有名美大名を担保に売りまくられたアート。不要あるいは駄作、売れ残りの美術品をお持ちの方は、この際にご利用してみては如何か。捨てることに変わりはないが、ランディのゴミ箱アートの素材になれる。お持ちでない方は、アートの死をとくと鑑賞しましょう。3月14日まで。

 


Michael Landy: Art Bin展の展示風景から
Photo: Toyoko Ito

Chris Ofili @ Tate Britain
象のフンを仕上げに使ったアフロポップな絵画で知られるクリス・オフィリの絵画展が、テート・ブリテンにて開始。4個も5個も気前よくフンをつけた初期のアブストラクトな作品から、《No Woman, No Cry》や《The Holy Virgin Mary》などのターナー賞受賞の頃の作品、最後の晩餐の構成をとる絵画13枚仕立てのオフィリ版チャペル《The Upper Room》など、大作という大作が勢ぞろいしている。

また、オフィリがトリニダード島に移住した2005年以降の近作も多く、環境の仕業か、スタイルの豹変ぶりが見どころ。特に圧巻なのが、玉虫色に怪しく光る濃紺て描かれた《Blue Rider》シリーズで、目が慣れるにつれて黒っぽい背景から絵柄が浮き上がってくる微妙な色使いがなんとも素晴らしい。YBA世代の作家は絵が描けぬことで有名だが、オフィリは例外。モチーフがいかに軽かろうが、あの超微細な筆さばきと格別な色彩感覚は、天賦の才能の証。上のゴミ箱に入れてはならぬ傑作だ。会場はテート「ブリテン」の方。目印は空に翻るアフリカンカラーのユニオンジャック。5月16日まで。

 
Chris Ofili展の展示風景から
Photo: Toyoko Ito


 

1月21日

展覧会ハイライト

 

一月も早くも下旬。年明けから続いた雪もひと段落し、毎年恒例の冬のアートフェア「London Art Fair」も先週末に終わり、新たな展示と共にアート業界が活気づいてきました。最近届いたリリースの中からこれから春にかけての展覧会ハイライトを紹介したいと思います。

依然として根強い人気を誇っているのが、アジアン・パワーというかインド周辺。V&Aのマハラジャ展が先週末に終わったばかりですが、今後もあの類が目白押し。

その筆頭が、今日から始まるインド、パキスタン、バングラデシュの写真史150年に焦点を当てたホワイトチャペルの写真展「Where Three Dreams Cross」。ロンドンではこれまで、アジアに焦点を置いたまともな写真展が皆無に等しかっただけに、この展示は見逃せません。

また、同じくインドが焦点といえば、来週から始まるサーチ・ギャラリーのアジア・フォーカス第二弾「The Empire Strikes Back」展(1月29日〜)と、16世紀から19世紀のインドの肖像画を紹介するナショナル・ポートレート・ギャラリーの絵画展(3月11日〜)も、注目の大型企画。まとめて見れば、古典・現代さらには写真とかなりバランスよくインドのアートを吸収できそう。

一方、YBAことブリット・アートの周辺では、来週から始まるテート・ブリテンクリス・オフィリ展(1月27日〜)と、サウス・ロンドン・ギャラリー(SLG)マイケル・ランディ展(1月29日〜)、2月中旬から始まるICAビリー・チャイルディッシュ展(2月17日〜)あたりが話題を呼びそうな感じ。

そのなかでも特に注目したいのが、2001年のアート・エンジェルの企画で所持品を一切合財システマティックに廃棄したマイケル・ランディの展示。今回のSLGでの個展「Art Bin」でも似たような路線がとられるようで、要らない美術品を一般から募集し、会場が美術品のゴミ捨て場になるという(SLGのサイトで既に作品の募集が始まっています)。また、トレイシー・エミンの元彼かつ初期の影響者で、一部の層でカルト的な人気を誇るマルチタレントのビリー・チャイルディッシュの個展も、その存在が影に包まれていて不明なだけに興味津々。

また、これらの展示と並んで外せないのが、ここ数年人気の「アート寄りのデザイン」系の展示。これまで美術館で紹介されるデザイナーというとファッション系が多かったが、ここ最近のトレンドはプロダクト系やグラフィック系。

このトレンドのいい例が、現在サーペンタイン・ギャラリーで開催中のコンスタンチン・グルチッチ企画の「Design Real」展や、同じくいまホーンチ・オブ・ヴェニソンで展示中のスチュアート・ヘイガースあたりになるが、2月中旬からバービカン・アート・ギャラリーで始まるロン・アラッド展(2月18日〜)も気になるところ。出世作となった81年の「Rover Chair」から最近のステンレス製の卓球台まで過去30年に渡る作品が展示されるとか。

また、デザインにおいては遅れをとっているあのテート・モダンでも、時代はかなり昔になるが、「デ・ステイル」の創設者のテオ・ファン・ドゥースブルグ展(2月4日〜)を開催。これが元でモンドリアンと破局になったといわれる定番の斜めラインの抽象画からストラスブルグの「Cafe Aubette」用のデザインまで、幅広い作品が紹介される。

さらに、4月下旬には、ロンドン初のグラフィック・デザイン・フェア「Pick Me Up: Contemporary Graphic Art Fair」(4月23日〜)がサマセット・ハウスにて開かれ、微細なペーパーカットワークで知られるロブ・ライアンのオープンスタジオなど様々なライブイベントが企画されている。

また、これらの作家の他にも、以下の大御所・大物が今から春にかけてロンドンで展示を開催:マシュー・バーニー(Sadie Coles、1月27日〜)、ウィリアム・エグルストン(Victoria Miro、先週から開始)、リチャード・ハミルトン(Serpentine Gallery、3月3日〜)、ヤニス・クーネリス(Ambika P3、4月23日〜)、エルネスト・ネト(Hayward、6月15日〜)、ヴォルフガング・ティルマンス(Serpentine、6月26日〜)。今年も忙しくなりそうな予感。(トコ)

 

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