6月3日

日誌復活!
 
 みなさん、長いことお休みしてすみません。いつも読んでくださっていた方、気になってメールくださった方、ありがとうございます。相変わらずドタバタ中につきスローなペースになりそうな感じですが、半年振りに日誌を再開します。
 

6月3日

デミアン・ハースト、120億円のダイヤモンド彫刻
 
 

英国在住の方はもうご存知。デミアン・ハーストのダイヤモンドを使った頭蓋骨の彫刻「For the Love of God(神の愛に捧ぐ)」が、ホワイト・キューブ、メイソンズ・ヤード店にて明日から一般公開されます。この作品については、3月に『スタジオボイス』の取材でデミアンに会ったときにちらりと話を聞いていたのですが、それがこのほど完成。プレスの面々と一緒に一足先に拝ませてもらってきました。

制作費36億円が投入されたこの作品は、使用されたダイヤモンド総数8,601個、カラット総数1,106、頭蓋骨の額の部分に一粒52.40カラットの洋ナシ形ブリリアントカットの巨大ダイヤモンドが埋め込まれた国宝級の超豪華品。ボンドストリートに店を構える王室御用達の宝石商ベントリー&スキナーとの共同制作になります。

 
Damien Hirst
Birth Paintingsシリーズから(部分)
イーストエンド店にて

彫刻のモデルになったのは、デミアンがロンドンの古物商で購入したヴィクトリア時代の頭蓋骨。35歳くらいで死亡したと思われる、地中海あたりに生存していた西洋人(男性)のものらしいですが、それをプラチナで鋳造(この土台だけで2キロ以上)。そしてその表面に細密な穴をあけてダイヤモンドを隙間なく敷き詰めたものになります。プラチナの顎から突き出る歯だけが元の頭蓋骨からとった本物だとか。(これも作り物という報道も一部ありますが、ホワイト・キューブの話によると歯はオリジナルだとか)

頭蓋骨といえば、西洋美術の定番。「メメント・モリ」を代表するモチーフであり、「人間はいつか死ぬ」「死から免れられない」ことを思い起こさせるために、多くの画家がこのモチーフを画中に忍ばせてきました。デミアンの関心事も死であるからしてこれ以上にない相応しいモチーフとなりますが、ダイヤモンド製の頭蓋骨というのは前代未聞。デミアンいわくこの作品は「死に対する勝利」。つまり、死など怖くない、死をセレブレートしようというメッセージでしょうか。(『スタジオボイス』の取材のテーマだったアンディ・ウォーホールも骸骨と自画像を重ね合わせた作品を沢山つくっています。30分足らずの取材でそこまで突っ込めませんでしたが、興味深い接点です)

それにしても売値120億円(50ミリオンポンド、99ミリオンドル)とは、昨今話題のアートバブルの象徴でしょうか。ホワイトキューブの広報の話によると、すでにコレクター3、4名との間で商談が進行中とのこと。売れれば現存の現代美術家のなかで最高額の作品になると言われています。それが一般公開されているのですから何とも有難いことですが、当然のことながらホワイトキューブ側では警備を厳重にし、この展示に限りチケット制を導入しています(無料)。公開場所はメイソンズヤード店一階の特別室。鑑賞時間はひとり3分。一度に入れるのは10人まで。チケットの予約はギャラリーのサイトでできます。

そうそう、もうすこしで忘れるところでしたが、他の作品も展示されています。メイソンズヤード地上階では、2005年夏に帝王切開で誕生したデミアンの息子サイラスの出産シーンを描いた絵画シリーズ「Birth Painting」を展示。デミアン+16人のスタッフにより制作され、医師に扮したデミアン自身のセルフポートレートも含まれています。

また、メイソンズ・ヤード地下の展示室では、タイガーシャークを縦に真っ二つに切った鮫のホルマリン漬けのほか、癌の生体組織画像を基に制作され、カミソリ、ガラス、人毛などがコラージュされた危うくも美しい絵画シリーズなどを公開中。また、ホックストンスクウェアのイーストエンド店にもこれら絵画のほか、仔牛に矢を指したホルマリン溶液立体「聖セバスチャン」も公開されています。会期は7月7日まで。詳しくはこちらで。(トコ)
 

6月3日

photo-london 2007
 
 

今年で4回目を迎えた写真フェア「photo-london」が5月31日から4日間に渡り開催。ひとつの転機を迎えた今年のフェアは、世界一古い写真フェアとしれ知られるパリ・フォトの運営者を新主催者に迎え、開催会場をロイヤル・アカデミーからかつての魚市場オールド・ビリングスゲイト(Old Billingsgate)に移しての再出発となりました。取り扱い写真も1970年代以降に限定され、これまでに比べコンテンポラリー色がだいぶ強くなっています。

 
photp-london
会場の展示風景

国際色も年々増しているこのフェア。参加ギャラリーの4割をフランス、オランダ、スペイン、ドイツ、アメリカ、イタリアなど欧米からの団体が占めていますが、残念ながらアジアやアフリカなどそれ以外の参加は今のところなし。ギャラリーのタイプも初回の傾向から大きく変わり、わずかな例外を除いて、コンテンポラリーアート系のギャラリーが見事に影をひそめました。

これらの変化に価格帯の違いも影響してのことでしょうか、アンドレアス・グルスキーをはじめとするドイツのアート写真や、ナン・ゴールディンやシンディ・シャーマンなどアートフェアでお馴染みの「コンテンポラリーアート写真」の頂点に立つ作家の存在はほとんど無し。

その一方で目立っていたのが、写真専門のギャラリーが扱うスティーヴン・ギル(Stephen Gill)フィリップ・シャンセル(Philippe Chancel)などのアート写真予備軍や、ロバート・ポリドリ(Robert Polidori)トム・ウッド(Tom Wood)などフォトジャーナリストの個人プロジェクト、国際舞台ではまださほど目立ってはいないものの独特の個性を放つオランダやデンマークなど大陸の写真家たち。

そのひとりがオランダの現代写真界の鬼才エルウィン・オラフ(Erwin Olaf)で、時にデイヴィッド・ラ・シャペル、時にフェルメールと印象が180度変わる表現豊かな作品が幾つかのギャラリーで同時に展示されていた。また、ブラジル生まれL.A.在住のモナ・クーン(Mona Kuhn)の倦怠感あふれる優美なヌード写真も、そのジャンルの写真が少ないなか異彩を放っていました。

また、二階に設けられた特別展覧会『On View』では、英国を代表する写真家としてドン・マッカラン(Don McCullin)ポール・グレアム(Paul Graham)サイモン・ノーフォーク(Simon Norfolk)など6名の作品を展示。ミニチュアランドで少女を撮った写真でここ数年注目の若手、ジュリア・フラートン・バッテン(Julia fullerton Batten)の写真もここで紹介され、ギィ・ブルダンとグレゴリー・クリュードソんを足して二で割ったようなフェアリーな世界が魅力を放っていました。

ちなみに私の個人的ヒットは、去年秋のスコープ・ロンドンでも紹介されたオランダの写真家ルード・ファン・エンペル(Ruud van Empel)の「World」シリーズと、デンマークの写真家ユニット、トリーネ・ソンダーガード(Trine Sondergaard)ニコライ・ホワルト(Nicolai Howalt)の「How To Hunt」シリーズ。

両者ともジェフ・ウォールやグルスキーと同じくデジタルテクノロジーを駆使した作品で、エンペルはジャングルの中っぽい沼地で黒人の少年少女が水浴びをしている色鮮やかな作品を公開、そのシュールな光景がどことなくドイツのロレッタ・ラックスを思わせます。一方、ソンダーガードホワルトの作品は、北欧の風景画を思わせる狩のシーンを遠景で押さえたもので、鳥や狩人の数が何気に多すぎるなど、リアルなタッチのなかに妙な点が忍ばされているのがその特徴。詳しくはこちらで。(トコ)

上で紹介した写真家のサイト
Stephen Gill
Philippe Chancel
Erwin Olaf
Mona Kuhn
Simon Norfolk
Julia Fullerton Batten
Ruud van Empel
Trine Sondergaard & Nicolai Howalt

 

6月3日

アントニー・ゴームリー展@ヘイワード
 
 

英国北部ゲイツヘッドにそびえる「Angel of the North」などで知られる英国を代表する彫刻家、アントニー・ゴームリー(Antony Gormley)の個展がヘイワード・ギャラリーで好評開催中です。

展示品はゴームリーのイコン作品である自らの身体をモデルに起こした鋳鉄製の人体彫刻から、穴の開いた鉄箱を人間の胎児を思わせる形に縦横にと積み上げた22トンの巨体彫刻「スペース・ステーション」まで、過去約25年に渡る作品35点。

 
Antony Gormley
ヘイワード・ギャラリー周辺のビルに出現したゴームリーの人体彫刻


そのハイライトになっているのが、本展のタイトルでもある新作「Blind Light」。こちらは天井に隠された特別装置によって室内が濃霧状態になったガラスの部屋で、鉄やテラコッタなどを用いていわゆる定番的な「彫刻」を作ってきたゴームリーのこれまでの作風とは一味違う体験型の作品になっています。

外から見ると単に四角い箱ですが、中に入ると一寸先は「白闇」。視界が届くのはぜいぜい50センチ先くらいまでで、まるで雲のなかを歩いているよう。一度に25名まで入れるので、あちこちで人の声がしますが、あと一歩で身体が触れるという寸前までその姿が見えません。床が水で塗れているため、ぶつかって尻餅をつかぬようにと必死で目を開け、耳を澄ませながら手探り状態で歩いていると、ガラスの壁にぶつかる寸前でやっと視界が晴れるという感じです。

ダン・グレアム、オラファー・エリアソンなどこれまで似たような室内型体験作品を試してきましたが、視覚を失う恐ろしさとでもいうのでしょうか、ここまで感覚を覚醒された作品はこれが初めて。霧の箱という単純な構成をとりながらも、テート・モダンのカールステン・フラーの高層すべり台に負けない恐怖感を味わえます。

あと、ゴームリー展に行ったらぜひ見てほしいのが、周辺のビルの屋上。ゴームリー自身の身体を模った彫刻が、ヘイワード・ギャラリーを取り囲むようにビルの屋上のあちこちに出現し、「飛び降り自殺?」なんて勘違いしてしまいそうな光景が出来上がっています。8月19日まで開催。詳しくはこちらで。(トコ)

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