7月24日

美術展で女性2名が死亡!
 
 

美術品を襲った事故で、死者2名、負傷者13名がでるという大惨事が23日午後、ダラム州のチェスター・ル・ストリート(Chester-le-Street)リヴァーサイド・パークで起きた。

死亡したのは、公園内に設置された「ドリームスペース」(Dreamspace)と呼ばれる、空気注入式のエアードームのような構造をとる巨大スカルプチャーを体験していた68歳と38歳の女性2人。

報道によると、事故が起きたのは午後3時半頃。スカルプチャーを地面に固定していたロープがはずれ、約70フィート(21メートル)浮上したあと、200フィート(61メートル)横に移動。監視カメラ用の電柱に激突して、地上に崩れ落ちたという。(数字は新聞各紙によって誤差あり。ここではThe Independentの数字を使用)

「ドリームスペース」は、PVCシート製のカラフルな「小部屋」115室でできた、空間体験型の作品になる。大きさは、サッカーグラウンドの約半分。入場料は5ポンドで、入口で渡される上着を着用して体験する仕組みになっていた。事故発生時には、子供を含む約30名が作品を体験していたという。

作者は抽象柄を特徴とする立体とインスタレーションで世界的に知られる英国人作家のモーリス・アジス(Maurice Agis)(74歳)。「ドリームスペース」の前身にあたる「スペースシップ」を、60年代からピーター・ジョーンズと共同制作してきたベテランだ。

「ドリームスペース」第一号は、デンマークのコペンハーゲンにて96年に初公開。以来、英国、イタリア、スペインなどヨーロッパの様々な国で発表されてきた。チェスター・ル・ストリートで今月30日まで公開されたあとは、ロンドン東部のヴィクトリア・パークで展示されることになっていた。(トコ)

この記事は、以下の記事を参考に執筆しました:
BBCのレポート写真作家について
The Independentの記事
The Guardianの記事

追記)
● その後の報道で、23日の事故は、炎天下のなかスカルプチャー内の空気が高温化したことによって、“気球”のような効果が生じたのではないかという疑いが発表されている。(The Guardian

● 23日の事故現場には、スカルプチャーの作者のモーリス・アジス氏も居合わせ、現場にいた大勢の人たちと一緒にロープを引っ張って、作品が浮上するのを食い止めようとしていたらしい。目の前で自作が暴走し、死傷者が出る……。被害者も大変気の毒だが、作家にとっても地獄だろう。(The Guardian

 

 

7月20日

テートが違法!?
 
 

テートクリス・オフィリの作品「The Upper Room」を去年購入した一件で、調査に当っていたチャリティー委員会がギャラリーの行為を違法と判断していたことが今月19日、新聞各紙の報道で明らかになった。

調査の焦点となったのが、購入当時ギャラリーの評議員だったオフィリの作品をテートがチャリティー委員会に無断で購入していた点。

英国の公的美術館の大部分がそうであるように、テートはアメリカのNPO(非営利組織)に相当する「登録チャリティー」(Registered Charity)の認可を受けている。

認可団体には原則として評議員との営利取引が禁じられており、どうしても必要な場合には事前にチャリティー委員会から許可を得る義務があるが、テートはそれを怠っていた。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をおぼろげに基にした問題の作品は、アカゲザルをモチーフとする油彩13点と、それらを飾る特別展示室で構成されたオフィリの大作になる。

オフィリが所属するヴィクトリア・ミロ・ギャラリーで2002年6月に初公開され、2005年夏にテートが60万ポンド(約1億2千万円)で購入。去年の秋から今年5月までテート・ブリテンで再公開され、約25万人が会場を訪れた。

チャリティー委員会の今回の調査報告は、テートに対する指導の域に留まり、「この作品の取得はギャラリーにとって有益なものである」として、オフィリの作品はそのままテートに残ることになった。

しかしその一方で、今回の取調べによって、テートが同様の不正行為を過去50年間に17件も犯していることが明らかになった。

その多くが英国を代表する美術家で、オフィリと同じターナー賞受賞作家のジリアン・ウェアリングをはじめ、マイケル・クレイグマーティンピーター・ドイグらの名前が公表されている。

50年気づかずとは、なんともお粗末な話。テートの歴代ディレクター以下スタッフの勉強不足と管理の甘さを、明らかに物語っている。

ちなみに今回の不正は、コンセプチュアルアートを非難し具象絵画の優位性を訴える英国の美術団体「スタッキスト(Stuckist)」が去年秋に起した抗議運動がきっかけとなって発覚した。

英国の美術館の多くが作品購入に関する情報を開示していないが、今後テートでは積極的に公開するよう努めると言っている。(トコ)

詳しくはThe Guardianのサイト


 

7月18日

展覧会クイック・レポート:テート・モダン
 
 

久々のロンドンの展覧会についてのレポートですが、今回は話題の展示が同時開催中のテート・モダンに集中してみました。

■ まずは、5日から始まった、フランスの作家ピエール・ユイグ(Pierre Huyghe)の個展。「テート・モダンもデス・スターも僕のものじゃない」と書かれたネオンの前を通って展示室に入ると、中は巨大なドアが優雅に"踊る"ダンス場(写真下)。ユイグはリクリット・ティラバーニャリアム・ギリックなどアーティストと積極的にコラボを展開している作家として知られるが、今回の展示でもデザイナーズユニットM/Mとの共同制作のポスターがあったり、建築家フランソワ・ロッシュ(Francois Roche)との共同制作の地形スカルプチャーがあったりと、その活動の幅の広さを知ることができる。

■ ここでお薦めの一点が、ユイグがハーバード大学カーペンターセンターに招かれて制作した、自伝的人形劇の収録映像「This is not a time for dreaming」。このプロジェクトで彼はスランプに陥ったといわれるが、悩んだ末に辿りついたのが、自分のスランプ談自体を作品にしてしまうこと。それもこのカーペンターセンターの設計者ル・コルビジェが設計の際に直面した苦悩と交錯させて。その結果は、制作プロジェクトを挟んで制作側と依頼側が真っ向から対立する、制作の舞台裏を暴いた風刺劇。苦い実話を茶番ぽい人形劇にしてしまっているところが絶妙。9月17日まで

 


Pierre Huyghe
上)Streamside Day, 2003
Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery, New York/ Paris, © the artist

中)This is not a Time for Dreaming, 2004
Photo: Michael Vahrenwald
Courtesy Marian Goodman Gallery, New York/Paris
© the artist

下)Gate, 2006
Courtesy Musee d'art moderne de la Ville de Paris/ARC, Paris Musees and Tate Modern, London
© the artist
Photo: Toyoko Ito



■ 少々余談になるが、最近、欧米のアート界では人形劇つまりパペットショーが何気に流行っているようで、先週もギャヴィン・ターク(Gavin Turk)のスタジオスタッフご一行がハックニー・エンパイアにて、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」(Waiting for Godot)のパロディー「ゲィヴォーを待ちながら(Waiting for Gavo)」を披露したばかり。キャストは、マルセル・デュシャン、ヨーゼフ・ボイス、アンディー・ウォーホールら現代美術の父らに、"スクラッチー"なる某コレクターを加えた豪華メンバー。たった二日間の上演だったがとても良かったので、また別の機会に詳しく紹介したい。

 
From the studio of Gavin Turk
Waiting for Gavoより
Photo: Toyoko Ito



■ さて、話はテート・モダンに戻り、レイチェル・ホワイトリードの「箱」の山が撤去された一階のタービンホール.。ここでは先月から、家庭や室内をテーマとした展覧会「Domestic Incidents」が開催されている。この展示、テートモダンの倉庫から掻き集めてきた即席の展示という割には、ルイーズ・ブルジョア(Louise Bourgeois)モナ・ハトゥーム(mona hatoum)リチャード・ウェントワース(richard wentworth)ホルヘ・パルド(Jorge Pardo)など秀逸な作家が揃っていて、見ごたえがある。

■ 作品は圧倒的に家具もどきが多く、決して快適ではないものの実際に横になれるリカルド・バスバウム(Ricardo Basbaum)の"カプセルベッド"があれば、鉄の塊でできたハトゥームのマットレスもありと、その機能レヴェルは様々。さりげなくお薦めなのが、ビル・ウッドロー(Bill Woodrow)の二層式洗濯機を使って作ったDIY感覚たっぷりのハイブリッド楽器類。素材が粗大ゴミ置き場から集めてきたものならば、作り方もコンビーフの缶を開けるように素朴。だが、ユーモアに富んでいて、その上にちゃんと様になっているところが素晴らしい。8月28日まで

 



上)Tony Cragg
Axehead, 1982
中)Bill Woodrow
Twin-Tub with Guitar, 1981
下)Ricardo Basbaum
Capsules (NBP x me-you). 2000
Photo: Toyoko Ito


■ 上の二展と並んで、テート・モダンに行ったら是非寄ってもらいたのが、3階の常設展示場に5月末に登場した、テートのスポンサーUBSが所蔵する写真専用のギャラリー「Photography from The UBS Art Collection」。スペース自体は大して広くはないが、アンドレアス・グルスキー、トマス・ルフ、カンディダ・へーファーらドイツ・ベッヒャー派の写真家からアーウィン・ワーム、ベアト・ストロイリ、ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス…と大陸の現代美術家まで充実している。

 
Walter Niedermayr
Hintertuxergletscher VI, 2000
Courtesy Galerie Bob van Orsouv, Zurich. The UBS Art Collection

そのなかでも貴重なのが、イタリアを代表する写真家、オリボ・バービエリ(olivo barbieri)ワルター・ニーデルマイヤー(Walter Niedermayr)の二人。両者ともにテートの展示品は、海水浴場やスキー場、広場など、行楽地に群がる夥しい数の"群衆"を撮っているのが特徴。群集をパノラミックに撮ったという点で、向かいに展示されているグルスキーに通じるところがあるが、白っぽい背景に浮き立つ人物のビビッドな色彩や(ニーデルマイヤー)、上空からの撮影やボカシなど(バービエリ)、硬い構図とリアリズムを追求するドイツ派にはない有機性と人工性が共存し、不思議なビジュアル効果を生んでいる。

バービエリは今年春のBloomberg Spaceでの個展や去年秋のヘイワードギャラリーのUniversal Experience展などでロンドンでも最近よく見かけるが、ニーデルマイヤーは98年のホワイト・キューブでの個展以来ご無沙汰。同じイタリア"群集派"あるいは"ビーチ派"の大御所マッシモ・ヴィターリがあれば完璧なのだが(UBSのコレクションにはあるのだがここには展示はされてない)、イタリアの現代写真を見れる機会が少ないだけに貴重な存在だ。

■ さて最後は、『Time Out』誌で「この夏ひとつだけ展覧会を観るならこれ!」と絶賛されているカンディンスキー展。具象から抽象絵画への転換期におけるキーパーソンと見なされているカンディンスキーの画家人生前半部を、50点を超える絵画とドローイングをもって紹介。ロシア神話をモチーフにした初期の作品から、Der Blaue Reiter (The Blue Ride、青騎士)時代の風景画、第一次大戦後にバウハウスに加わるまで、彼が辿った抽象絵画への道が堪能できる展示となっている。10月1日まで(以上、トコ)

 

 
7月18日

レヴュー掲載

 

ロンドンの展覧会のレビュー、暫くご無沙汰してましたが、以下の二本を載せました。
■ ビル・ヴィオラ@ホーンチ・オブ・ヴェニソン+聖オラフ大学
■ グレイソン・ペリー@ヴィクトリ・ミロ・ギャラリー

 

7月18日

余談…

 

■ 『美術手帖』(8月号)「Around the Globe」に、『アート・バーゼル2006』のレビューが掲載されました(p168-169)。フォグレスのレポートの方はもう少しお待ちください。

 


■ 『STUDIO VOICE 』(8月号)「Photo Gallery」に、『ピーター・グランサー 「Coney Island」 諸行無常のパラダイス」』が掲載されました(p79)

 

■ 上のピーター・グランサーの記事は、ハッチェ・カンツ出版から刊行された彼の写真集『Coney Island』について書いたもの。ルー・リードの歌などでもお馴染みのコニー・アイランドは、戦前に遊園地の王国として栄えたニューヨーカーお抱えのビーチリゾートで、グランサーの写真も「かつての良き時代」を偲ぶような郷愁感が全体ににじみ出たポエティックな一冊となっている。

 



Peter Granser
Coney Island


グランサーはドイツのシュトゥットガルトを拠点に活動している写真家だが、興味深いことにその写真は、ドイツ現代写真の看板ベッヒャー派とは一線を隔し、アメリカの70年代とイタリアの90年代のアート系ドキュメンタリー写真を足して二で割ったような、面白いミックスとなっている。強いて例をあげるならば、構図や被写体はウィリアム・エグルストンやスティーヴン・ショアーあたり、色彩は上で紹介したワルター・ニーデルマイヤーやマッシモ・ヴィターリあたりと言ったところだろうか。(トコ)

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美術展で女性2名が死亡!
(7.24)

テートが違法!?
(7.20)

展覧会クイック・レポート:テート・モダン
(7.18)

レヴュー掲載
*ビル・ヴィオラ
*グレイソン・ペリー
(7.18)

余談…
(7.18)