5月23日

最近のハイライト

 

■ パノラマとはまさにこのこと。バービカン1階のカーブで始まったトマス・サラセーノ(Tomas Saraceno)の映像では、まるで壁の向こうは空だと言わんばかりに、長さ80メートルの壁に大空の映像が流れる。

32台のプロジェクターで投影されながらも、映像はまったく途切れのないひと続きの空。普段見慣れた光景でありながらも、雲がプロジェクターからプロジェクターへと(すなわち画面から画面へと)、まるで本物の空のように流れていく様を見るのはかなり不思議な体験だ。

この作品は世界最大の塩湖として知られるボリビアのユウニ塩湖で撮影されたもので、観客に雲のなかに住む感覚を味わってほしいという作家の願望から生れたそう。ちなみに彼の理想とする世界は「飛行都市」だそうで、浮遊感のある作品を観ているとそれがなんとなく伝わってくる。

この展示は、バービカン・カーブが作家にサイト・スペシフィックな作品を発注する新企画の第一弾となる。9月下旬から始まる第二弾を担当するのは、サーチ・ギャラリーの「油の部屋」でお馴染みのリチャード・ウィルソンだとか。7月16日まで

 

Tomas Saraceno,
Salar de Uyuni, Bolivia, 2006
Installation view at the Curve, Barbican
Photo: Toyoko Ito



ホワイトチャペルでアウトサイダー・アートを大々的に紹介する『Inner World Outside』が好評開催中。

この展覧会の見どころを一言でいうならば、気前よく展示されているヘンリー・ダーガーの作品に尽きる。が、その画期的な点はというと、精神病患者、犯罪人、幻視者など作家のネガティブな身の上や経歴などによって美術界から邪険に扱われてきたアウトサイダー・アートが、ジャン・デュビュッフェマックス・エルンストなどモダニズムの巨匠らと一緒に展示されている点。しかも両者がモダニズムの両翼のように提示されている(インサイダー側の作品はずっと少ないが)。

 
Henry Dargar
After Mc Whurter Run Glandelinians attack and blow
up train carrying children to refuge
New York, Collection American Folk Art Museum
Gift of Sam and Betsey Farber
Courtesy Whitechapel Art Gallery


この展覧会は、絶賛された去年の『Faces in the Crowd』展につづき、ホワイトチャペル年一度の有料展となるが、日ごろなかなか見れない珍しい作品が集まっているだけに、7.50ポンド払っても見る価値あり。

ちなみに私が行った日にはターナー賞作家のグレイソン・ペリー氏が、白いTシャツにブルージーンズ、ノーメイクという男性の格好で来ていたが、よく考えると彼の作品ほどここに相応しいものはない。前に彼の作品について「大人からの暴力や性的虐待を受ける幼児、兵士として借り出される少年少女」と書いたことがあるが、それってまさにダーガーの作品のことではないか。7月2日まで


■ こちらは今月12日にロンドン大学スレイド・スクールにて催されたサウンド・アートのイベント。参加作家4名それぞれが、サウンドをインスタレーションと組み合わせたり、映像を使ったり、その場でコンピューターを使ったりと、工夫を凝らした作品を発表していた。

なかでも印象に残ったのが、日本から召還された梅田哲也さんのパフォーマンス(写真)。大勢の観客に囲まれて、梅田氏がモビールのように天井から吊るされた金属の棒や壁際に引かれたワイヤーを手でこすって音を紡いでいく。その繊細な音色をしっかりキャッチしようと、会場は心臓の音さえも聞こえそうなくらい静か。すると突然かすかな音と共に、電流のように緊張感が会場に走る。作家の硬い表情によって、それが更に緊迫したものになる。そこにライブ・パフォーマンスならではの臨場感を感じた。

 



モビールのようなスカルプチャーを両腕で「奏でる」梅田氏。


ちなみこのイベントを企画したのは、去年までロンドンを拠点に活動していたキュレーターの竹久侑さんと、この大学の教員であり今回の参加作家のひとりでもあるデイル・ベアニングさんの二人。ベアニングさんがパフォーマンスで使った映像は、横浜トリエンナーレなどで活躍のさわひらきさんの作品というオマケ付きだった。詳しくはこちらで。


■ こちらはバングラ・ニューイヤー・フェスティバルの騒ぎのなか、今月14日にブリックレーンのクラブ「93 Feet East」で催されたクリエイティブ集団、Matsuriのイベント。

入口を通り中庭に入ると、レンガの塀づたいにカラフルなキャンバスが並び、ライブミュージックの弾けるサウンドに乗って、アーティスト15〜6名がその腕並みを披露していた。オーガナイザーが日本人のせいか参加者の半数近くが日本人。とくにロンドンの美大生の間で人気のようで、角の生えた「ドラえもん」風の絵をスプレーで描いていた写真の彼女も、キャンバウェル・カレッジに通う3年生だとか。

 

Matsuriのライブ・ペインティング・ショー「Artholic」の様子。

このあとヘア・ショー付きのDJナイトが夜更けまで続き、その後、更に、アフター・パーティーに突入したとか(なんと私の行きつけの美容師さんが行ってました)。ちなみに、私がMatsuriを知ったのは、こっちに住む日本好きの友人を通じてのことだったが(その手の人が大勢来るみたいです)、この軍団、かなりのツワモノ揃いらしく、ロンドン上陸後一年足らずにして、エッジーなカルチャー・シーンの最先端を行っていると聞く。詳しくはこちらで。


■ フォグレスのインタビューでもお馴染み、アーティストの青山悟さんが今回キュレーションに初挑戦。今月17日から東京のミズマ・アート・ギャラリーにて、彼のロンドン土産展たる『スーベニア・マイン』が始まった。彼を除く展示作家は、ニール・ラミングポール・ジョンソンピーター・ドナルドソングラハム・リトルの4名。いずれもここロンドンではちょこちょこ名前を聞く気鋭の若手で、青山さんと感性が合うらしい。今月のスタジオ・ボイスに北澤ひろみさんの解説記事と一緒に作品図版が掲載されています。詳しくはこちらで。(以上トコ)

 
Michael Elmgreen & Ingar Dragset
Modern Moses 2006
Photo © Stephen White


 

 

5月23日

余談…

 

■ 『STUDIO VOICE 』(6月号)「Photo Gallery」に、『Deutsche Borse Photography Prize 2006』の紹介記事が掲載されました(p115-119)。

 


■ 『美術手帖』(6月号)「Around the Globe」に、『テート・トリエンナーレ2006』と『A Short History of Performance IV』のレビューが掲載されました。(p148-149)
(トコ)
 

 

 

5月16日

バンクシーのメイドっ娘、チョーク・ファームに出現!

 

■ 朝起きて窓を開けたら、なんとバンクシー(Banksy)のグラフィティーが目の前に!見慣れたドブネズミのような壁が、一夜にして英国版メイドカフェに変身。レースのエプロンをつけたマスカラこってりのメイドが、ちり取りを片手に、何ともセクシーな眼差しをこっちに向けている。「ああ、また酔っ払いか」と思いながら、昨日の晩聞いたあのガサゴソ音は、これだったのか!ついにストリートカルチャーの革命児が、フォグレスの足元にひざまずく時が来た!

 



チョーク・ファームの壁に突如として現われたバンクシーのグラフィティー。

 

と、ドラマチックに行きたかったが、実のことを言うと気づくまでに小一時間かかった。グラフの前をそそくさと二度往復したあげく、ようやく発見。一度目は、「ボノが編集を担当!」「デミアン・ハーストが表紙をデザイン!」とニュースになっていた『インディペンデント』を買いに行ったとき。二度目はそれに載っていた、チョーク・ファームにあるはずというバンクシーのグラフの写真を手に持って。が、結局、カムデン・タウンまでチョーク・ファーム・ロードを往復したが見つからず、あきらめて寝倉に戻ろうとしたところ、横目が白い光をキャッチ。なんとここの真向かいにあったのだ。

実はこのグラフ、ゲリラ・アーティストのバンクシーにしては珍しく、警察の目を忍ぶことなく描かれた由緒正しきグラフ。上でも書いた掲載紙の『インディペンデント』がバンクシーにコミッションしたものだそうで、『Sweeping It Under The Carpet』とタイトルまでちゃんとある。その記事によると、このグラフはアフリカにおけるエイズをはじめとする、諸問題の解決に煮え切らない態度をとる西側諸国を比喩的に表したものらしく、よって絵柄がお掃除するメイドさん。都合の悪い事はサッサと掃いてカーペットの下にでも隠しておきましょ、という国際社会の態度を批判した作品のようだ。

 



フォトグラファーズ・ギャラリーの川内倫子展にて。正面の壁にモザイク風にアレンジされたインスタレーションから。

ちなみにグラフの場所は、地下鉄チョーク・ファーム駅を出て徒歩1分。チョークファーム・ロードとリージェンツ・パーク・ロードの交差点になる。(トコ)

Banksyのサイト
The Independent のBanksyの記事

 

 

5月16日

U2のボノが一日編集長

 

■ 上でも軽く触れたが、このバンクシーの記事が載った今日、5月16日付けの『インディペンデント』は、新聞にしては珍しく、アート&ロックファンにとっては保存版。

まず、U2のリードボーカルのボノが編集を担当。トップページから6ページを使ってエイズ問題をはじめとするアフリカ関連の記事を掲載し、しかもその中の1ページは、ボノと首相のトニー・ブレア、次期首相候補かと囁かれる蔵相のゴードン・ブラウンとの対談に捧げられ、英国のアフリカへの経済支援政策などについてボノが鋭い質問を投げかけている。また、今日の新聞の売上の半分は、アフリカのエイズ救済のために寄付されるそうで、去年の夏の「ライブ8」のときを思い出させる。

そして、そのトップページを飾っているのが、鮫のホルマリン漬けで知られるデミアン・ハーストのアートワーク。ボノの写真を除き、印刷はロゴも含めてぜんぶ赤で、ボノが今年1月にエイズ撲滅のために立ち上げたブランド「RED(レッド)」のイメージカラーと同じ。その赤をバックに骸骨や薬、注射器などデミアンお得意の死のシンボルが十字架を描くように配置され、その上に大きく白抜きで「No News Today」(今日はニュースなし)と表示。そしてその下には、断り書きのように小さな文字で、「予防もできれば治療もできる病気によって、アフリカでは今日もたった6千5百人が死亡[HIV/Aids]」と皮肉たっぷりの一文が添えられ、ボノのアジェンダをシンプルながらも効果的に代弁。

また、綴じ込み紙の『Extra』には、ボノの現代アートに対する関心の程を示すように、サム・テイラーウッドの新作を4ページ使って紹介(たぶんホックストンの某ギャラリーとの関係も深いんでしょうが…)。ここ数年セレブばかり撮ってきたサムにしては珍しく、掲載の作品はアメリカのジョージア州の片田舎で撮ったドキュメンタリー写真で、ウォーカー・エヴァンスやドロシア・ラングなどに通じる社会派の匂いが強く漂う(モノクロが多い)。明日からニューキャッスルのボールティックで始まる展覧会で展示されるようなので、そちらに行かれる方はお見逃しなく。(ちなみにその次のページには、ステラ・マッカートニーとジョルジオ・アルマーニの豪華対談が載っていました)。(トコ)

The Independentのサイト
□ゲストエディター、ボノの記事
□ボノxブレアxブラウンの対談記事
Redのサイト
Balticのサイト

 

 

5月16日

いま、新聞がクール!

 

■ まさに、久々にやってくれた!といった感じだが、今日の『インディペンデント』に限らず、イギリスではいま新聞の元気がいい。ここ数年、「ブロードシート」と呼ばれてきた高級紙が次々とタブロイド版にサイズを縮小しデザインもモダンになったかと思ったら、昨年9月に『ザ・ガーディアン』が更にそのひとまわり小さい「Berliner」サイズになって新登場し話題になった(フランスの『ル・モンド』と同じサイズ)。

 



チョーク・ファームの壁に突如として現われたバンクシーのグラフィティー。


そして、この『ザ・ガーディアン』こそ、クールなエディトリアルデザインの決定版。英国の新聞史上初のフルカラー印刷を実現し、独自の書体もデザイン。また、インターネットや電子メールの時代にあわせてロゴをフレンドリーな小文字表記に変え、中央見開きのページには毎日写真一枚を大きく掲載する「Eyewitness」コーナーを新設(ここに載る写真が良くて買ってしまうことがよくある)。この大胆なイメージチェンジが成功し、売上が大幅に伸びたようだが、デザインの視点からも高く評価され、現在デザイン・ミュージアムで開催中の今年の「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」にノミネート。「Berliner」版完成までのデザインの変化の過程が事細かに紹介されていて見ごたえがある。6月18日まで。(トコ)

The Guardianのサイト
Design Museumのサイト

 

 

5月9日

川内倫子展@フォトグラファーズ・ギャラリー

 

■ 待望の川内倫子展がフォトグラファーズ・ギャラリーで始まった。お邪魔したのが少々早かったようで会場はまだ準備中だったが、軽く展示の様子を覗かせてもらった。

こちらの展示は、二つある建物のうちグレイト・ニューポート8番の方で開催。『AILA(アイーラ)』、『the eyes, the ears,』など川内氏の過去の写真集から選ばれた写真40点程と、13年がかりで自分の家族を撮った『CuiCui』のスライド上映の二部構成になっている。爽快なタッチのなかに、(時に生々しく)生命力がみなぎる、その独特な世界が堪能できる秀逸な展示。

 



フォトグラファーズ・ギャラリーの川内倫子展にて。正面の壁にモザイク風にアレンジされたインスタレーションから。


特にお薦めなのが、スライド上映はパリのカルティエ財団に次いで二度目という『CuiCui』(奥の展示室)。お盆、お正月、お墓参り、スイカ、蝉、ひまわり、仏壇、病院、結婚式、葬式、おじいちゃん、おばあちゃん………と、普段着姿の日本がアルバムを捲るように展開し、見ながら思わず、これぞニッポン!と感激してしまった。まるで自分の家族や親戚を見ているような懐かしさを感じながら、外国人が見たいエキゾチックジャパンじゃない日本が紹介された、ハイテク・消費・エロ大国からやっと抜けた、と心の中で拍手喝采。5日のブックサイン会は川内さんの渡英延期で流れてしまったが(聞いたところによると、イルカの撮影中に怪我をされたとか…)、来月、また日を改めて行われるとのこと。ファンの方はフォトグラファーズギャラリーのサイトでチェックをお忘れなく。7月9日まで(トコ)

■ この展示のあとにぜひ覗いてほしいのが、ここフォトグラファーズギャラリーの書店。川内氏の写真集は『うたたね』『AILA(アイーラ)』などメジャーなものはほとんど揃っているし、その他にもアラーキー、森山大道からヒロミックス、ホンマタカシまで日本の写真集がいつになく充実している。

このようにギャラリー、書店共に、いつになく日本に入れ込んでいるフォトグラファーズギャラリーだが、その裏にはこの展覧会を機に、イギリスではまだほとんど知られていない日本の現代写真を広めたいというギャラリーの狙いがある。川内倫子はその第一弾で、今後も意欲的に日本の作家を紹介していくつもりだと広報担当は言う。

 

フォトグラファーズ・ギャラリーの書店にて。上は川内さん関連の写真集、下は日本の他の写真家の写真集。

ちなみに今回、日本の写真集を集めるにあたって、書店のマネージャーのジョンが日英の関係者に手広く問い合わせたようで、私のところにもSOSが届き、その分野に明るいスタジオボイスの元写真担当編集者の富田秋子氏の協力を得て、いくつか出版社を紹介することができた。ジョンは「言葉が通じないせいか、メールを出してもなかなか返事が来なくて大変だったよ…」とぼやいていたが、それにしては上出来なセレクション。(トコ)

 

 

5月9日

イーストエンド徘徊 May 2006

今回も終了間際ぎりぎりの滑り込みとなってしまったが、面白い展示がわりと多かったのでご紹介したい。

■ まずは、この春話題の展示。パラソル・ユニットの一、二階全スペースを使ったヤン・フードン(Yang FuDong, 楊 福東)の個展。03年のヴェネツィア・ビエンナーレ以来、世界中で大活躍のフードン。ここ英国でもテート・モダンの映像展『Time Zones』やV&Aの中国現代美術展『Between Past and Future』などで紹介されてきたが、個展は今回が初めて。『Jiaer's Livestock』『Flutter Flutter…Jasmine, Jasmin』などを含む意欲作5点が展示されている。

 

パラソル・ユニットでのヤン・フードン展の展示風景。
 


ハイライトは二階に展示されたスクリーン8枚仕立ての新作『No Snow on the Broken Bridge』だが、それに劣らず印象深かったのが前出の『Jiaer's…』。隣接する二つの部屋を使ったこの作品では、壁に映像、その手前に映像で使われたスーツケースが置かれているのだが、そっくりな映像にそっくりなスーツケースと、二つの展示室が似通っていることにまず当惑させられる
映像は両画面とも夜逃げ人のような四人の男が森に到着するシーンから始まり(一人だけ身なりのよい「インテリ」風でスーツケースを持っている)、最終的に欲に駆られスーツケースの中身を争って殺し合いをしてまうという話が展開する。二つの映像は一見そっくりだが、よく見比べると物語の展開が微妙に異なり(サウンドのボリュームも違う)、それが絶妙なスパイスとなって、間違え探しクイズをするように画面に釘付けになってしまう。Parasol Unitにて、6月9日まで


隣りのヴィクトリア・ミロ・ギャラリーでは、ニューヨーク在住の作家アン・チュウ(Anne Chu)の個展を拝見(6日で終了)。ここロンドンではサーチ・ギャラリーの『Galleon & Other Stories』での展示がまだ記憶に新しいが、今回の作品はラインドローイングを三次元化したような抽象的な立体や、リアルな実物大の鳥の立体など、これらがどう繋がるのかなんだかピンと来ない組み合わせだ。だが後者の鳥はなかなかの優れ物で、彫刻に色を付けたものかと思えば、なんとワイヤと刺繍でつくったもの。刺繍でこれだけリアルな立体を作るとは意外な。Victoria Miro Gallery にて、5月6日をもって終了


 

上)ヴィクトリア・ミロ・ギャラリーの展示から
下)ヴィルマ・ゴールドの展示から

場所はヴァイナー・ストリート(Vyner Street)に変わって、ベルリンの作家ステファン・リンク(Stefan Rinck)を見せているヴィルマ・ゴールドプロジェクト・スペース。古代遺跡からの出土品をディフォルメしたような立体を台座に載せて博物館風に展示。マーケットで売られていてもおかしくないようなキッチュな物が大そうに展示されているのが滑稽で、思わず写真を撮ってしまったが、一体冗談なのか真剣なのか考えてしまう。そう言えば、サーチで見たアン・チュウの「埴輪」もこんなコミカル系だったし、チャプマン兄弟も前に似非プリミティブな彫刻群を『Chapman Family Collection』などと呼んで発表している。つまり、こういう茶化し系のエスノがちょっとしたブームなのかもしれない。Vilma Gold Project Spaceにて、6月11日まで


■ こちらは商業ギャラリーの展示にしては珍しく、オープン以来ロンドン版『タイムアウト』誌の評論家お薦め欄にずっと入っていたメラニー・モンショー(Melanie Manchot)の個展で(7日で終了)、場所は同じくVyner Streetフレッド(Fred)。これまで色んな人を脱がしては妙な行動を取らせてきたモンショーだが(詳しくは昔とったインタビューを)、今回はクラブ・カルチャーの聖地、スペインのイビザ島でドアマンとして働くマッチョな男たちを脱がす行為に。

 

 

Melanie Manchot
Security, 20056
Photo: Toyoko Ito
権力の象徴のようにカメラの前に憮然と立つ彼ら。でも10秒もしないうちに、ストリップショーが始まる。Tシャツを脱ぎ、靴の紐をほどき、ズボンを下ろし……と、もたつきながら靴下を脱ぐ頃にはその肉体に宿るギリシャ彫刻のオーラは剥げ、カメラの餌食へと落ちていく。全裸になったら、ドアマンのポーズで静止。が、ものの10秒で、みんなそそくさと服を着はじめる。従来脱ぐのは女、見るのは男だったが、たまに役割を換えてみるとお互いの気持ちというか、脱がす醍醐味や脱がされる屈辱が分かっていいかもしれない。でも男性は、これを見て一体どう感じたのでしょうか…。Fredにて、5月7日をもって終了


■ こちらはモーリシャス出身、英国在住の若手、ジャック・ニムキ(Jacques Nimki)の展示。04年のテートブリテンの『Art of the Garden』で草花をモチーフとした巨大かつ微細な絵画を発表したニムキは、今時珍しく、道端の雑草を観察してはスケッチして歩いている、ほのぼの系のアーティスト。だがその表現範囲はドローイングや絵画に留まらず、今回のアプローチThe Approach)での個展のように床一面を庭にしてしまうようなインスタレーションにまで及ぶ。(前にカムデンアーツセンターで会った時には集めた雑草を使ってワインを造ったと言って一本見せてくれた)。今回一緒に展示していたアクリル画にも本物の雑草が押し花のようにコラージュされていて、庭のインスタレーション同様こちらもフレッシュ。気になったのが、床の雑草が寂しかったことだが、それは私達がその上をズカズカと歩いたからなのだろうか?でも歩かないと絵が見れないし…。The Approachにて、5月7日をもって終了

 
アプローチ・ギャラリーでの展示風景。


■ 最後は、ウィルキンソン・ギャラリーで開かれていたNY在住のイラン人作家、カムルーズ・アラム(Kamrooz Aram)の個展。真ん中に仏陀の絵が描かれていても悪くなさそうな東洋風のシンボルに溢れたサイケな絵画。でもその一方で、グリューネワルドらキリスト教絵画に通じる華美さと神秘性をも持ち、初期のコンピューターゲームのように描写がキッチュでもあり、古今東西がキャンバス上でごちゃ混ぜになった不思議な絵画。ロンドンでの個展は今回が初めてとのことだが、拠点のアメリカでは結構知られているようで、現在マサチューセッツ現代美術館で個展が開催中。Wilkinson Galleryでの展示は、5月7日をもって終了(以上、トコ)

 

 
ウィルキンソン・ギャラリーでの展示風景。


 

5月3日

ベルリン・ビエンナーレ

 

先週強行スケジュールで行ってきたベルリン・ビエンナーレのレポートを掲載しました。写真をどっさりと載せましたのでご堪能あれ!

強行スケジュールと言いつつも、色んな人に会った三日間。去年の『美術手帖』9月号「海外で見る・見せる・つくる!」特集でご一緒した増山士郎さん、一昨年のロンドン個展の時に取材をさせてもらった小金沢健人さん、展覧会とパフォーマンスに招待して戴いた竹村京さんに開発好明さん、キュレーター&ライターの前岡義人さんなどなど、皆さん色々とお世話になりました!ベルリンとロンドンの比較生活文化論(?)では、ベルリンの家賃が激安ということでベルリン組みの意見が一致。極貧生活覚悟であれば月5万円で家賃込みで暮らせるという意見もあり。この数字はロンドンの約半分から三分の一。思わずそちらに引っ越したくなりました。(トコ)

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このページの掲載内容

最近のハイライト
*T・サラセーノ
*Inner World Outside
*梅田哲也
*Matsuri
*青山悟
(5.23)

余談…(5.23)

バンクシーのメイドっ娘、チョーク・ファームに出現!
(5.16)

U2のボノが一日編集長(5.16)

いま、新聞がクール!(5.16)

川内倫子展@フォトグラファーズ・ギャラリ(5.9)

イーストエンド徘徊 May 2006
*ヤン・フードン
*アン・チュウ
*ステファン・リンク
*メラニー・モンショー
*ジャック・ニムキ
*カムルーズ・アラム
(5.9)

ベルリン・ビエンナーレ(5.3)