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3月28日 | ムラカミにゴジラ、英国再上陸@Birkbeck College | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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先週木曜日のこと。シンポジウム出席のために訪英中の東京藝術大学助教授、毛利嘉孝氏が、私の母校であるロンドン大学バークベック・カレッジで日本の現代美術に関するセミナーを開くと聞き、友人の口利きで参加させてもらった。今日はその様子を少しばかりご紹介したい。 セミナーが開かれたのは、歴史、文学、ジェンダー研究など、日本の文化について多角的な研究の場を提供している同大学内の修士コース「Japanese
Cultural Studies」にて。ニコラ・リスクティン博士(Dr. Nicola Liscutin)の下で学ぶ学生およそ30名が参加した。 その中でも特に強調されていたのが、日本のアニメや漫画などのサブカルチャーに、戦争の記憶の断片が無意識のうちに浸透しているという点。そしてその記憶の多くが、原爆投下を彷彿させる爆風のイメージなど、「日本=戦争の被害者」というスタンスをとっていること。さらに、このサブカルチャーの影響下で作られたJNP作家の作品にも、戦争/国家主義的な影が認められること。 セミナーの後のディスカッションで目立っていたのが、サーペンタイン・ギャラリーの個展で英国でも知名度が一気に上がった村上隆についての質問。NYのジャパン・ソサエティーで開催された村上隆キュレーションの展覧会カタログ『Little Boy』が会場を回覧するなか、日本の美術界ではどんな存在なのか、一般大衆のなかでの知名度はどれくらいなのか、デミアン・ハーストと比べてどうか、日本人美大生が「スーパーフラット」的な絵画を公募展によく送ってくるのはポスト村上を狙っているのか、といった質問が相次いだ。 また、全体的に政治・歴史色の強いセミナーだっただけに、学生からの質問にもこれが反映。現代美術という枠組みを越え、第二次大戦を舞台にした映画『終戦のローレライ』の中での日本の描写、ワールドカップを機に接近した日韓関係などについても質問が出た。また、リバプール北のブラックバーンに巡回中の福岡アジア美術トリエンナーレ(毛利氏が選考委員を務める)について、経済大国「日本」という傘のもとにアジア諸国のアーティストを集めそれをイギリスの僻地で見せる、そこに日本の帝国主義が窺えないかといった辛口の質問も飛んだが、これらの質問に対し、笑いをとる余裕をみせながら丁寧に対処する氏の応対が印象的だった。 これらのディスカッションを通じ、こちらの学生の日本の現代文化に対する造詣の深さに驚かされたが、私が個人的に今回最も楽しんだのが、日本の現代美術が英国に伝えられる現場を押さえられたこと。どんな作家の作品が、どんな評論家や学者の論文を使って、どういう観点から海外に紹介されているのか。その現場を目の当たりにできたことが興味深かった。(ちなみにこの日のリーディングリストには、『Consuming Bodies: Sex and Contemporary Art in Japan』(Reaktion Books)に収録の松井みどり氏や長谷川祐子氏の論文が含まれていた) また、日本の現代美術が、現代美術評論の定番分野である美術史や美術理論ではなく、カルチュラル・スタディーズという大枠の中で紹介されていたことも、私にとっては興味深かった。日本のアートが欧米のそれと異なる点として、高級芸術(high art)と大衆文化/サブカルチャーとの間に区別がない点が氏の論文で指摘されていたが、ガンダム、ハロー・キティー、スヌーピーといったアニメやキャラクターが美術展の文脈として用いられている今日の日本を考えると、カルチャー全般を見ずして作品評論は難しいのかも知れないと思った。 あっという間に二時間が過ぎ、たくさんの拍手と、氏へのバースデーケーキの贈呈と、ハッピーバースデーの合唱で終了したこの日のセミナー。その後の食事会は、トロージャン・ホースに感染したPCレスキューのためスキップさせていただいたが、久々に頭のシナプスが点滅しはじめる快感を味あわせていただいた。(トコ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3月17日 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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久々の、本当に久々の日誌更新です。読みに来てくれていた方々、前回に続き相すみません。ここ一ヶ月の間に見た展示についてまとめてご報告を。
実はこのレザ、エスクァイア3月号の特集『美しい本』でも紹介させて頂いたが、作家活動と並行して『Centerfold
Scrapbook』というアーティストブックを編集している。一風変わった本で、作家たちに部数分の用紙を渡してそれに作品を作ってもらい、それを綴じるというオリジナル作品綴じ込み式のアーティストブックだ。部数は毎号40部から60部前後に限定。現在4号まで発行済み。書店から回収を迫られるなど大変な時期もあったようだが、今ではテートやサーペンタイン・ギャラリーのディレクターなど美術業界のお偉方がこぞって買っている注目のアーティストブックだ。詳細はICAのサイトで。レザのサイトはこちら。(トコ) ■ Tino
Sehgal @ ICA
次はヴァイナー・ストリート45番で、ドイツのクラシック専門のレーベル、ハルモニア・ムンディ社が入る建物。オールドストリートから最近移ったワン・イン・ジ・アザー(One
in the Other) の他、デイヴィッド・リズリー(David Risley), フレッド(Fred)と、ギャラリー三軒がここに入っている。
ヴァイナー・ストリートから歩いて3分。同名のパブの二階にあるアプローチでは、トム・ウッド(Tom
Wood)の写真シリーズ『Looking for Love』を展示。80年代中盤にニュー・ブライトンのクラブで撮ったナンパに耽る男女の写真は、被写体を食い物にするような写真家のシビアな視線がどことなくマーティン・パーを思わせる(ちなみにパーもこの頃ニューブライトンで撮っている)。その一方で、クラブという場がナン・ゴールディンを思わせなくもないが、ニューブライトンという場所柄のせいか、イギリス人特有の辛口ユーモアのせいか、被写体がダサく見えてしまうのが超イギリス的。3月26日まで
銀行、病院、空港、テレビ局……と、世の中に存在する組織が舞台セットのようにつくられ、それを順に見て歩く仕組みになっていたこの展示。プラダからコミッションを受ける作家だけあってそのセンスの良さは言うまでもないが、特に印象的だったのが、シュールで冷徹さを秘めた作品の独特な空気。 会場に入ると、まずは空っぽの車椅子に迎えられる。実際に使われていたもののようで、タイヤがいい具合に磨り減っているが、持ち主は不在。車椅子のアームに水色の風船が結わいつけてあって、これがゴーストトレインの旅を象徴するようにいい具合に虚しさを醸し出している。 次の部屋には、壁にキャッシュディスペンサー、その足元には捨て子の籠。手招きされるように機械に近づき、キーを叩こうとすると、「触らないで!」と声が飛ぶ。振り返ると、監視員がじっとこちらを見ている。偶然なのか演出なのか、彼も車椅子に座っていてシュール。
このように虚無感と拒絶感を伴うインスタレーションが延々と続く。様々な組織をパロッた展示には、キャッシュディスペンサーなど日常の物が何食わぬ顔で存在するが、そこが管理社会であることを強調するように、いざ使おうとすると待ったがかかる。(銀行の待合室をもじった部屋で番号札を取ろうとしたときも実は注意された)。
反戦活動家でもあるピーターは、市長のケン・リヴィングストーンからゲリア・アーティストのバンクシーまで幅広い支持者をもつ作家だが、この日話していて、レディオヘッドのトム・ヨークとも交流があると知った。面識があるだけなく、イラク戦争突入直後に『AWARD』という作品を作った際には、トムから激励のファックスが届いたという。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3月17日 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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■ 『美術の窓』(3月号)の特集「実践!海外留学ガイドブック」に記事が掲載されました。一本はロンドン在住の美術家、横溝静氏、さわひらき氏、鈴木友昌氏を招いていの座談会『フロントランナーが語る海外進出のコツ』。ホックストン・スクウェアのBluuにて4時間に渡り、海外制作の長所短所について語ってもらいました。もう一本が私の所見をまとめた『留学十年生:華やかなアート留学の裏に隠された現実』。これまで留学生に会う度に感じてきたしっくりしない思いをまとめたもので、かなりネガティブです。 ■ 『Esquire』(3月号)の特集「美しい本、230冊」に、ロンドンの美術書店、ファイドン社などを取材した記事が掲載されました。この特集を通じ、この春にファイドン社からモノグラフが出版されるプロダクトデザイナーの吉岡徳仁氏をはじめ、英国を代表するグラフィックデザイナーのピーター・サヴィル氏、アーティスブックで有名なデイヴィッド・シュリグリー氏など、各分野のトップクリエイター達にお話を伺うことができました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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