1月17日

2006年前半のハイライト

 8年振りに日本で迎えた年末年始。めまぐるしい毎日に、新年のご挨拶がすっかり遅れてしまいました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

ではさっそく、今年前半のハイライトから。

■ Michael Elmgreen &
Ingar Dragset @ Serpentine
Gallery

注目のアーティストユニット、M.エルムグリーン&I.ドラグセットの英国初の本格的な個展が、サーペンタイン・ギャラリーで始まる。もっとも有名な作品は、ミラノのガレリアを華々しく飾った車の激突シーン。最近のヒット作は、米国テキサス州の砂漠地帯に送り込んだ高級ブティック、プラダのディスプレイスタイルをモチーフにした「Prada Marfa」。今回の展示ではいつになくシリアスに、欧米の福祉制度がテーマになる。
06/01/26 - 06/02/26

 
一昨年のアート・バーゼルで発表されたM.エルムグリーン&I.ドラグセットのインスターれション。
Photo: toyoko ito

■ Ugo Rondinone @
Whitechapel

去年のフリーズ・アート・フェアで、ウルス・フィッシャーのくりぬかれた壁のなかで、雪を降らしていたウーゴ・ロンディノーネ。代表作は、射撃の的のようなシンプルな絵画から、腹を出して眠りこけるレスラーの彫刻、ファッションモデルの顔を自分の顔にすり替えたデジタル写真など幅広い。ホワイトチャペルでの個展では、反射板を用いて迷路のような不思議な空間がつくられるという。ウェストエンドのセイディ・コールズHQでも同時に個展が開かれるようだ。
06/01/24- 06/03/26

 
フリーズ・アートフェアでの展示風景。
Photo: Keiko Kurita

■ Tino Sehgal @ ICA 
ヴェネツィア・ビエンナーレではドイツ館代表、横浜トリエンナーレ出品と、去年やたら好調だったティノ・セーガルが、一年振りにICAに戻ってくる。文書や画像での記録を一切拒んでいるセーガルの場合、企画書なんてものはない。よって蓋を開けるまで何が出るか分からないが、最近あるサイトで、このプロジェクト用に50代の男女40名を集う文面をみつけた。今回も素人パフォーマーがたくさん登場するようだ。去年のレポートはこちらから。06/02/03 - 06/03/19

■ Martin Kippenberger @ Tate Modern 
ここ数年サーチ・ギャラリー、ガゴーシアンなどで紹介されてきたマーティン・キッペンベルガーが、いよいよテート・モダンにお目見えする。「80年代アートの化身」と自らのことを語り、44歳の若さで他界した彼は、自他共に認める80年代アートの金字塔。その表現世界の全貌が、平面作品40点、立体10点、インスタレーション4点によって明らかにされる。06/02/08 - 06/05/07

余談になるが、テート・モダンでは去年の秋から、開館後初めてとなる常設展示の掛け替えが行われている。その第一弾として先月さっそく、3階両ウィングが「Material Gestures」と「Poetry and Dream」をテーマにお披露目された。去年の秋にクローズされたNYにあるモーリツィオ・カテランのドアだけの画廊、The Wrong Galleryが加わったほか、リュック・タイマンスマルレーネ・デュマスニコラ・タイソンなどを紹介する現代絵画の展示室も新設。さらに、タシタ・ディーントーマス・シュッテの展示室ができるなど、現代作家の比重が以前に比べてだいぶ高くなった。

■ Deutsche Borse
Photography Prize 2006 @
The Photographers' Gallery

今年で10年目。いまや世界のアート系写真のトレンドセッターとなったフォトグラファーズギャラリーの写真賞。今年のノミネート者は、ロバート・アダムス(Robert Adams)、イト・バラーダ(Yto Barrada)、フィル・コリンズ(Phil Collins)、アレック・ソス(Alec Soth)の4名。受賞者は3月22日に同ギャラリーにて発表される。06/02/17 - 06/04/23

 
Phil Collins
they shoot hourses,
2004 (stills)
DVD
Courtesy: The Photographers' Gallery

余談になるが、先月ここのプレス担当に会った時に、今年の夏に川内倫子さんの個展がここで開かれると耳打ちされた。詳しいことはまたそのうちに。

■ Tate Triennial @ Tate
Britain

テート・ブリテン主催の3年に一度の現代美術展「テート・トリエンナーレ」が、この3月に開催される。ドイツ人キュレーター、ベアトリクス・ルフによって選ばれた作家36名(組)は、今のブリティッシュアートシーンを代表するキー・パーソンばかり。ピーター・ドイグオリバー・ペイン&ニック・レルフは前回に次ぐ二度目の参加。ターナー賞がらみでは、ダグラス・ゴードンリアム・ギリックなど。5年に一度の国内巡回展、ブリティッシュ・アートショウ6の出品作家からは、ダリア・マーティンレベッカ・ウォレンエンリコ・デイヴィッドなどが参加。いまや時の人となったティノ・セーガルも参加。06/03/01 - 06/05/14

 
Enrico David
Madreperlage, 2003 (detail)
Photo: toyoko ito

■ Nigel Cooke @ South London Gallery 
絵画展で一押しなのが、この春にサウス・ロンドン・ギャラリーで開かれるナイジェル・クック展。巨大な画布に微細な描写。ロマンチックな主題にグラフィカルなフォルム。雄大な自然に押しつぶされるように地を這う現代文明と、そこには一見ミスマッチと思える要素が共存する。2004年にテート・ブリテンの若手対象のプログラム「Art Now」で紹介されて以来、めきめきと頭角を現しているクック。ぜひ観てほしい作家のひとりだ。
06/03/30 - 06/05/07

■ Bas Jan Ader @ Camden Arts Centre
70年代アートの見直しとともに、ここ数年あちこちの企画展で見かけるようになったバス・ヤン・アダーのパフォーマンス映像。今年の春にカムデン・アーツ・センターで開かれるこの展覧会は、そんな彼に捧ぐ英国の公営ギャラリー初の個展になる。大西洋をボートで渡るというプロジェクトの最中に失踪してしまった、ロマンチックに馬鹿がつくアダー。そのエピソードに象徴されるように彼の作品の多くが、ロマンとユーモアとメランコリーに溢れている。
06/04/28 -06/07/ 02

■ おまけ:今年後半のハイライト
早めに予定を立てたい!という人のために、今年後半のプログラムも少しだけご紹介。まず押さえたいのが、キュレーター界の大スター、ハンス=ウルリッヒ・オブリストのコー・ディレクター就任で注目を集めているサーペンタイン・ギャラリーの展示。この夏には、東京国立近代美術館の「ドイツ写真の現在」展で日本でも注目されたトーマス・ディマンドの個展が開催される(6月2日から8月20)。また、秋には、コレクターやオークションハウスのオーナーを押さえて美術界最強の男と称されるデミアン・ハーストのコレクションを紹介する展覧会が予定されている(11月〜12月頃)。

また、テート・モダンのプログラムで注目したいのが、現在レイチェル・ホワイトリードの白い箱の山が展示されているタービン・ホールの次の展示、カールステン・フラー展。去年ガゴーシアンに実物大の回転ブランコを送り込んだあの謎めいた作家が、「アーティスト泣かせ」と言われるテートの巨大ホールを料理する。また、12月には第50回ヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したユニット、ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイスの個展が始まる。

  

1月17日

余談…

 

■ 『STUDIO VOICE』(2月号)の第二特集「ドキュメンタリー・フォトの現在」に、「REPORT FROM LONDON: ジャーナリズムとアートの交錯点」が掲載されました(P60〜61)。この記事は、9.11以降の英国におけるドキュメンタリー表現にフォーカスしたもので、写真や映像をみながらここ数年感じてきた事をまとめたものになります。紹介作家はジェレミー・デラーやリュック・デラヘイなど。

■おなじく同誌同号の「Photo Gallery」に、「ピーター・ケナード インタヴュー」が掲載されました(P67〜71)。

「非公式従軍作家」と異名をとるピーターは、ストリート・アーティストのバンクシーからロンドン市長のケン・リヴィングストンまでをファンにもつ、英国のアート界でも異色な存在。私が彼に初めて会ったのは去年の夏、プレスツアーで訪れた公募展East International 05の会場でのこと。政治アジトのような怪しげな部屋で、G8サミットの会場にもっていくポスターを印刷中だったのを覚えています(その時のレポートはこちら)。その後、あるパーティーで再会したのをきっかけに、今回の話へと急展開。12月上旬に行った取材は、「さあ、これから撮影!」という時に、終ったばかりの展覧会会場から半端じゃなくデカいキャンバスが大量に届き、それを写真家のロナルドと一緒に運ぶという、楽しいハプニングのなかで決行。嬉しいことに、ピーターの制作仲間のキャットも駆けつけてくれました。二人の新作発表展『Kennard & Phillipps: Untitled (Iraq)』が、来週の26日からフォトフュージョンで始まります。今回もイラク戦争に対する鋭い批判が込められているとか。ピーターのサイトはこちら。


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このページの掲載内容

2006年前半のハイライト
*エルムグリーン&ドラグセット
*ウゴ.ロンディノーネ
*ティノ.セーガル
*マーティン・キッペンベルガー
*ドイツ・ボーズ写真賞
*テート・トリエンナーレ
*ナイジェル・クック
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