10月27日

アートウィークが終って…

 

アート・フェア4つに、ターナー賞2005、今年の展覧会ハイライトが一斉に始まった先週。先日このコーナーで、「この秋のお薦め」として紹介したイベントにもさっそく行ってきましたので、とりあえずご一報を。

Frieze Art Fair
やっぱり今年もこれが一番。グレイソン・ペリー、チャップマン兄弟、チャールズ・サーチらロンドンの美術
界の常連はもちろんのこと、世界から450団体を越える美術館関係者が訪れたフリーズ・アート・フェア。悪天候にも関わらず、昨年を上回る47,000人が来場し、またしてもその底力を見せつけてくれた。

 
フリーズのパーティー会場で見かけたグレイソン・ペリー氏。
Photo: Keiko Kurita

もちろんビジネスも順調だったようで、ロンドンの大手、リッソン・ギャラリーの代表によると、4日間での売上は「2ミリオンポンド(約4億1千万円)くらい」。フェア全体の総売上げも、「昨年の26ミリオンポンド(約53億円)を上回るだろう」と予想されている。詳しくはまたそのうち。10月24日に終了。団体のサイトへ。

 Zoo Art Fair
ロンドン動物園内に設けられたズー・アート・フェアの会場は
、スペースの狭さもあって、檻のなかの動物たちが羨ましくなるくらい大混雑。よって私の記憶もまだごった煮状態ですが、その中で唯一異色を放っていた、アイビッド・ギャラリーのキャリー・ヤングの作品をご紹介。

 
ズー・アート・フェアで今回最も光っていたキャリー・ヤングの作品。
Photo: Toyoko Ito

ブースの一角に、リビングルームのようにアームチェアとテーブルが置かれ、「受話器を上げて下さい」とメッセージが書かれていた、この妙な作品。受話器を上げてみると、リリーなる女性が電話口に出て、「私の身の上話を聞きたいですか?」などと聞いてくる。何だが訳がわからぬまま話を聞き、一体これは何なのかと聞き返してみると、自分のことを説明するテレフォンサービス形式の作品だとか。非売品ゆえに商売にはまったくならなかったようだが、展示としては今回最もインパクトがあったのではないだろうか。10月24日に終了。団体のサイトへ。

■ scopeLondon
意外と言っては失礼だが、昨年より
レベルアップしていたのが、スコープロンドン。そして、この進歩に少なからず貢献していたのが、会場となったホテル、セント・マーティンス・レーンで、壁紙とベッドカバーが花柄から白へと変わり、調度品が少しエレガントになっただけで、印象がだいぶ変わった。

 
スコープロンドンの展示風景。フランスのギャラリーEric Mircherにて。
Photo: Toyoko Ito

しかし内装はモダンになったものの、「ベッドの上で蚤の市」という印象は残念ながら健在。「ベッドを使わなきゃ置く場所がない」「トイレでさえ無駄にはできない」というムードがありありと感じられたが、なかにはそれを逆手に取ってしまう賢いギャラリーもあり、フランスのギャラリー、Eric Mircherでは洗面台を効果的に活用。悩める「イノシシ人間」の彫刻を置いてシュールな演出を試みていました。10月24日終了。団体のサイトへ。

ここで東京から取材に来ていたタグボートのアスカさんにお会いしました。私がパーティーに明け暮れていた間、アスカさんは毎晩ロンドンからレポートを送っていたと聞き愕然!本当に、頭が下がる思いでした。アスカさんのレポートは
こちらで読めます。写真も沢山掲載されています。

 Pilot:2
今回Foglessで密かに注目していたのが、ギャラリーがまだついていない若手のみを紹介する
このパイロット:2。蓋をあけてみての感想は、一番近いところで美大の卒業展。場所も元倉庫というオンボロならば、作品のスタイルもかなりその路線。

 
パイロット:2の展示風景。離れの倉庫にて。
Photo: Toyoko Ito

でも、やはり、有名キュレーターが太鼓判を押す作家だけのことはある。カジュアルながらも出来がいい。場所が変われば、まただいぶ違って見えることだろう…と思いながら、ジグマー・ポルケの反転版のような沢柳英行氏の立体に見入ってしまった。木の板に小さな穴を何万個も開けて作った、非常に精巧なつくりの男性像でした。こちらの詳細もまた後ほど。団体のサイトへ。

Paul McCarthy @
Whitechapel

ミュンヘンで絶賛されただけに期待していたポール・マッカーシー展だったが、見方を間違えてしまったようだ。ギャラリーは何かと自分の展示スペースを誇大評価するものだが、この展示に限って言えば、オフサイトの展示が主役。ディズニーランドの「カリブの海賊」を着想とする、マッカーシーの汚くて、下品で、乱暴で、馬鹿デカくて、狂乱めいた作品が、ここで思う存分見れる。最高の展示だ。でも私のように間違ってギャラリーに先に行ってしまうと、世にもエキセントリックな作家の個性を押さえに押さえた立体とドローイングに迎えられ、「こんな作家だったっけ?」とシラけて帰ってくることになる。(一緒に観にいった日本から来ていたライターの松下幸子さんに思いきり愚痴ってしまったが。すみませぬ)。来年1月8日まで。詳細はこちらで。オフサイトの住所は:
Coppermill House,
78-90 Cheshire Street London E2

 

オフサイトの会場の展示風景。私が行ったときにはまだ準備中でそそくさと出てきたが、非常に見ごたえのある展示とみた。
Photo: Toyoko Ito

Banksy @
100 Westbourne Grove

200匹のネズミと空間をシェアしたこの日は、フォグレス始まって以来の最悪の日。ジャケットを着た骸骨のお腹に、ネズミがドバーッと群がっているのを見たときには卒倒しそうになったが、そこをなんとか持ちこたえ、4名限定の柵の中に入ってきた。つまり、ネズちゃんと一緒のお部屋だ。

まず第一の難関が臭い。彼らはみな「細菌チェック」にパスした清潔なネズミたちだったが、床にばら撒かれた餌と汚物が一緒になって悪臭がスゴい。次が動きで、ちょろちょろ動くために(200匹もいるし)、美術品そっちのけで(一応油彩とか彫刻とかありました)目は彼らの動きに釘付け。取材に来ていたBBCのレポーターに「ネズミと作品、どっちを見に来たんですか?」と聞かれ、「ネズミ」と即答してしまった。

 

ネズミが苦手な方は、クリックしないで下さい
Photo: Toyoko Ito

今回の展示品は、半分がバンクシー自身が描いた油彩で、残りの半分が買った絵画に操作を加えたもの。前者はゴッホやウォーホールなどを真似た油彩で、後者は金メッキの額に入ったオールドマスターズ風の油彩に彼が部分的に手を加えたもの。値段は一点約300万〜500万円で、一般公開の前にすべて完売。購入者にはデミアン・ハーストやポール・スミスらがいる。10月24日に終了。詳しくは作家のサイトで。

Chapman brothers @
White Cube

バンクシーの後だったせいか、壁がピンクだったせいか、平面だったせいか、可愛らしく感じられたチャップマン兄弟の個展。だが、よ〜く見ると、やはり毒がある。串刺しの死体にしゃれこうべの山、四つ頭のミュータント女に血まみれのテディー・ベアと、すべてがグロい。

全部で300点近くある今回の作品は、ゴヤの版画(オリジナルを含む)の上に、二人が絵を描いたもの。まるで子供がお絵描きごっこでもするように、希少かつ貴重な美術品を下絵にしてしまっているという、かなり大胆な作品だ。

 

ホワイト・キューブのジェイク&ディノス・チャップマン展にて。
Photo: Toyoko Ito

「ゴヤとコラボしたんだよ」とは、取材陣に囲まれていたディノスのコメント。一体どうしたら死んだ画家とコラボができる、用語が間違っているだろうと思いながら聞いてみると、「そんなの超〜簡単さ。ま、あっちは気づいてないかも知れないけどね」と、にんまりと笑って返事。この悪ガキ的頭脳プレーは、作品の説明に「Eighty … improved etching」と、「進歩した」「価値を上げた」「価格を上げた」という意味を持つ「improved」が入っているところにも匂う。実際、あるジャーナリストが自分の行為をヴァンダリズムだと思わないかと聞くと、「価値が上がっているんだからそう思わない」と一言。
12月3日まで。詳細はこちらで。


■ Jeff Wall @ Tate Modern
最後は、害もなく毒もなくただ美しく、ジェフ・ウォール。過去25年に渡る作品50点を集めた回顧点がテート・モダンで始まった。ライトボックスにマウントされた発光する写真は、小振りの映画のスクリーンのように、今にも動き出しそうな緊張感にあふれている。ウォールは絵画や美術史に造詣の深い作家として知られ、今回の展示ではその点にもフォーカスが当てられている。来年
1月8日まで。詳細はこちらで。(トコ)

 
テート・モダンで始まったジェフ・ウォール展の展示風景。
Photo: Toyoko Ito

 

10月13日

この秋のお薦め ベスト10

 

アートフェア3本が同時開催される今月は、ロンドンのアートイベントが最も活発になる時期。fogless一押しの展示&イベントを選んでみました。

1. Araki @ Barbican
「天才アラーキー」こと荒木経惟の過去最大の回顧展がバービカン・ギャラリーで開始。作品数4000点を誇る展示は、『私、生、死』を三本柱にアラーキーの40年に渡る活動を網羅したもの。『去年ノ夏』『青ノ時代』『色淫』などの旧作のモノクロ写真に色を施した色彩写真をメインに、『センチメンタルな旅』『エロトス』『東京ラッキーホール』などの代表作が勢ぞろい。5日のプレス内覧会にスターのごとく現われたアラーキーは、キュレーターの挨拶のあと開口一番、「え〜とですね、これが私がみんなセックスした女たちね」と美女達のエロな写真を背に発言
。大うけした記者から「それが若さと創造力の秘訣なんですか?」とあとで聞かれていました。詳しくはまたそのうちに。10月6日〜1月22日まで。詳細はこちらで。

 

バービカンセンターのアラーキー展の会場にて。

2. Rachel Whiteread @ Tate Modern

展示についてはレビューをご覧下さい。10月11日から4月2日まで。詳細はこちらで。

3. Francis Alys@ Artangel + National Portrait Gallery
展示についてはレビューをご覧下さい。9月28日から11月20日まで。詳細はこちらで。

4. Turner prize show @ Tate Britain
今年もいよいよターナー賞レースの時期。今年の候補4名は、政治や社会情勢への言及が目立った去年に比べのんびりムードの堅実派作家たち。筆遣いにこだわる正統派画家のジリアン・カーネギー、物のルーツや生産過程を立体や映像通じてたどるサイモン・スターリング、オップアートをガムテープ美学で包んだジム・ランビー、時間や歴史に関心を向けるダレン・アーモンド。どんな展示になるのかが楽しみ。
10月18日〜1月22日まで。詳細はこちらで。6月3日付けの日誌もご参考に。

5. Frieze Art Fair @ Regent Park
今年で3年目。アート・バーゼルやNYのアーモリーショーに負けずとも劣らない、英国を代表する国際アートフェアが今年も開催。欧米に日本、中国、韓国などが加わったギャラリー160団体が参加し、4日間に渡って現代アートの美味しいどころが売りに出される。

 
フリーズ・アート・フェアの会場にて。
Photo: Yuki Tawada

フリーズの強みといえば、アートフェアらしからぬコミッションワーク。今年はアンドレア・ジッテル、ミヒャエル・ボイトラーら作家10組が参加、そのうち4組は一般が参加できるツアー形式の作品を発表するとか。また、今年から新たに大学卒業後5年以内の若手を対象としたアワード「The Cartier Award」が設立され(テートへの寄付はどうもなくなったみたい)、受賞者には来年のフリーズアートフェアでの発表の機会が与えられるほか、デルフィナスタジオ財団での3ヶ月のレジデンシー、制作費1万ポンドなどが提供される。10月21日から24日まで。詳細はこちらで。

6. Pilot 2 @ Farmiloes Building
去年からスタートしたこのイベントは、英国はもとより北南米、アジア、アフリカなど世界各地のキュレーターや評論家に、「これぞ!」という若手作家1名をそれぞれ選出してもらい、それらの作家が展示を行うという一風変わったイベント。今年は会場を、不便という声の高かったライムハウスからロンドン中心部のクラーケンウェルに移し、去年建築ビエンナーレが開かれたFarmiloesで開催。

参加アーティスト約75組のうち、気になるのが今年のヴェネツィア・ビエンナーレにも参加しているセンター・オブ・アテンション、去年のイースト・インターナショナルにノミネートされたアリシア・パズ、ヴィクトリアミロギャラリーなどでの展示経験をもつラース・ニルソンあたり。日本人作家はロンドン在住のサキサトムさんと澤柳英行さんのふたりが参加。
10月21日から24日まで。詳細はこちらで。

7. Zoo Art Fair @ London Zoo + Scope London @
こちらの二つは去年デビューしたアート・フェア。リージェント・パーク内のロンドン動物園で開かれるズー・アート・フェアには、英国内のオープンして4年以内の若手ギャラリー28団体が出展。フリーズに対抗して、今年からアワードとコミッションワークが追加。

 
Zoo Art Fair
Photo: Yuki Tawada

一方、ホテルの客室を利用したアメリカ生れのスコープ・ロンドンは、NY、トロント、ベルリン、パリ、マドリッドなど様々な都市から集まった42団体・個人が参加。今年は会場をリージェント・パークからトラファルガー広場方面に移し、フィリップ・スタルクのモダンシックなデザインで有名なセント・マーティンズ・レーンがその会場。ズー・アート・フェアは10月20日から24日まで。スコープ・ロンドンは10月21日から24日まで。

8 Paul McCarthy @ Whitechapel Art Gallery
ポルノ、ヴァイオレント、グロテスクと三拍子そろった元祖「バッド・アーティスト」のポール・マッカーシーがロンドンに再上陸。ヨーロッパ最大規模を豪語するこの展覧会では、ドローイング、立体、映像、インスタレーションを網羅する過去の作品のほか、ギャラリー近くの倉庫で新作「Pirate Project」が披露される。10月23日から1月8日まで。詳細はこちらで。

9 Jake & Dinos Chapman @ White Cube
ロンドンでの展示は一昨年のターナー賞ノミネート以来となるチャップマン兄弟。今回の展示品は、ターナー賞の展示でも発表された、ゴヤのエッチングを基にした作品。わざわざオークションで大枚はたいてゴヤのオリジナルを買ってそれを加工するという、よ〜く考えると美術愛好家が激怒しそうな作品。オマージュなのか、ヴァンダリズムなのか…。10月19日から12月3日まで。
詳細はこちらで。

10 Jason Rhoades @ Hauser & Wirth
高橋知子とトレイシー・エミンがラリッてコラボしたらこうなるかもしれない。展示室は何しろガラクタとエロなネオンでいっぱいだ。物は、エジプト製水パイプが805個、アメリカンインディアンのお守りドリームキャッチャーが556個、カーボーイハットが180個、そのほかベルトやらマットやら陶器やら色々。そのまわりには夥しい数のネオン。そのすべてが女性器から連想された言葉をつづったもの。この作品には、7世紀に破壊されるまでメッカのカーバ神殿に奉納されていた360体の偶像が概念的にからんでいるとか。う〜ん、難しい!9月21日から10月29日まで。詳細はこちらで。(トコ)

 

10月13日

余談…

 

DAZED&Excite』に、リヴァプールFACTの「Rock the Future」展に出品中のるさんちまんへのインタビュー記事が掲載されました。先日のfoglessの記事では触れなかった名前の由来などについて聞いてみました。

同じくこの「Rock the Future」展の英語版のレビューが、イアン・ジャクソンさんが運営するリヴァプールのアートサイト『artinliverpool.com』に掲載されていますので、どうぞこちらもご参考に。

 

10月7日

白山殖産がサーチに反撃!?

 

サーチギャラリーの移転表明からまだわずか十日たらずだが、先週までの内輪喧嘩が裁判沙汰となり、建物のオーナーの白山殖産とギャラリーの関係が急速に悪化している。

先週までの報道だと、「白山の乱暴狼藉に腹をたてたサーチ・ギャラリーがやむなくカウンティーホールを去る」という印象だったが、今日の報道によると、サーチ・ギャラリーはカウンティーホールからの立ち退きを白山側から迫られているとのこと。


その理由は大体次の通りで、サーチ・ギャラリーが建物内の賃貸契約外の場所を作品の展示やその他の用途に繰り返し使用してきたこと、チケット一枚につき最低でも幾らかの入場料を取るという契約を守らず『Time Out』誌とのタイアップで「一枚の値段で二人」入れるサービスをずっと行ってきたことなどが挙げられている。

また、今日の報道で伝えられた白山殖産の弁護士の言い分によると、サーチ・ギャラリーはギャラリーの看板作品をチェルシーの新スペースに移したあと、現在のカウンティーホール内のスペースを写真または若手の作品をみせる「低コスト美術館」として使おうとしているらしく、これも論争のひとつに。

写真と若手の一体どこがいけない?なぜこれが問題に?と疑問を抱く方もいるかもしれないが、主要作品を欠く「低コスト美術館」にされてしまっては来館者数ががた落ち。カウンティーホールではテナントの売上高に応じて賃料が決まる歩合賃料制が取られているようなので、建物のオーナーとしては有難くないということになるのだろう。

詳しくはこちらで
BBCの記事
The Independentの記事
The Guardianの記事


 

10月3日

展覧会レビュー掲載

 

久々にレビューを二本書きました。
カールステン・フラー
@ガゴーシアン
キャンディス・ブレイツ@ホワイト・キューブ

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アートウィークが終って…
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余談…
(10.13)

白山殖産がサーチに反撃!?
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展覧会レビュー
*カールステン・フラー
*キャンディス・ブレイツ
(10.3)