8月25日

まとめてレポート
 

久々の日誌書き込み。今日はここ一ヶ月間ほどの出来事をまとめてレポートします。

■ グラフィティ旋風、炸裂!
メディアからのバッシングが目立つなか、地下鉄オールド・ストリート駅周辺に現われたヒップなグラフィティ群。アート指数の高いこの界隈に相応しく、かつて落書きだらけだった薄汚い壁がカラフルな青空ギャラリーへと変貌した。

グラフィティと言えば、‘人目を忍んで夜中にこっそり…’が定番だが、こちらはその逆。ショーディッチ・フェスティバルの一環として、白昼堂々、警官もスマイルという和やかな空気のなか描かれたもの。参加作家の動機も、「グラフィティ・アートのイメージをポジティブなものに変えたい」と前向き。

実はこの企画、楽しいだけなくタイミングの方も抜群。と言うのも、英国ではここ一ヶ月間程、グラフィティをめぐる論争がかなりホットな話題となっている。街に溢れるグラフィティのお仲間である“落書き”や“グラフィティ・ライティング”を問題視する報道がBBCをはじめとするマスコミで流されたり、グラフィティ展を開催中の美術館が環境保護団体から非難されたりと、騒ぎが相次いだ。

その引き金となったのが、環境保護団体Keep Britain Tidy(KBT)による報告書。国会議員122名のサポートを取り付けたこの報告書によると、グラフィティの除去に掛かる費用はイングランドだけでも年間27ミリオンポンド(53億円)。その急増化に一役買っているのが、破壊行為であるグラフィティを「クール」なものとみなすアート業界やポップスターの存在であると、この報告書ではアート業界の姿勢が厳しく問われている。

 






Photo: toyoko ito

ショーディッチ・フェスティバルの一環として、オールドストリート一帯にグラフィティがお目見え。
(主な道:
オールドストリート、コロネット・ストリート、ホックストン・ストリート)

しかし今回のオーガナイザーの一人ブラム(Blam)さんは、グラフィティ=犯罪行為という短絡的な図式には閉口。スプレーで殴り書きされた“落書き”を指差しながら、

「グラフィティには二種類あって、そのひとつがこの"タグ"って呼ばれる、有名になりたい奴らが自分の名前を殴り書きしたグラフィティ。それとは別にいま僕らが描いているような絵画表現としてのグラフィティもあるんだけれど、マスコミはこの二つを区別していない」と怒りを表す。

グラフィティーを“落書き”とみるか“絵画表現”とみるか。考え込むよりは、まずはオールドストリートに行って自分の目で確かめてほしい。(日本組みの方は写真を見て下さい)(トコ)

Shoreditch Festivalのサイト

ここ最近のグラフィティを巡る騒動について:
BBCの記事1記事2
The Guardianの記事
Keep Britain Tidyのサイト

■ 高級画廊街、コークストリートに異変?
ギャラリーのコークストリート離れが目立つこの頃。それはきっと今から4年前、ヴィクトリア・ミロ・ギャラリーがイーストエンドに移転した時に始まったと考えるのが妥当だろうが、今頃になってようやく本格化してきたようだ。

今年なって扉を閉ざした、この道のギャラリーは三軒。一番最近の撤退組みは、先月末付けでここを引き上げたハーシュル・コンテンポラリー・アート。その二ヶ月前、6月には、マイケル・ヒュー=ウィリアムスが思い切りよくバタシー地区に新店舗を移転オープン。さらに遡ること4月には、若手の起用で定評のあったエントウィッスルが展示プログラムを廃止し、ディーラー業のみに徹することを発表した。

 



Photo: toyoko ito
マイケル・ヒュー=ウィリアムスの新スペース。場所はバタシー・ブリッジ傍のアルビオン再開発地区。

さらにエリアをこの界隈全体に広げるならば、バーリントン・ストリートにあったローラン・ディレイが一年半前に展示プログラムを廃止。クリフォード・ストリートのアスプレー・ジャック)についてもあまり良い噂を聞かない。

このようにコークストリートを取り巻く空気は沈滞気味だが、ウェストエンド全体となると一転して空気は明るい。スプルース・マーガース・リー、ハウザー&ワースなどの大陸のギャラリーのロンドン進出に続き、ホーンチ・オブ・ヴェニソンやガゴーシアンが二店舗目を開廊するなど、ここ1、2年‘メガ・ギャラリー’の躍進が目立つ。

つまりは主要プレイヤーの入れ替わり。その中で、コーク・ストリートという名前と、軒を連ねるメリットの効力低下が進んでいるわけだ。華やかなスタンドプレーを得意とする‘メガ・ギャラリー’が台頭するなか、‘三軒寄り集まりゃ’の時代は過去のものになりつつあるようだ。(トコ)

Hirsch Contemporary Art
Albion (Michael Hue-Williams)
Entwistle
Spruth Magers Lee
Hauser & Wirth
Haunch of Venision
Gagosian

■ ‘消えた’80,000ポンド、RA学長辞任

名門中の名門、ロイヤル・アカデミー・スクールの学長辞任の報道が先月末、消えた80,000ポンドと一緒に英国の新聞を賑わした。

タイムズ、インディペンデント両紙の報道によると、ブレンダン・ネイランド氏の辞任の申し出は、秘密の銀行口座と80,000ポンドを含む秘密の入出金が明らかになった直後に、学内の特別会議で受け入れられたとのこと。

問題の‘消えた’80,000ポンドについては一部で横領などの噂も流れたが、報道によると、調査はRA内部によるものに止まり、警察の介入はなかったようだ。騒動の渦中にいるネイランド氏はフランスに滞在中で、‘消えた’80,000ポンドについてはノーコメント。

ロイヤル・アカデミー(王立芸術院)は、1768年にジョージ三世によって設立された英国で最も古く、格式のある王立の芸術機関。初代学長は18世紀の肖像画家、ジョシュア・レイノルズで、アカデミーの教育部門を担うロイヤル・アカデミー・スクールの卒業生には、JMWターナーやウィリアム・ブレイクなど西洋美術史に燦然と輝く巨匠の名が連なる。

これだけ歴史があって、しかも王立。と来れば、運営も国営?と思われるでしょうが、実際のところは一民間機関。政府からの助成金なしに、展覧会からの収益および個人・民間企業からの寄付金だけで運営されている。‘パトロン’という言葉を連想させる、裕福な民間人たちからのサポートが欠かせない機関のひとつだ。

実際のところ、この‘パトロン’という言葉は学内でも身近なようで、フォグレスに匿名で語ってくれた同校の元学生によると、大学を介して援護者を紹介してもらっている学生は少なくないとか。難関学のこちらは、学費免除いう点でロンドンの美大のなかでも特別な存在だが、重い扉の奥では21世紀とは思えないブルジョア教育がなされているようだ。

このブルジョア体質がいけないのか、それとも不透明な教育方針がいけないのか、それには筆者も首を傾げてしまうが、確実に言えるのは、お金にだらしがないこと。今回の‘消えた’80,000ポンドと秘密の口座はまだ可愛い方。8年前には財務担当者のトレヴァー・クラークが400,000ポンドの横領で、5年間の禁固刑を食らっている。(トコ)

The Timesの記事
The Independentの記事

■ 余談ですが…

Scout Galleryで先月個展を開催した都築響一さんにインタビューをしました。原稿はDazed & Exciteに寄稿させて戴きました。

8月18日

お知らせ
 

7月30日付掲載のインタビュー「Stella Vine」についてお知らせがあります。

インタビューのなかでステラ・ヴァインさんに語っていただいた一部の内容について、スタッキスト・インターナショナルの代表、チャールズ・トムソンさんから、掲載情報に一部誤りがあるとのご指摘のメールを戴きました。ご指摘をいただいた箇所につきましては、ヴァインさんとの話し合いのもと一部訂正させて頂きました。

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*グラフィティ
*コークストリートに異変?
*‘消えた’80,000ポンド

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