5月26日

ブリット・アート、灰に !(続報)
 

多くの新聞がトップ記事で扱ったこのニュース。各報道によると、現場は今朝になってやっと混乱が静まってきたようだが、焼失した作品の詳細についてはまだ確かなことは分かっていない。

以下に、追加情報をいくつか。(以下の情報は5月26日正午の時点のものとなります)

■火事発生について
5月24日未明に発生。同日午前3時40分に消防隊が現場に到着したときには、火災の規模はサッカー・グラウンドくらいに広がっていたという。消防車15台以上が出動、80名を超える消防士が消火にあたった。出火の原因についての報道は控えめだが、倉庫付近で行われていた土木作業現場から出火と報道している新聞も一部ある。炎上した倉庫を所有する会社モマートよると、この火事により建物は全焼。

■炎上した倉庫について
美術品の取扱い専門業者モマート(Momart)が所有する倉庫。場所はロンドン東部にあるレイトン。この敷地内に倉庫は三棟あり、炎上した建物の面積は10,000平方フィート(365.76平方メートル)、サッカーグラウンド一つ分くらいのサイズという。レイトンの倉庫には、モマートが管理する美術品の5〜10%が保管されていた。

■モマートについて
美術品の保管、運搬、設置などを専門にする会社。主な法人クライアントにはサーチ・コレクションの他、テート・ギャラリーやナショナル・ギャラリー、バッキンガム・パレスなどが控える。また、個人クライアントには、デミアン・ハースト、レイチェル・ホワイトリードなどがいる。最近の主だった仕事には、V&Aで展示中のラファエロの下絵(システィーナ礼拝堂のタペストリー用)の移動、「センセーション」展のベルリン、NYへの移動運搬作業などがある。

■焼失したと思われる主な作品
・チャップマン兄弟の「Hell」
・トレイシー・エミンの「Everyone I Have Ever Slept With 1963-95」
・デミアン・ハーストのスポット・ペインティングとスピン・ペインティング(複数)
・サラ・ルーカスの「Chicken Knickers 1997」含数点
・レイチェル・ホワイトリード、ギャリー・ヒューム主要作品
・パトリック・コールフィールドの絵画(複数)
・クレイギー・ホースフィールドの写真(複数)
・マーティン・マロニーの絵画(複数)

■チャールズ・サーチのコメント
『恐ろしくてたまりませんが、[チャップマンの「Hell」とエミンのテントは]なくなってしまったかもしれません。とても失望しています。たぶんこれは人が考えうる最悪の事態だと思います。』(The Guardian, May 26, 2004)

■ディノス・チャップマンのコメント
『あの手の作品はあれしかなかったんです−複製はできません。作り直すことはできないと思います。可燃性ガスがある隣りにアートを保管しておくのは、僕はあまりいい考えだとは思いませんね。』(The Times, May 26, 2004)

■デミアン・ハーストの親近者のコメント
母:『今朝、電話をして話しました。あそこには彼の作品がたくさんありましたので、元気がありませんでした。』(The Times, May 26, 2004)

セールス・マネージャー:『もちろんデミアンはとても心配しています。彼の絵画とあの変てこな彫刻を保管するのにモマートを使っていましたので。』(The Guardian, May 26, 2004)

(文&訳:トコ、12:30pm)

参考資料:
The Times, May 26, 2004
The Guardian, May 26, 2004
The Independent, May 26, 2004
BBC, May 26, 2004
Metro, May 26, 2004

5月26日

ブリット・アート、灰に !
 

英国屈指の美術品蒐集家、チャールズ・サーチの美術品が灰になってしまった。

BBCの報道によると、火事で失われたものにはサーチ・コレクションの看板作品が多数。チャップマン兄弟の「Hell」、エミンの「テント」も含まれている可能性が高い。

火事が起きたのは24日、月曜日の早朝。場所はロンドン東部レイトンにある美術品管理会社モマート(Momart)が所有する倉庫。出火から二日たった現在でも建物は燃え続けている。

 


Jake & Dinos Chapman
Hell, 1999-2000, (detail)
The Saatchi Gallery
Photo: toko

被害の具体的な内容はまだ明らかにされていないが、サーチ・コレクションの被害は金額にして数億円に上ると言われている。サーチ自身は大打撃を受けていると報道されている。

チャップマン兄弟の「Hell」はサーチが50万ポンド(約1億円)を投じて購入した同コレクションの看板作品。今年の3月まで同ギャラリーで開催されていた「Jake & Dinos Chapman」展では、展示のハイライトとして注目を集めていた。同作品の写真が現在、水戸芸術館で開催中の「孤独な惑星 - lonely planet」展で展示されている。

トレイシー・エミンのテント「Everyone I have ever slept with 1963-5」は、エミンが一緒に寝た相手102人の名前がが縫いこまれた作品で、彼女の代表作のひとつとされている。

モマートが運営するこの倉庫にはサーチ・コレクションの他、ナショナル・ギャラリー、バッキンガム・パレスの所蔵品も含まれていたと報道されている。また、同会社のクライアントには、テート・モダン、テートブリテンなども含まれている。

英国の美術業界はこの取り返しのつかない損害に大きな打撃を受けている。(トコ、8:00am)

詳しくはBBCのサイトで。

5月23日

ターナー賞ノミネート者発表 
 

今年の候補者は、カトゥルーグ・アタマン(Kutlug Ataman)、ジェレミー・デラー(Jeremy Deller)、ラングランズ&ベル(Langlands & Bell)、インカ・ショニバレ(Yinka Shonibare)の四名。近年続いた「ブリット・アート」路線からはずれた、新鮮な顔ぶれとなっている。

カトゥルーグ・アタマンは、英国在住のトルコ人アーティスト。もともと映画監督である彼の作品は、登場人物が身の上を延々と語るインタビュー形式、証言型の映像作品であることが多い。同性愛者、性転換者、移民など社会のボーダーで生きる人々が頻繁に登場する。今回のノミネートは、去年のイスタンブール・ビエンナーレおよびヨーロッパ各地での展示が評価されてのこと。アタマンはここロンドンでの注目度も高く、昨年だけでもサーペンタイン・ギャラリーでの個展、バービカン・ギャラリーの「Witness」展、テート・ブリテンのトリエンナーレと展示が続いた。

ジェレミー・デラーも同じくロンドン在住。他者とのコラボレーションが多い彼の作品は、映画制作から音楽プロジェクト、パフォーマンスと多岐にわたる。今回のノミネートは、テキサス州を旅しながら撮った映像をもとに制作したインスタレーションが評価されてのこと。デラーはつい最近、フランクフルト・バレエで70人の素人ダンサーを使ってダンス・パフォーマンスを披露したばかり。2001年には、アートエンジェルのコミッションのもと、1984年の英国の炭鉱労働者のストライキを題材にした映画「The Battle of Orgreave」を発表している。現在は、V&Aで先週から始まった「Shhh」展にサウンド作品を出品中。

ラングランズ&ベルは、ベン・ラングランズとニッキ・ベルが'78年に結成したユニット。以来、立体に建築的エッセンスを加えたユニークな作品を発表してきた。今回のノミネートは、「ウサマ・ビンラディンの家(The House of Osama bin Laden)」と題された、写真と映像を使ったインスタレーションが評価されてのこと。ロンドンの帝国戦争博物館(Imperial War Museum)で既に展示済みのこの作品は、タリバン政権崩壊後の2002月10月に二人がアフガニスタンを旅して記録したもの。彼らが訪れた場所には90年代後半にビンラディンが滞在していた家も含まれている。

インカ・ショニバレは英国生まれ、ナイジェリア育ちのアーティスト。ドクメンタ11など国際舞台でも既に活躍中の彼の作品には、アフリカを髣髴させる布地が決まってが登場する。これらファブリックは、両国の文化を併せ持つ自身を反映するように、英国の伝統絵画からのモチーフと一緒によく使われる。アフリカ模様のドレスを着た18世紀の貴婦人が、セクシャルなポーズを取っているのというのが定番だ。今回のノミネートはロンドンのスティーブン・フリードマン・ギャラリーでの個展とオランダでの個展が評価されてのこと。(トコ)

各ノミネート者の展示は、10月20日から12月23日にかけてテート・ブリテンで行われる。詳しくはテートのサイトで。

5月18日

ロンドン最新ギャラリー事情 
  久々にロンドンからの書き込みです。ちょっと離れている間に、色んな事が起きていたようです。

■ NYに二軒、ロスに一軒、ロンドンにはヘドン・ストリートに2000年に上陸したあのガゴーシアン(Gagosian)が、今月27日、キングス・クロスにロンドン第二号店をオープンします。キングス・クロスは、ロンドンのなかでもドラッグ・ディーラーの出没率がトップクラスというかなり物騒な街。しかし、ヨーロスターの次期始発駅に決定したことにより(2007年開通予定)、現在再開発が大々的に行われている注目のエリアでもあります。ガゴーシアンの新スペースは、駅から徒歩5分くらいのブリタニア・ストリートに開廊します。

 


今月27日に、ブリタニア・ストリートにオープンするガゴーシアン。そこら辺の美術館よりもずっと大きい新ギャラリーは、ヘドン・ストリートのスペースの6倍とか。
Photo: toko

占有面積1,400平米と、ロンドン最大級の広さを誇る新スペースは、その昔は自動車修理工場として使われていたところ。展示室は三部屋あり、一番大きな展示室の最長辺は28メートル。このサイズは、イーストエンドのヴィクトリア・ミロ・ギャラリーと同レベルとなりますが、ガゴーシアンでは全室に自然光が取り込めるよう展示室はすべて一層に並んでいるとのこと。

オープニング展は、アメリカの大御所画家サイ・トゥオンブリ(Cy Twombly)の新作展。トゥオンブリの作品は現在、サーペンタイン・ギャラリーでも展示中です。

■ 次のギャラリーはそんなガゴーシアンのもうひとつのお店、ウェストエンド店と目と鼻の先。リージェント・ストリートから脇道に入った雑居ビルの一階(日本式二階)に、先月29日に開廊したプログラム(Program)。経営者は、百貨店ジョン・ルイスの裏手にあったウィグモア・ファイン・アートで審美眼を鍛えたソティリス・キリヤコフ(Sotiris Kyriacou)さん。オープニング展は、ナイキ・サヴァス(Nike Savvas)とクリストファー・ランド二(Christopher Landoni)の二人展。キリヤコフさんの話によると、この後はパヴェル・ビュッヒラー(Pavel Buchler)、そして今年秋には、サーチ・ギャラリーの「油の部屋」で知られるリチャード・ウィルソン(Richard Wilson)が登場するということ。

 


ピカデリー・サーカスから徒歩5分という、ロンドンのど真ん中にオープンしたプログラム。でも実際にギャラリーが面している道は、細〜い小道なので、通り過ぎてしまわないようご注意を。
Photo: toko

■ 同じくウェストエンドでは先月、デューク・ストリートにトーマス・デイン(Thomas Dane)が開廊。そのすぐ裏には、あのホワイト・キューブも物件を購入済みと、ディーラー達の進出が目立ちます。が、そんなハイムードのなか、残念な話もちらほら。そのひとつが、高級ギャラリー街コーク・ストリートにあるエントウィッスル(Entwistle)で、先月下旬に業務縮小を伝える知らせが届きました。評判の良かった展示プログラムを廃止し、契約アーティストも手放すことに。今後はセカンダリー・マーケットでのビジネスとコンサルティングに専念するようです。(トコ)

5月18日

展覧会ハイライト
 

■ 今月と来月は、YBAの存在が目立ちます。まず、前出のガゴーシアンのウェストエンド店では現在、デミアン・ハーストデイヴィッド・ベイリーの共同作品展が催されています。14枚の写真で構成された今回の作品は、イエス・キリストの死刑宣告から埋葬までの流れを、14のシーンで描いたキリスト教美術の定番『The Stations of the Cross(十字架の道行)』を表したもの。撮影者はベイリーですが、写された内容には、ぶつ切りにされた牛の頭や血まみれのシャレコウベなど、ハーストの悪魔的な色がかなり濃く出ています。彼自身がキリストに扮して登場している写真もあります。

"The Station of the Cross"
David Bailey & Damien Hirst
04/04/30 - 04/06/05
Gagosian (Heddon Street)

■ ロンドン中心部のナショナル・ポートレート・ギャラリー(NPG)では、サム・テイラー=ウッドの新作『David』の公開が、先月27日より始まりました。西洋美術の枠組みのなかでデイヴィッドと言えば、旧約聖書に登場するイスラエルの王、ダビデがまず頭に浮かびますが、こちらのデイヴィッドは現代のヒーロー、あのデイヴィッド・ベッカム選手。悩ましげに寝返りを打つ彼の寝姿が、1時間7分に渡って堪能できてしまいます。交渉を始めたのは一年以上も前のことというこの作品は、トレーニングでくたくたになってお休み中の彼を、マドリッドのホテルで撮ったもの。フットボール界のヒーローの無防備な一面が見られる逸品です。(ベッカムとベッドを共にしたような錯覚に陥れる、という感想もちらほら)

"David" by Sam Taylor-Wood
Room 41
National Portrait Gallery

■ さて今月はYBAのクイーン、トレイシー・エミンも登場。映像作品を集めた『Tracey Emin: Can't See Past My Own Eyes』が、ウェストエンドのスケッチ(Sketch)で25日から始まります。日替わりで上映される作品は、地中海で撮影された'97年作「Emin & Emin」をはじめとする、エミンの自伝的映像作品13点。レイプされた、中絶した…と、人生=作品である彼女の毒舌な表現世界が堪能できます。これに追加で、彼女お得意のネオン作品なども数点展示されるようです。(トコ)

"Tracey Emin: Can't See Past My Own Eyes"
04/05/25 - 05/07/10
Sketch

5月18日

その他にも…
 

■ ロンドン初の写真フェア「photo-london」が、今週20日から23日までロイヤル・アカデミーで開催されます。出展ギャラリーは、公営のフォトグラファーズ・ギャラリーからホワイト・キューブ、リッソン・ギャラリーなどのファインアート系商業ギャラリー、スカウト、セルダ・チートルなどの写真系商業ギャラリーまで合計50団体。開場は、去年10月にアルマーニ展でこけら落としを迎えたバーリントン・ガーデン側の建物。

photo-london
04/05/20 - 04/05/23
Royal Academy of Arts at Burlington Gardens
www.photo-london.com

■ 夏の風物詩、サーペンタイン・パビリオンが、今年に限って冬に変更。建築家は、まつだい雪国農耕村センターなどの設計で日本でも知られているオランダ人建築家ユニット、MVRDV。ギャラリー側に提出した彼らの設計案がとてもユニークなものだったらしく、それに合わせて建設時期を冬にしてしまったとか。

MVRDVは、ヴィニー・マースヤコブ・ファン・ライスナタリー・デ・フリイスにより91年に結成。自国のオランダはもとより、フランス、ドイツ、スペイン、中国、日本など世界的に活躍中の、いま最も注目を集めている建築家だ。これまでの主なプロジェクトは、アムステルダムの高齢者向け住宅「WoZoCos」、2000年のハノーバー万博オランダ館、アイントホーベンでのビジネス・パーク「Flight Forum」など、建物だけでなく環境をひっくるめた大掛かりな構想のプロジェクトが目立つ。

過去にサーペンタイン・パビリオンに参加した建築家は、以下の通り:オスカー・ニーマイヤー(2003)、伊東豊雄(2002)、ダニエル・リベスキンド(2001)、ザッハ・ハディド(2000)。

■ 2003年秋・冬号をもって休刊になっていたテート発行の雑誌『TATE 』が、『TATE TEC.』と名前を新たに今月再登場しました。テート・ギャラリーのメンバー向けに発行されているこの雑誌は、一昨年、メンバー向け雑誌から一般向け商業雑誌への転換を目指して、コンデナスト社に編集部が移されたばかり。キオスクに並ぶ雑誌を目標に頑張っていたようですが、結局野望は一年足らずで果て、今年はじめ編集部はギャラリー組織内に逆戻り。

「ETC」がタイトルに付いた新バージョンは、メンバーを対象に年3回の発行。内容は、テート・ギャラリー四館での展覧会と収蔵品についての解説とインタビューが中心。誌面構成は、イメージ使いが派手だった旧バージョンから離れ(こちらのアート・ディレクターは『DAZED』から来た人だったはず)、作品図版+テキストの堅実というかストイックな路線。(要は、『TATE 』になる前の『tate』の頃に戻った感じです。混乱された方のために補足させて頂くと、この雑誌の遍歴は、『tate』→『TATE 』→『TATE TEC.』。ほんの数年の間の事なんですけどね。)(トコ)

『TATE ETC』のサイト

5月5日

What the hell are they doing? 
 

水戸芸術館で開催中の「孤独な惑星 - lonely planet」展に出品中のチャップマン兄弟が、日本でかなりの注目を浴びている。あの「Hell」が来るかもしれないという前評判とディノスの来日が良かったのか、日本のメディアの関心を取り付けるのに成功。私も今回、行く先々で彼らの名前を耳にした。(一年振りに来日中です)

 


Jake & Dinos Chapman
Hell, 1999-2000, (detail)
The Saatchi Gallery
Photo: toko

悪趣味極まる彼らのファンは日本にも多いようだが、私が今回興味深く思ったのは、某雑誌社の方が言っていた「若い世代にはいまいち」というコメント。何故なのかと思い、往復5時間かけて水戸まで足を運んでみたところ、この「いまいち」感は私にもよく伝わってきた。

その一番の原因は、「Hell」の実物が来ていなかったこと。代わりに広々とした展示室には、「Hell」を撮った写真9枚が展示されていた。撮影者はチャップマンではなくノーバート・シェルナー(Norbert Schoerner)。撮影年は4年前の2000年。写真家が美術品を撮影したこういう写真は、普通は作品図版と呼ばれ、同時にその写真家の作品とも言えるが、ここでは「What the Hell」と題されたチャップマンのオリジナル作品として扱われている。

ちなみに「Hell」という作品は、横幅3メートル程のガラスケース9体を、かぎ十字(卍)型に配置した大スケールなインスタレーション作品だ。各ケースの中には戦場のジオラマが再現され、体長5cmのミニチュア人形5000体が殺戮シーンを展開している。ナチス軍兵士とアダムとイブを象徴する人間が繰り広げる鬼畜同然の死闘には、どんなに優れた写真をもってしても伝わり難い、狂気じみた迫力が感じられる。

 


Jake & Dinos Chapman
Hell, 1999-2000, (detail)
The Saatchi Gallery
Photo: toko

実物について美術館のスタッフに聞いてみると、輸送と検閲の問題のため用意できなかった、と答えてくれた。確かに、あれだけのサイズの完成品を空輸するのは、物理的にも経済的にも大変だ。かと言って、現地で組み立てられるような代物でもない。加えて、検閲の問題。前に検閲で引っかかったことのあるチャップマンの作品は、日本ではかなり希少とされ、現在、東京にたった一点しかないと言われている。

しかし、諸事情は理解できたとしても、図版の豪華版で済ませてしまったチャップマンの選択には首を傾げてしまう。ヘタな作家達と馬鹿にされてきたYBAのなかで、高い技術にプライドを置く彼らが、またどうしてこんな中途半端なことを?同じく、作品を持ち込めないと知っていて、チャップマンに拘った水戸芸術館にも疑問を感じてしまう。

もし「What the Hell」が英国で展示されていたら・・・と想像すると、恐ろしいものを感じる。でも、日本はイギリスからみれば海の果てにある、よく分からない国。彼らの作品を知っている人はほんの一握り。それに、たとえ日本国内で辛い批評が飛んだとしても、欧米での評価に飛び火する可能性は低い。

 


Jake & Dinos Chapman
Hell, 1999-2000, (detail)
The Saatchi Gallery
Photo: toko

腹の内は本人に聞いてみなければ分からないから、今日のところは、写真のタイトル「What the Hell」にヒントを求めて終わりにする。このフレーズには、疑問文に使われる時の「一体これは」という意味の他にもうひとつ、「まあどうでもいいや」という意味がある。「Hell」に掛けているのは勿論のことだが、今回の様々なことを踏まえて改めてタイトルの意味を噛み締めると、この二番目の意味が滑稽なくらいいい味を出しているように感じられてくる。(トコ)

注)掲載写真はすべてサーチ・ギャラリーで3月まで開催されていた「Jake & Dinos Chapman」展からのものになります。

参考文献&リンク
水戸芸術館
「Lonely Planet 孤独な惑星」展のカタログ
Dazed & Exciteインタビュー記事
Real Tokyoの記事(検閲について)

サーチ・ギャラリーでの「Jake & Dinos Chapman」展のレポート

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このページの掲載内容

ブリット・アート、灰に !(続報(5.26)

ブリット・アート、灰に !(5.26)

ターナー賞ノミネート者発表(5.23)
*カトゥルーグ・アタマン
*ジェレミー・デラー
*ラングランズ&ベル

*インカ・ショニバレ

ロンドン最新ギャラリー事情(5.18)
*ガゴーシアン
*プログラム他

展覧会ハイライト(5.18)
*デミアン・ハースト+デイヴィッド・ベイリー
*サム・テイラー=ウッド
*トレイシー・エミン

その他にも…(5.18)
*photo-london
*サーペンタイン・パビリオン
*TATE TEC

What the hell are they doing?(5.5)