9月29日

注目のギャラリー Fashion+Textile Museum

 

 

Baltic以来長いことご無沙汰していたギャラリーレポートですが、今回は五月にテムズ河の南に開館し話題となったファッション・アンド・テキスタイル・ ミュージアムに焦点を当ててみました。

レポーターはトップデザイナーを多数生み出してきた名門ロンドンファッション大学(London College of Fashion) に通うナガコちゃん。フォグレスではファッション分野のキーパーソンとして活躍してくれています。

 

 

お勧めのショー:ウェストエンド

 

 

スタートは画廊街コークストリートから。一軒目はブラーのジャケットデザインを手掛けたJulian Opie(ジュリアン・オピー)の個展が開催中のAlan Cristea Gallery(アラン・クリスティー・ギャラリー)。リミテッド・エディション・プリントを専門とするこちらでは、Lucky Strike BAR Hondaのアートプロジェクト「Tribe Art」や劇場サドラーズ・ウェルスを飾った水泳ものをベースとする限定版プリントが販売されています。

国内外で人気沸騰の作家だけあってお値段はみな結構なものですが、なかにはパソコン一台くらいの値段で買えるものもあります。それでも私のように苦しい!という方には、オピー自らがデザインしたカタログが5ポンドで売っていてこれがなかなかのオリジナル。リッソンでの個展のときはディスカウントショップの通販カタログを模したものでしたが、今回は新聞を真似たタブロイド版。オピーの作品が20ページに渡ってチープにディープに掲載されています。

その向かいのEntwistle(エントウィッスル)では、ここ数年ヨーロッパで注目されている旧東ドイツ出身の画家Rosa Loy(ローザ・ロイ)の個展が開催されています。ベルリンの壁崩壊後、初めて訪れたイタリアでルネサンス絵画に感銘を受けたというロイ。それがひとつの切っ掛けとなって、鮮やかな色彩の秘密である牛乳のたんぱく質(カゼイン)を絵の具に混入する技法に到達したということ。よく似た双子の女性が登場するストーリー性に満ちた作品は、タロットカードの絵のようにシュールで神秘的。

次はヘドン・ストリートに移って、戦後ドイツを代表する作家Joseph Beuys(ヨーゼフ・ボイス, 1921-1986)展を開催中のGagosian(ガゴーシアン)。今回のショーは、ケルン在住の医師でありボイスのコレクターとしても知られるライナー・スペック氏のコレクションからの紹介。展示作品はテートモダンにもそのバリエーションがある黒板を使ったドローイングから、彼のイコン的媒体であるフェルトを巻いた傘、フェルト帽まで重要どころが抑えられていてかなりの充実度。商業ギャラリーでこれだけの作品が見れるのは稀なように感じました。

同じくヘドン・ストリートにあるSadie Coles HQ(セイディ・コールスHQ)では、今サーペンタインギャラリーで個展が開催中のJohn Currin(ジョン・カリン)を紹介。絵画を始めてわずか10年たらずというアメリカ人画家カリンは、今ヨーロッパでもっとも注目されている画家の一人。得意とするジャンルは西洋美術史の中核たるヌード画で、ボッティチェリからクールベまで巨匠たちの作風をみごとに真似し、それらに現代的ポルノ的要素を加えた新旧折衷型の世界を展開しています。セイディ・コールスでの展示は八点のみと数は控えめですが、人物画に集中しているサーペンタインとは違ってこちらでは静物画が主軸。サーペンタインでは見ることのできない一面が見れます。

最後はヴィヴィアン・ウェストウッドなどの高級ブティックが並ぶコンデュイット・ストリートで、赤と白のダイナーの奥に隠れるようにあるSketch(スケッチ)。展示作家は一昨年のターナー賞候補に選ばれた映画監督Isaac Julien(アイザック・ジュリアン)で、黒人作家である彼がミッションに掲げる黒人の文化や歴史、アイデンティティーをテーマとする映像作品が紹介されている。作品はクエン
ティン・タランティーノ監督らが解説者として出演するブラック映画についてのドキュメンタリー「Baadasssss Cinema」の他三本。現在ビクトリア・ミロ・ギャラリーでも個展が開催中。(トコ)

"Julian Opie" Alan Cristea Gallery
"Rosa Loy" Entwistle
"Joseph Beuys" Gagosian
"John Currin" Sadie Coles HQ
"Isaac Julien" Sketch

 

9月26日

人気急上昇の牛に羊

 

 

狂牛病や口蹄病騒ぎで一時はスーパーで叩き売り同然で売られていた牛に羊ですが、これが最近、アートという意外なところで人気急上昇中。牛を漬物にしたデミアンにつづき、今度はこれらの家畜をキャンバス代わりに使う作家が登場しました。

「オーウェンもきっと楽しんでいると思うよ。(中略) 他の子達にかなり羨ましがられているじゃないかな」こう語るのは、サイケデリックカラーとなって登場した羊のオーエン君の飼い主ベン・ウォナコットさん。

生きた羊をそのままアート素材にしてしまったのは、ウェールズの港町ミルフォード・ヘイヴンに住む現在美術作家リンズィー・フィリップス女史。犬の散歩をしている時に、突然、羊に色が必要だと感じて今回のプロジェクトを思いついたよう。その後何ヶ月もかけて羊を提供してくれる農家と体に優しい有機顔料を探したという。

あるギャラリーオーナーによると、「生きものをギャラリーで展示するのは実に珍しい」とのことですが、確かにレアなものの他に例がないかと言うとそうでもありません。実は、グラフィティ・アートで知られるアングラ活動家バンクシーが、ロンドンのイーストエンドでこの7月に発表したばかりだったりします。(ブラーのアルバム「Think Tank」のジャケットデザインをした作家と言ったほうが分かりやすいでしょうか)

『体に優しい』というメッセージが利いたのか、リンズィー女史に対する周囲の反応はわりと穏やかなようで、バンクシーの時と比べると大違い。牛や豚が警察カラーや強制収容所カラーとなって登場した彼の「Turf War」展では、グリーン系の団体から抗議の声があがり、熱くなった抗議者のなかには、牛達が囲われたフェンスに自らをチェーンでくくりつけてしまった人もいたという話。展示は5日間を予定していたものの途中で家畜たちを送り返すことになり、一日繰り上げてお開きになりました。

バンクシー側のオーガナイザーによると、家畜たちには『体に優しい』顔料が使われ、展示前には英国動物愛護協会(RSPCA)の調査官によるヘルスチェックまでも済ませたそうです。しかし、バンクシーの評判(悪名?)の高さにジェイミー・オリバーらレセブ達が出揃った華やかなオープニングが加わって(彼自身は不在)、翌朝のテレビニュースに流れてしまうほどの注目を受けてしまいました。(期待通りなのかもしませんが…)

ナイキからの依頼もギャラリーでの展示も蹴って薄汚れた壁を追いかけているバンクシーは、噂によると「Turf War」の全国ツアーを考えているとのこと。リンズィー女史はと言うと、さらなる大作を求めてコッツウォルズ地方のサファリパークにアプローチをしているようです。芸術的または道徳的な善し悪しは別として、生身の動物がギャラリーで陳列される日もそう遠くはないのかもしれませんね。(トコ)

詳しくはBBCのサイトでどうぞ
羊のオーウェン君についてはこちら
バンクシーの「Turf War」展についてはこちら

 

9月19日

Frieze Art Fair

 

 

今週末から来週にかけて「100%Design」「London Fashion Week」「London Open House」とフェアが目白押しのロンドンですが、今日は少し先取りで、来月開かれる待望の現代アートフェアをご紹介します。

英国最大の国際アートフェアとなるこのイベントは、質の高さで定評のあるアート雑誌「frieze」が主催する「Frieze Art Fair」の記念すべき第一回目。ロンドン中心部のリージェンツ・パーク内に新たに建設された会場で、10月17日から四日間にわたり作品の展示販売からアーティストプロジェクト、パフォーマンス、音楽プログラム、講演会までさまざまな催しが繰り広げられます。

参加ギャラリーはヨーロッパ、アメリカ、アジア16カ国から集まる125団体。参加国のなかでも一番充実しているのがもちろんここイギリスで、ホワイト・キューブヴィクトリア・ミロ・ギャラリー、リッソン・ギャラリー、セイディ・コールズHQ、ホーンチ・オブ・ヴェニソンなどロンドンの華やかどころ約40団体が参加します。アメリカとドイツからもそれぞれ約25団体、フランスからも7団体が参加し、日本からも小山登美夫ギャラリー、ギャラリーSIDE2、Taka Ishii Gallery、ミヅマアートギャラリーの4団体が出展します。

国内外のトップギャラリーがこれだけ集まるのですから、展示作品への期待が膨らんでしまうのも当然のこと。その思いに応えるように、会場には現代作家約1200人の作品が展示され、トレイシー・エミン、デミアン・ハースト、セーラ・ルーカスらYBA軍勢から、村上隆、マウリツィオ・カテラン、アンディー・ウォーホール、ゲルハルト・リヒターらオークション常連組みの作品までがずらりと並ぶよう。

そして今回のハイライトの一つが、NYのギャラリストTanya Bonakdarが開く日替わりの個展で、こちらでは毎日ギャラリーアーティストが一人ずつ紹介されるそうです。その一人が来月テート・モダン一階大ホールでインスタレーションを発表するオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)で、とてもタイムリー。

パフォーマンスでは、街頭で彫刻のまねをする一風変わった芸当を展開しているErwin Wurmが、一分間パフォーマンスなるものを披露する予定。老舗クラブVictory Services Clubでの音楽プログラムでもパフォーマンスが催され、こちらにはロドニー・グラハム(Rodney Graham)が登場します。さらにオフサイト企画として、去年ターナー賞にノミネートされたリアム・ギリックが地下鉄Great Portland Street駅で作品を発表することになっています。(トコ)

詳しくはFrieze Art Fair のサイト

 

9月15日

展覧会レビュー

 

 

お待ちかね。デミアン・ハーストの登場です。今回も牛のホルマリン漬け、薬品キャビネット、蝶のペインティングとデミアン度100%の個展となっています。
Damien Hirst: Romance in the Age of Uncertainty

さて、ロンドン8年ぶりのデミアンですが、今回はホワイト・キューブ(WC)のみならず、そのすぐ前のホックストン・スクウェア(HS)でも新作が発表されています。HSに登場したのは、テディベアと募金箱を持った女の子の彫刻「Charity」で、あの「Hymn」をもさらに上回る6m85cmという高さ(写真左)。

「Charity」は1.5ミリオンポンドという途方もない金額で早くも売れてしまったとのこと。買い手は残念ながらサーチではなくて、韓国のコレクター。こちらのコレクターもかなりのデミアン狂いのようで、「Hymn」もお持ちになっているそうです。

サーチはと言うと、今回はほぼ禁句的存在。以前から噂されていた別れ話は本当だったようで、デミアンとサーチの仲は今では綺麗さっぱり。自分の回顧展が開かれているというのに、まだ見にも行ってないそうです。今回のプレスリリースにも、あの回顧展のことは一言も書かれていませんでした。どうも確執が生じてしまったようです。(トコ)

 

9月5日

ロンドン最新ギャラリー情報

 

 

今年2月のSpruth Magers LeeのBerkeley St.進出、4月のTimothy Taylorの移転オープン以来、やや停滞ぎみムードにあったウェストエンドですが、また国際級ギャラリーの進出が公表されました。

このほど進出が明らかになったのは、ニューヨークに支店を持つチューリッヒのギャラリー、ハウザー&ワース(Hauser & Wirth)。場所はピカデリー・サーカスから徒歩数分のところで、中庭でマーケットがよく開かれているセント・ジェームズ教会の隣。ギャラリーが入ることになるレンガ造り4階建ての建物は、エドゥイン・ラッチャンズ卿(Sir Edwin Lutyens)の設計により1922年に建てられたもので、現在イングリッシュ・ヘリテージの援助をえて建築当時の姿に復旧工事中。オープニングは10月16日を予定し、現在テート・モダン屋外に巨大風船スカルプチャーが展示されているポール・マッカーシーがインスタレーションを発表することになっています。

ハウザー&ワースの斜め向かいに構えるロイヤル・アカデミー(RA)でも新たな動きが。RAの裏手にはその昔Museum of Mankindだった風格のある建物がありますが、RAはこの建物を二年前に購入。まだ現在の使用者である大英博物館が建物の一部を使っているようですが、来月18日からこの新館「Burlington Gardens」の一部を使って、RA主催でアルマーニ展が始まります。こちらは2000年にNYのグッゲンハイム美術館で開かれた「Girogio Armani」展の巡回展ということ。展示作品のインスタレーションは、11月からロイヤルオペラハウスで始まる「アイーダ(Aida)」の舞台監督ロバート・ウィルソンが担当。象牙の塔的なイメージが定着しているRAでファッション系の企画とはかなり意外です。

そこから南に下ったサウスバンクでは、ヘイワード・ギャラリー(Hayward Gallery)が10月23日の新装オープンに向けて改築最終段階に入ったもよう。ダン・グレアム設計によるガラス張りのドームも完成間近という噂で、オープニングの特別企画展「Saved!」に向けて着々と準備が進んでいるとのこと。こちらの企画は、National Art Collection Fund (Art Fund)設立100年を祝って開かれるもので、Art Fundの収蔵品のなかから300点が展示される予定。展示作品はミケランジェロ、ボッティチェリらルネサンスの巨匠からルシアン・フロイド、アニッシュ・カプーアら現在の巨匠まで。

公営ギャラリーの新装オープンとくれば、気になるのが一昨年から長いこと休館中のカムデン・アーツ・センター(Camden Arts Centre)。フォグレスが入手した情報によるとオープンは年明けとのことですが、未だに資金が25万ポンドも不足しているらしく、来月22日にクリスティーズ(Christie's)で資金集めのためのチャリティー・オークションが開かれます。同ギャラリー救済のために今回作品を寄贈した作家は、キース・タイソン、マーティン・クリード、アンソニー・ゴームリー、クリス・オフィリなど錚々たるメンバーで、その多くがかつてここで展覧会が開かれた作家達。このオークション以外にも、ジェイ・ジョップリン(ホワイト・キューブ)、ヴィクトリア・ミロ、セイディー・コールスなどロンドンのトップディーラー達が救済のために陰で動いているようです。(トコ)

Hawser & Wirth
RA (Burlington Gardens)
Hayward Gallery
Camden Arts Centre

 

9月2日

展覧会情報 その2

 

 

一昨日につづき、展覧会情報を追加でアップしました。

気になる写真展」:The Photographers's Galleryで今月25日から始まる都築響一さんの個展、Hamiltonsでのヘルムート・ニュートン展など9件。

テムズの南側」:Pump House Galleryで開催中のドローイングを集めた企画展「Some Panoramas」、ブラジルの作家5組を紹介するGasworksの「Gambriarra」など6件。

 

9月1日

フォグレス・フォーカス第一弾

 

 

フォグレス・フォーカスの企画第一弾です。 今回は、最近話題を呼んでいるメラニー・モンショウ(Melanie Manchot)をインタビューしてみました。人間の体とそれが鑑賞者の心に呼び起こす感情、、体と環境の相互関係を探求している彼女。そんな彼女に作品と制作の動機について聞いてみました。

For the first feature in our new series, Fogless Focus, we interviewed Melanie Manchot. Her work is characterised by exploration of the human form and the reaction that it evokes on the viewer and its interaction with the environment. In this interview, we asked Melanie about her work and motivations.

フォグレス初の日英対訳の記事です。
日本語版はこちらから
For English version of the interview, click here.

 

 

展覧会情報 その1

 

 

長いホリデーシーズンを終え、やっとビジネスに戻り始めた商業ギャラリー。芸術の秋に相応しく、今年もこのシーズンに目玉が集中しています。

メジャー展示スペース」:ナショナル・ギャラリーの「Bill Viola」展、サーチ・ギャラリーのチャプマン兄弟展など目ぼしいところを10件ほどリストアップ。

イーストエンドの展覧会」:いよいよ待望のデミアン・ハーストの登場です。その他にも、アイザック・ジュリアン、ブライアン・グリフィスなど話題の作家が次々登場。

ウェストエンドで展覧会」:ルシアン・フロイド、ヨーセフ・ボイス、アリギエロ・ボエッティら超有名作家のショーが開かれる一方で、今年のベニス・ビエンナーレでデビューを果たした土屋信子さんがアンソニー・レイノルズ・ギャラリーに登場。

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このページの掲載内容

注目のギャラリーFashion + Textile Museum (9.29)

お勧めのショー(9.29)
ウェストエンド
人気急上昇の牛に羊 (9.26)
*リンズィー・フィリップス
*バンクシー

Frieze Art Fair(9.19)

展覧会レビュー(9.15)
デミアン・ハースト

ロンドン最新ギャラリー情報(9.5) *Hauser & Wirth
*Royal Academy
*Hayward Gallery

展覧会情報(9.2)
写真展
テムズの南側

フォグレス・フォーカス第一弾(9.1)
メラニー・モンショウ

展覧会情報(9.1)
メジャー
イーストエンド
ウェストエンド