8月27日

デミアン・ハーストに盗作疑惑?

 

 

サーチが1ミリオンポンドで購入した「Hymn」の盗作問題から3年が経ったところで、数日前、デミアン・ハーストを巡りまた新たな盗作問題が明るみになった。

The Times紙によると、被害を訴えているのはコンピュータ・グラフィックデザイナー、ロバート・ディクソン(Robert Dixon、57歳)。ディクソンは'87年にコンピュータを使ったドローイングの教本「Mathographics」を子供向けに出版し、これが現在までに30,000部数の売り上げを達成している。

20年前に描いた作品と「全く同一」とディクソンが訴える問題の作品は、今年6月末にThe Guardian紙に掲載されたドローイングで、Children's Art Dayのために特別添付された塗り絵冊子に含まれていたもの。この冊子には、ハーストの他にも、クリス・オフィリ、ジュリアン・オピー、キース・タイソンら多数の人気作家が掲載されていた。

問題のドローイングは、ハーストが'93年より手掛けている「スポット・ペインティング」と呼ばれる作品のバリエーションで、一つの円を描くように水玉モチーフ数百個をアレンジしたもの。通常これらの作品は、白地のキャンバスにカラフルな水玉という組合せで発表されているが、今回は塗り絵用とあって、中を塗れるように水玉の輪郭線だけが描かれた形で発表された。

The Times紙に掲載された図版を見ると、小さな水玉モチーフを円形に集めた構図の点で、両作品は非常に似通って見える。しかし、細部をよく見比べると、水玉の数、サイズ、配置、および幾つかの水玉の形状に若干の違いが見られ、完全なる同一品と呼ぶのは難しい。

この分野の法律の専門家によると、英国における著作権侵害の成立には、必ずしも作品が「全く同一」である必要はないという。前作の存在なしには後作が生まれえないという場合には、類似点をもってして著作権侵害が成立することもあるようで、「ハーストがディクソンのエッセンスを盗んで剽窃したか」どうかが重要になってくると語っている。(The Times)

ハーストの反応はと言うと、現在国外滞在中のためコメントは控えているが、スポークスマンを通じディクソンという名前に聞き覚えはないと答えている。今回ドローイングをコミッションしたThe Guardian側は、ディクソンの訴えに対し、もし著作権侵害の問題があるとするならば、それはあくまでもディクソンとハーストの問題との見解を示し、コメントを避けている。

ここで興味深いのが、ハーストにとってこれがはじめての盗作騒ぎではないという点だ。実際に、3年前に起きた「Hymn」をめぐる盗作問題では、ハースト自身、Humbrol社が製造販売する理科教材「Young Scientist Anatomy Set」を複製したことを認め、児童向けチャリティー団体二団体に纏まった金額を寄付する形で和解にこぎつけている。また、同社のデザイナーに対しても、幾らかの詫び金が支払われたようだ。

もっと新しいところでは、今年の春に、ハーストのブレイク作品である鮫のホルマリン漬けの盗作疑惑が話題になった。この問題を明るみにした伝統芸術の崇拝者軍団、スタッキスト(Stuckist)によると、ハーストの鮫がサーチ・ギャラリーで発表される2年前に、アーティスト兼電気技術者のエディ・ソーンダース(Eddie Saunders)がイーストエンドの店のウィンドーを使って、ホルマリン保存した鮫を展示していたということだ。

無意識のうちに過去および既存のアイデアに侵され、オリジナルな表現をするのが難しいとされる今日。さらに、これを証明するようにように、他人の作品にベースしたアプロプリエーション作品が大手を振って美術館を行き来する今日。そんな現状を考えると、よっぽど確固たる証拠がない限り著作権侵害の立証は難しいのだろうが、それにしてもすっきりしないのが、もしハーストがミリオンポンド級の超人気作家でなかったとしても、同じ目に遭ったのだろうかという点だ。(トコ)

Stuckist Internationalのサイト

 

8月20日

アーティストと評論家の対決

 

 

「My Bed」で'99年のターナー賞にノミネートされたトレイシー・エミンとインディペンデント紙(The Independent)の美術評論家フィリップ・ヘンシャー(Philip Hensher)の間で争いが起きている。

事の始まりは、オムツ、補聴器、ピーターラビットの陶器製置物など、謎の品々が評論家の元に郵便で送られてきたこと。包みには「Miss Phyllis Henshaw」と、よく似ているが他人(女性)と受け取れる宛名が書かれていたという。

はじめは何かの間違いと思いヘンシャーも無視していたようだが、そのうちにこの「Henshaw」なる人物宛てに電話も掛かってくるようになった。誰かがこの名を使って店に注文や問合せをしていたようで、物だけでなくもう少しのところで馬まで届くはめになったかもしれないという。

悪質な嫌がらせに堪りかねて送り主について調べ始めたものの、手掛かりが乏しく調査は行き詰まりに。ヘンシャーの目がエミンの発言に留まったのはそんな折だったという。

「インディペンデント紙で誰かが私のことを「知恵遅れ」って書いて、凄く傷ついたわ。どうやったかは言わないけど、お返しはしたわ。」(The Observer)

エミンの「お返しはしたわ」に確信を持ったヘンシャーは、「知恵遅れ」という言葉を使った記憶がないにもかかわらず、「お返し」のやり口を吐かせたいという思いから、先週、スペクテイター誌(The Spectator)で張本人はトレイシー・エミンではないかと疑いを書きたてた。

エミンはこれに対し、「超ひどい。(中略) 彼のことなんて昨日まで聞いたこともなかったし、会ったこともなければ、私のことを書いた記事だって読んだことがないのよ」と猛反撃。(The Daily Telegraph)

ヘンシャーのエミンに対する評価は辛い。「馬鹿でも優秀なコンセプチュアル・アーティストになれるのだろうか?」と問いかけながら、評論の矛先を作品から彼女個人の知性に向けている。

しかし、エミンを馬鹿扱いする評論家は彼だけに限らない。彼女によると、自分を「知恵遅れ」と呼び今回彼女がお返しをした評論家は、ヘンシャーと同じインディペンデント紙の別の評論家だ。エミンのお返しは、彼女曰く、同新聞の第一面を彼女に好意的なインタビュー記事で奪う形で達成されたという。

法的手段に訴える意思を表明したエミンは、「こんな糞っタレのために時間をムダにしたくないけど、超ムカつくから訴えてやる」と語っている。(The Guardian)

アーティストと評論家の激しい対立関係が浮き彫りになった今回の出来事。しかし、印象派の画家ホイッスラーと評論家ジョン・ラスキンのかの有名な訴訟事件(1878年)が良い例であるように、イギリスでは作家と評論家の対立構図は今に始まったわけでも珍しいことでもない。

ヴィヴィアン・ウェストウッドを着てグラビア撮影、ボーイフレンドと別れて傷心インタビュー、人気クイズ番組のパネラー出演とメディアとの接触が人一倍多いエミン。ディーラーもコレクターもアーティストも夏休みだけど、文化面を埋めなくてはいけない評論家兼ライター。その関係は泥沼状態のようだが、知名度を高めるという点では足並みが揃っているようだ。(トコ)

 

8月18日

ハーストのサーフボード£59,000で売れる

 

 

ホワイト・キューブでの個展を3週間後に控え、先週のタイムアウトのインタビューに続きここのところメディアへの登場が目立つデミアン・ハースト。今日のニュースは彼がペイントしたサーフボードが、数日前コーンウォールで開かれた競売で59,000ポンドで売れたという話題。

今回競売に掛けられた赤と緑のサーフ・ボード二点は、彼の代表作品の一つで俗に「スピン・ペインティング」と呼ばれている絵画のバリエーション。赤の方は38,000ポンドでアメリカのディーラーが入手し、21,000ポンドの値がついた緑の方は国内のサーファーがゲットしたようです。

今回のオークションにはハーストの他にもグラフィティー・アーティストBanksy、ポップバンドGorillazなどが参加し、競売にかけられたサーフ・ボード合計11本の売上げ総額は77,000ポンドに上るとのこと。売上げはすべて、海岸、河川、湖への汚水排出に反対している団体「Surfers Against Sewage」に寄付されるそうです。(トコ)

詳しくはBBCのサイトでどうぞ

 

8月11日

展覧会:日本人編 追加

 

 

日本人作家が大活躍の8月のロンドンですが、また一つ気になるショーを追加でご紹介。

15日から始まるこちらのショーは、イーストエンドのThe Nunneryという元修道院を改装した展示スペースで開催されるグループ展「Mutated Zen: the Art of Surviving」。

出品作家は、塩を使ったインスタレーションで知られる山本基さんを含む5人(団体含む)で、竹久侑さんが企画を担当。ギャラリーとそれに隣接するBow教会を社会、宗教、芸術が入り乱れる空間とみなし、そこに都市生活の側面を浮き彫りにするような作品群が展示されるとのこと。

「Mutated Zen: the Art of Surviving」、030815 - 030913 山本基, 横澤典, Klaus Weber, Dale Berning, the Meditations
The Nunnery

 

8月11日

オープニングレポート 第二弾

 

 

今回は先週ホックストンで始まったショー二つをご紹介。

まずは、先週5日にInside the White Cubeで始まった都築響一さんの「Imekura」展。このInside the White Cubeというのは皆さんも良くご存知、あのホワイト・キューブが去年秋に建物2階にオープンした小さなプロジェクトスペースで、時を同じく閉廊されたデュークストリートの一号店の生まれ変わりとして位置づけされています。よってここで催される展示は一号店と同じく実験的な要素の強いプロジェクトが中心となっています。

この日、7時半頃ホックストンスクウェアに着いてみると、ギャラリーの前はすでに車道にまで人が溢れ出るほどの物凄い人だかり。展示室のサイズに見合わないこの光景に唖然としながらも、まずは二階展示室へと直行。なかではイメクラの写真が壁二面を使ってスライド上映されていました。ビーンバッグの上で寝そべっている若者達に交じって私も腰を下ろし、日本の風俗産業が生んだかなり変テコな創造物、イメクラとやらにご対面。

自らをアーティストではなくジャーナリストと呼び、イメクラ空間を作る人々をアーティストと語っている都築さん。そんな都築さんのアプローチは至ってドキュメンタリー的で、記録するに値する美術品を撮るように即席のイメクラ空間が一つ一つ丁寧に収められていました。初めて見るイメクラは驚くほど安っぽくて意外でしたが、でもそれ以上にびっくりだったのがバラエティの豊富さ。事務所、電車の中、病院、教室、更衣室、体育倉庫、少女の部屋と様々な環境が色々な姿となって登場し、「瀬久原物産」なんて芸の細かい看板までもがあったりして、ある意味でクリエイティブとも言えるくらいでした。

それにしても不思議なことに、なぜかこの部屋には冷房が入っていなかったのですが、これもコンセプトの一部だったのでしょうかね。。。情欲に涼しさなど似合わない、なんて。。。最高気温を記録した日だっただけに、あのサウナのような熱気に包まれながら、つい余計なことまで考えてしまいました(余談ですがこの最高気温の記録は昨日塗り替えられてしまいました)。

さて二軒目は、8日からBookartbookshopで始まった長靖さんのオープニング。もう皆さんご存知かもしれませんが、一昨年オープンしたこちらはアーティストブックを扱うロンドンでも数少ないお店。店内のスペースを使ってアーティストブックを紹介する展示が月一回ペースで開かれ、本を表現媒体とするアーティストには欠かせない場所だったりします。

店内には中央の大きなテーブルとウィンドーを使って、長さんが「Laughter」という出版名義で制作してきたこれまでの作品と新作「MYCooK」が発表されていました。デリケートな作品はその多くがが、チラシやカタログなどの印刷物をコラージュしてコピー機にかけて印刷したものと言うことですが、見た目にとても抽象的でデザインもお洒落で「これほんとにチラシなの?」と聞きたくなってしまう感じ。でもよく見ると、薄っすらと印刷文字が透けて見えていたり、四角いフォルムが実は冷蔵庫の写真だったりと、隠れ潜んでいた印刷物の正体が見えてきます。

なかでも私が一番好きだったのは、3センチx3センチ位の小さな本が縦に四つビニールの小袋に入った作品で、その昔駄菓子屋さんで売っていたお菓子や小物を思わせるようなレトロな雰囲気がとてもいい感じ。残念ながらすべて売り切れということで展示品のみしかありませんでしたが、私の他にもこれが欲しくてたまらない人がいて、「この展示品売ってくれない?」と困り顔の長さんに食い下がっておられました。

ロンドンで発表することになった切っ掛けは、ショーのキュレーターであるマーク・ポーソン(Mark Pawson)氏が来日した時に長さんの作品を気に入ってくれて買ってくれたこと。その作品がポーソンさんが執筆するフリーペーパーに掲載され、偶然インターネットで記事のことを知った長さんが彼に連絡を取り、今回の話へと繋がったようです。前々から日本人作家を紹介してみたかったと言っていたBookartbookshopの経営者のタニヤさんも大満足のようで満面の笑みを浮かべていました。(トコ)

都築響一「Imekura」、030806 - 030830
Inside the White Cube

長靖「MYCooK」、0300808 - 0308831
Bookartbookshop
長靖さんのサイト

 

8月8日

イベント&展覧会レビュー

 

 

London Mob 第一弾」:米国で始まった「Flash Mob」がロンドンに登場!いまや東京、ローマ、ベルリン、アムステルダムと世界現象になっている群集パフォーマンスのロンドン版を、クマサンが体験レポート。

Christian Marclay」:ホワイト・キューブで現在開催中の話題の展覧会をレポート。この夏お勧めの展覧会の一つです。

 

8月6日

高層ビルを巡りテートがバトル展開

 

 

今年最高の気温になるというニュースに、今日は午前中から冷房の利いたテート・モダンへと直行。めったに使ったことのないメンバーズルームとやらで涼みながら、今テートで繰り広げられている熱いバトルのことを考えていたりします。

戦いの焦点となっているのは、テート・モダン真横に建設予定の高層住宅ビルを巡る建設案で、一旦解決したかにみえたのですが、またこの程、市長のケン・リヴィングストン氏を巻き込んでバトルが激化しているようです。

「これではまるでエッフェル塔やローマのコロセウムの横に高層ビルを建てるようなもの」と、この計画に憤慨の色を隠せないのは、テート・ギャラリー四館の総ディレクター、ニコラス・セロータ氏。この建設計画の突拍子のなさを、「大英博物館の前庭にタワーブロックを建てるようなものだ」とも語っています。

ビルの建設予定地は、Hopton Streetに面したテート・モダン正面玄関の真向かい(ミレニアムブリッジ側ではなくて、建物横の坂道を下って入館する入り口のことです)。現在この場所には、その昔は倉庫だったという二階建ての住宅があり、この計画に対しては住民からも抗議の声が上がっています。

建設されるビルは、Xミリオンポンド級のペントハウスが最上階を占める20階建ての高級分譲マンションを予定。ロンドンで最近住宅用として建築されている多くの建物の例に習い、全世帯のうち数世帯が「手ごろな価格」で購入できる低価格帯となっています。(Xミリオンポンドン級のペントハウスと一緒に入った低価格帯住宅って幾らくらいなんでしょうかね。)

テートにとって面白くないのは、メイン・エントランスからわずか50メートルの場所に目障りな高層ビルを建てられては、135ミリオンポンドもの公的資金を投入して開館したギャラリーの価値が損なわれてしまうという点。さらにこれが、一般大衆に還元される公共事業ではなく、一民間企業の利益のために行われてしまうことも気に入らないよう。

実は、この建設案はサザック区建設委員会で去年秋に検討され、住民の強い反対とテート・モダンとの衝突を理由に、7対1票で却下されました(当時の案は36階建てだったようです)。ところが、宅地開発業者がこれに意義を申し立て公的調査が行われた結果、テートには不運なことに、報告書は開発業者に有利なものへと逆転してしまいました。

これを受け先月8日には、セロータ氏を先頭に住民が反対デモを決行。これに対し高層ビル好きとして知られる市長のリヴィングストン氏が、美学は一つにあらずと語りながら「タワーがもう一つあればバランスが取れて、もう少し密集して見えると思う」と建設案を支持。低価格帯分譲住宅を含むこの建設案は、市内における住宅困難の解決策として「affordable home(お手ごろな家)」プロジェクトを推進する市長にとって、そちらの意味でも魅力的なようです。

テート・モダンの煙突に仲間ができるかどうかは、来年2月に高等法院で判決が下されるということです。吉とでるか凶とでるかはそれまでのお預けですが、どちらに転んだとしても、ミレニアム・ブリッジと聖ポール寺院が真正面に見える、4階バルコニーからの景観は損なわれませんのでご安心を。(トコ)

The Guardianの記事はこちら
London SE1の記事はこちら
 

8月2日

展覧会レビュー

新ギャラリーDavid Risleyのオープニング企画「Botany: New Paintings by Masakatsu Kondo」展のレビューを載せました。

 

8月2日

更新情報

展覧会レビューのページを少し模様替えしました。実は大声で言うほどは変わってはないのですが、貯まってしまったレビューを何とか3ページ分に収めてみました。

2003年9月へ
 
2003年7月へ

 

 


Top

Home

   






fogless.net
e-mail: editor@fogless.net
This site has been designed and managed by Toyoko Ito (Toko) copy; 2000-2010 All Rights Reserved
このサイトは伊東豊子(トコ)によってデザイン及び管理・運営されています。本
サイト内で用いられているコンテンツ(文章・画像など)を無断で複製・転載・転用することはできません。

 

このページの掲載内容

デミアン・ハーストに盗作疑惑?(8.27)

アーティストと評論家の対決(8.20)
加賀田恭子
ハーストのサーフボード 59,000ポンドで売れる (8.18)

展覧会:日本人編 追加(8.11)

オープニングレポート 第二弾(8.11)
都築響一
長靖

イベント&展覧会レビュー(8.8) *London Mob
*Christian Marclay

高層ビルを巡りテートがバトル展開(8.6)

展覧会レビュー(8.2)
近藤正勝

更新情報(8.2)