5月30日

展覧会情報

展覧会カレンダーに最新情報を載せました。

メジャー展示スペース」:Tate Britainのブリジット・ライリー展、Serpentine Galleryのシンディー・シャーマン展など13件。

East Endの展覧会」:Chisenhale Galleryのニック・クロウ展、White Cubeのニール・タイト展など9件。

West Endで展覧会」:Lisson Galleryで開催中のアニッシュ・カプーア展、先週移転オープンしたばかりのTimothy Taylors Galleryのオープニング展など8件。

テムズの南側」:South London Galleryの独立第一弾イベント「Independence」など6件。

気になる写真展」:The Photographers's Galleryで開催中のウォーカー・エヴァンス展など9件。

 

5月22日

展覧会レビュー

久々にレヴューを2本載せました。

Ron Mueck」:現在ナショナル・ギャラリーで開催中のロン・ミュエクの個展。作品はたった4点と少ないですが、衝撃度は最近観たもののなかでダントツでした。

Witness」:バービカンセンターで開かれた写真と映像のグループ展。Kutlug AtamanやThe Atlas Groupなど、去年のドクメンタ11で注目を浴びた作家が何人か含まれています。

 

5月21日

Isonerv展

オールドストリート近くで先月から今月にかけて開かれた Isonerv展。基本的には何人かのアーティストの作品を集めた、所謂、グループショーなのですが、ショー全体がMichael Croft(マイケル・クロフト)のコンセプチュアル会社「Revision Incorporated Space Management Limited」の看板としてプレゼントされていて、捻りが利いていました。

今回展示された作家はJuan Cruz, Lothar Gotz, Matt Calderwood, Jonathan Hatt, Douglas Park, Dan Coombs, Michael Croft, Roddy Thomson, Colin Lowe, Paul Daly, Matthew Ticdkle, Louis Nixon等で、何人かはフォグレスでもお馴染みの顔ぶれ。でも今回のショーの一番の見所は、個別の作品ではなくショー全体のコンセプトでした。

不動産管理業務を思わせる社名「Revision Incorporated Space Management Limited」は、この類の事業名をパロッた言葉で("incorporated", "limited")、イギリスはもちろん日本でも盛んな企業や地方自治体等による不動産再開発プロジェクトに対してのコメントとして読むことができます。

この企画では一部廃墟と化した学校の校舎が作家達自らの手で再利用され、大企業等による元公共施設などをコンシューマー・ビジネスに再利用する行為への彼らなりの「見直しと」(revision)がインスタレーションとして表現されていました。

作家達のコンセプトへの拘りは4頁綴りのプレスリリースにまで至り、ここでは不動産会社の評価資料のスタイルをもじったレポート形式が採られていました。参加アーティスト達の作品紹介も辛うじて含まれているのですが、ここまで徹しているとこれも作品の一部として考えるのが妥当に感じます。

6月にはIsonerv Plusという新スペースがオープンされる予定とのこと。このテーマの展開も実際展示される他のアーティスト達の作品と同様に、かなり期待できそうです。(クマ)

"Isonerv"
168 Pitfield Street, London, N1
020 7012 1265

 

5月13日

猿はシェークスピアになれるのか?

イギリスでよく使われる諺の一つに、「無限に集めた猿に、無限の数だけタイプライターを与えれば、いずれはシェークスピアの作品が生まれる」といった類の言葉がありますが、この言葉の真偽を試すようなアートプロジェクトがこのほどイギリスで催されました。

その結果はもちろん失敗。コンピューターを前に六匹の猿は、石は投げるはオシッコは引っ掛けるはの大騒ぎ。最終的に仕上がった5ページ分のテキストは、「S」や「A」「L」などの文字の羅列で、シェークスピアと呼ぶにはあまりにも解読不明。

一体何を考えているの?と聞きたくなるこの実験は、科学の実験と言うよりはパフォーマンス・アートを意図して企画されたというもの。これのどこがアートなの?なんて質問が矢のように飛んできそうですが、英国のアーツ・カウンシルから資金援助が出ている歴としたアート・プロジェクトだったりするのです。

実行者はプリマス大学のメディアプログラムの研究者と学生で、英国南西部にある動物園Paignton Zooが舞台となりました。パフォーマンスの主役となったのはエルモ、ガム、へザーらマカーク猿6匹で、彼らの檻にパソコンを設置して、シェークスピアが生まれる過程を見守ったということ。

冒頭の諺、真剣にとるにはあまりにも冗談っぽい響きですが、実は、チャールズ・ダーウィンの友人で彼の進化論の熱烈な支持者であった生物学者トマス・ハックスレーに由来するということ。そう、これは方向性なくランダムに起きる進化の原理を、猿とタイプライターをつかって比喩的に語った言葉だったりするのです。

プロジェクトに加わった研究者の一人マイク・フィリップスさんは「猿はランダム・ジェネレータではありませんでした。彼らはそれよりもっと複雑でした。 (中略) 画面に興味を示しましたし、タイプしたら何かが起こったことも解っていました。そこにはあるレベルの意思というものがありました。」とコメント。

進化論のメカニズムを比喩的に語った言葉を、科学ならぬ芸術的アプローチで実践に移した今回のプロジェクト。実はこれはVivaria Projectと呼ばれる大プロジェクトの一部で、その大プロジェクトではヨーロッパの動物園にコンピューターが設置され、動物と人工生命との関係が探求されるらしい。(トコ)

プロジェクトの詳細レポートはこちらから

 

5月8日

ヌードは特効薬?

ヌード画やヌード像はこれまで飽きるほど見てきましたが、先日初めてテート・モダンで生身の裸体を見ました。作家La Ribot(ラ・リボット)が一糸纏わぬ姿で私の真横まで来て、その体をロープで縛り、彫刻と言わんばかりにポーズを取ったのですが、さすがにこれには強い衝撃を受けました。タブーの壁を破って提示された裸体を前に、コンセプトやらフォルムやら七面倒臭い考えが消え、頭の中が真っ白になってしまいました。

今回はそんな裸体が百も二百も集まった訳ですから、見物人は一体どれほどのインパクトを受けたのでしょうか。

裸のインスタレーションが披露されたのは、4月15日の夕刻のこと。旧ロンドン市庁舎カウンティー・ホールで開かれたサーチ・ギャラリーのオープニングでの席で、指揮を執ったのは集団ヌード写真で知られるアメリカ人作家 Spencer Tunick(スペンサー・チュニック)。参加者は某雑誌経由で集められた20代から60代までの一般ピープルで、パフォーマンスはヒュー・グラントやナイジェラ・ローソンら豪華招待客の前で披露されました。

日没が始まるとヌード・ボランティア160人は一階テラスに集められ、チュニックの指示に従い一斉に服を脱ぎ、寝るや座るなどのポーズを取ったということ。ポーズの一つに、正座をしてビッグベン(国会議事堂)にお辞儀をしているものがありますが、これがまるでアッラーの神にひれ伏すイスラム教徒をパロッタような感じでとても不気味。撮影のあと参加者たちは、「そのままの姿で」という条件付きでセレブ達が待つレセプションへの参加が許されたようです。

チュニックの集団ヌード撮影はその約十日後、ロンドンの高級デパート、セルフリッジ(Selfridges)でも繰り返されました。集合時間の朝8時には定員をはるかに上回る老若男女が押しかけ、中に通された幸運な最初の500名は、合図とともに一斉に裸になり、化粧品売り場やエスカレーターと場所を変えて撮影が行われたということです。「解放感たっぷりで面白かった」と語る参加者の一人は、服を脱いだ途端にこれまで存在していた個人間の違いが消えてしまったように感じたとコメント。

集団ヌード写真と言うと、ここイギリスを含めアメリカやオーストラリアで起きたイラク戦争への反戦デモが記憶に新しいところ。何百人もの女性が裸になって書いた「No War」「Peace」などの人文字が世界中でマスコミの注目を集めました。

衝撃を求めて止まないマスコミの関心は、もちろん政治デモがアートになったくらいじゃ変わりません。片や政治的発言を伝えるためのヌード行為、こなたギャラリーの宣伝を兼ねたアート・イベントという違いはあっても、裸は裸。今回のイベントもDaily MailやDaily Telegraphなどの新聞が大々的に報じ、The Guardianに至っては対抗イベント「Keep Your Tunic On」を企画してしまったほど。ここでは裸に対抗し、参加者約200名が服を着たまま集合写真の被写体になりました。

長い歴史に渡るアートとヌードの関係、さらにはここ数十年のパフォーミング・アートの経緯を振り返ると、今さら裸にとやかく言う気にはなれませんが、奥の手が矢のように放たれる最近の傾向には考えさせられるものがあります。肉体美、人間性、リアリティ、政治的メッセージなど表現したい価値観は色々とあるのでしょうが、表される衝撃的イメージの裏に病にもがくアートさらには社会の姿を想像してしまいます。便利な特効薬なのかもしれませんが、何事も使いすぎるのは禁物でしょうね。(トコ)

The Guardianの記事(写真もあります)
Spencer Tunickのサイト(過去の作品が見れます)
The Saatchi Gallery
Tate Modern

 

5月6日

写真の夏

観光客が押し寄せる夏は、美術館がこぞって大型企画を持ってくる季節。例年通り今年も大物が続々と登場しますが、いつもと少し違うのはどっちを向いても写真だらけという現象。テートやサーペンタインなどの大型ギャラリーからイーストエンドの商業スペースまで、心躍る写真展がずらりと勢ぞろいします。

まずは、テート・モダン初の写真展となる「Cruel and Tender」。6月5日から始まるこの大型企画では、様々ある写真表現のなかでも20世紀のリアリズムに着目。ダイアン・アーバスウォーカー・エヴァンスアンドレアス・グルツキーボリス・ミハイロフなど、私達の物事や社会の見方に影響をもたらしたとされる写真家20数名が一挙に紹介されます。ここでは写真の重要分野の一つポートレートも検証対象に取上げられ、トマス・ルフトマス・ストゥルースレネケ・ダイクストラら近年注目の写真家達がその対象になります。十四もの展示室を駆使するテート・モダンの特別展覧会と言えば、学者でもあるキュレーター達による研究発表の場のようなもの。アメリカとドイツを中心に集められた写真家達が、どのように分類され位置づけされるのかが楽しみなところです。

そこから少し西に行ったテート・ブリテンでは、写真家初のターナー賞受賞作家であるヴォルフガング・ティルマンスに集中。現在ロンドン在住の彼はドイツはラムシェイドの出身ですが、イギリスとの付き合いはおよそ15年と長く、プロデヴューは英国の雑誌、大学も英国と何かとこの国と縁のある人。本展はそんなイギリス用に特別にカスタマイズされた企画で、I-DやThe Face誌などに掲載された初期の作品から現在の抽象写真に至るまで主要作品が広く紹介されるという話。また最近では、ペットショップボーイズとのコラボレーションなどで映像へと手を広げている彼ですが、本展では新作発表などそちらの分野もたっぷりと披露されるそうです。

その他にも有名どころはまだまだ登場します。 まず、ロンドンで写真と言えば”ここ”的存在のフォトグラファーズ・ギャラリーが、アメリカの写真史に燦然と輝くウォーカー・エヴァンス(1903 - '75)展を開催。エヴァンスと言えば世界大恐慌の頃のドキュメンタリー写真が有名ですが、本展では彼が晩年に凝ったポラロイド写真を紹介するという意外なアングルがとられています。続いてロンドン西のサーペンタイン・ギャラリーでは、ナン・ゴールディンと並びアメリカを代表する女性写真家シンディ・シャーマン展を企画中。70年代から現在に至るまでの作品40点が展示される予定です。それから東のホワイトチャペル・アートギャラリーでも、去年、シティバンクの写真賞候補に選ばれたフィリップ・ロルカ・ディ=コルシアの個展開催が決定しています。

さらに、これでも足りない!という方には、フランス大使館主導の企画「Made in Paris」がお勧めかもしれません。こちらは去年11月にパリで開かれた写真と映像の祭典「Le Mois de la Photo 2002」のロンドン版で、パリ在住の写真家と映像作家の作品を紹介するもの。参加団体は21団体にも上り、V&AinIVA, ICAら公営団体からFrith Street Gallery, Shine Galleryら商業ギャラリー、Centre of Attentionらオルタナティブスペース系までと選り取りみどりの顔ぶれ。 中でもお勧めの一つが、現在V&Aで開催中のギィ・ブルダン展で、こちらではヘルムート・ニュートンと並ぶファッション写真の第一人者ブルダン(1928 -'91)の作品が公私に渡って多数紹介されています。あれだけの大物にして初の回顧展という点もそそられます。(トコ)

Tate Modern
Tate Britain
Photographers' Gallery
Serpentine Gallery
Whitechapel Art Gallery
V&A
Made in Parisのサイトはこちらから

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このページの掲載内容

展覧会情報 (5.30)
メジャー
イーストエンド
ウェストエンド
テムズの南側
写真展

展覧会レビュー(5.22)
Ron Mueck
Witness
Isonerv展 (5.21)

猿はシェークスピアになれるのか?(5.13)

ヌードは特効薬? (5.8)
SpencerTunick
@ Saatchi Gallery
写真の夏(5.6)