8月31日 ギャラリーでH?
そんな馬鹿な!って話ですが、それがどうもまんざら冗談でもなさそうなんですよ。でまた、これがアートだったりするので頭が大混乱。

ギャラリーのショーウィンドーに真っ赤なベッドルームを入れてしまったのは、イギリス人アーティストLiam Yeates(リアム・イェイツ)。「No Inhibition」と名づけられたプロジェクトで、 数日間ここでカップルが暮らすというもの。そう、トイレ以外は、飲んだり食べたり寝たり…と必要なことはすべてここで済ませるのです。ベッドを囲むように薄いカーテンが一枚あるものの、基本的には24時間ずっと通行人のさらし者になるってこと。

 
Liam Yeates
,No Inhibition, 2002
Blink Galleryでの展示風景
ベッドの中のカップルはMax WhatleyとMeg Zakreta。
写真右手前はドイツのテレビ局からの取材陣。
photo: toko ©
単なるセンセーション系かと思えば(もちろんこの要素もかなりあると思いますが)、作品の裏にはちゃんとコンセプトが。HIV感染やAIDSなどセックスがらみの病気が横行するなか、安全なセックスライフを心がけましょうというのがそのメッセージ。スポンサーはコンドームメーカーのCondomiで、壁には自動販売機、ベッドの周りにはパッケージの空箱が。

ちなみにこの二人は付き合い始めて3年の本物のカップル。彼は不動産会社勤務、彼女は子供の面倒を見るナニー。プロジェクトに参加することになったきっかけは、コベントガーデンの路上で熱〜いキスを交わす二人をイェイツさんが見初めたこと。

トレイシー・エミンの下着が脱ぎ捨ててあった自前ベッドにも以前ギョッとさせられましたが、今回はもうホント目が点。しかも、ウィンドーのなかのマックスやメグと目が合っちゃったりして、覗き見してるようでこっちが恥ずかしくなるくらい。安全なセックスライフのキャンペーン効果のほうはさておいて、人気番組「Big Brother」をギャラリーに押し込めてしまったような今っぽさには参りました。(トコ)

Liam Yeates, "No Inhibition"
02/08/29 -02/09/02,
Blink Gallery, 11 Poland Street, Soho, London, W1
 
8月29日 今週のおすすめ (6)

今週のチョイスは、前回のおすすめの最後でちょっとだけ触れた「Masters of Colour: Drain to Kandinsky」。開催場所はロイヤル・アカデミーで、色の達人というテーマのもとコレクターであるWerner and Gabrielle Merzbacker夫妻が所有する作品を展示。

展示は後の画家に大きな影響をあたえたとされるゴッホやセザンヌら19世紀後半の巨匠達でスタート。その後フォーカスは20世紀初頭のアートムーブメントへ。なかでもフォーヴィズム(野獣派)とドイツ表現主義に重点を置きながら、モダニズムの画家達の色使いとその目的を辿っていく。

展覧会の華は、フォーヴィストが並ぶギャラリー2とドイツ表現主義が占めるギャラリー4あたり。ドランやヴラマンク、ブラックが並ぶギャラリー2は、点描風のタッチのもと赤、黄、緑など明るい色彩が目立つ。ヨットや蒸気船が浮かぶ海沿いのシーンは、朱色の砂浜にピンクの峰、黄色や緑の空と暖かく眩い感じ。これでも発表された当時は「野獣」とあだ名をつけられたほど前衛に受止められたようだが、今ではリビングルームにちょうどいいって感じ。残念なことに、「野獣」のドンたるマティスは今回は一作のみ。

ギャラリー4の方は、1905年にドレスデンで結成されたブリュッケ(Die Brucke)というドイツ表現主義の一派の画家たち。フォーヴィビスト達と同じく奇抜な色使いが目立ちますが、奇抜は奇抜でもこちらはかなり重苦しく陰鬱な感じ。姥捨て山を連想させる不気味な山林や、梅肉ソースを塗りたくったようなヌード画など苦々しく心をかき乱すような作品があちこちに。

個人的にはギャラリー3のカンディンスキーの風景画がお気に入り。展示された風景画8点はミュンヘンで芸術雑誌「青い騎士(Der Blaue Reiter)」を発行していた時期のもの。リッチでファンタジックな色使いの初期の風景画が特に印象的。徐々に具象から抽象へとかわっていくスタイルの変化も面白かったり。

広範囲な作家を集めているためにフォーカスの甘さがやや目立ちますが、これが個人のコレクションからなる展覧会と思えばこの点もうなずけるところ。個人が美術館クラスの作品をこれほど沢山持っているとは全く驚きですが、それにも増して美術館顔負けの徹底した蒐集ポリシー。これは凄いです。(トコ)

Masters of Colour: Drain to Kandinsky
02/07/27-02/11/17、Royal Academy of Arts

 
8月27日 展覧会レビュー

レビューを一本アップしました。作家はスペイン人女性アーティスト、エスター・プラナス(Esther Planas)で、イーストエンドのFive Yearsで先月開かれた「D. S. Number 4」展から。子供の頃好きだった物やアニメのキャラを集めたインスタレーションは一見とっても無邪気。でもよく見ると、その裏にはアンダーグラウンドな世界が…。

 
8月17日 今週のおすすめ (5)

今月のウェストエンドのギャラリー街はとっても静か。観光客だ!来館者獲得!とガンバル美術館とは違って、商業ギャラリーはどこもシーンとした感じ。Laurent Delayeは8月26日まで、Stephen Friedmanは9月の第二週目までお休み。Aspray Jacqueは窓が真っ暗で、Houldsworthはガラス越しに人影が見えてるのにドアは閉まったまま。

5件目のEntwistleにてようやく幸運が。しかも出迎えてくれたのは知合いのアーティストの卵○○さん。こないだまで近くの別のギャラリーにたはずなのに、今はここでインターンシップ…つまり無料奉仕で修行中。美術館だけじゃなくって商業ギャラリーにまでインターンシップがあるとはちょっと驚き。

さて、ここEntwistleでのショーはギャラリーアーティストによるグループ展。収納庫から取り出してきたような即席風のわりには、見ごたえはなかなかのもの。まずは、サーチの「I am a Camera」に出てたJason Brook。アクリル画は白黒からカラーに変わってたものの、相変わらずのフォトリアリストぶりに舌を巻いてしまう。それから、アナザーワールドっぽい風景写真のDan Holdsworth。たぶん、去年バービカンで紹介されてたものだと思う。そして一番印象に残ったPatty Chang。鏡に映るリフレクションと現実が入り混じった写真はとっても神秘的で惹きつけられる。

お次は一本隣の道にあるRocket。ベルリンのギャラリーとの交換プログラム「Berlin / London / Minimal」が催されていた。タイトルが語るとおりミニマルな作品が所狭しと並ぶグループ展で、デザインや建築との接点が見え隠れし結構おもしろい。Gerold Millersの絵のないフレームはモダン調インテリア小物みたいだし、Stefan Eberstadtのチップボードでできた立体は平屋型マンションの模型みたい。他にもオップアートや構成主義にルーツを辿れそうなものがあったりで、一口にミニマルといえどもバラエティのある取り合わせ。

最後はヨーロピアン風レストランが並ぶHeddon StreetにあるSadie Coles HQ。こちらの催しも交換プログラムで、お相手はイスラエルのギャラリー。アーティストはみな25歳から30歳くらいの若手。作品は絵画、ドローイング、ビデオやCGなどで、全体的にかなりポップな感じ。なかでも一番強烈だったのは、断面割りしたビルのなかにミニチュア人間がじゃうじゃといるEliezer Sonnenscheinの「Artschool」。アイコンで出来上がったようなその世界は、まるでシムタワーを見ている感じ。

ざっと三件見てかかった時間は約40分。場所も便利なので観光やショッピングのついでに足をのばしてみませんか?まだまだ観たりないって人にはRoyal Academyの「Masters of Colour」もお勧めだったり。おまけに、中庭の噴水がとっても素敵なんですよね。(トコ)

スケジュール情報はカレンダー:ウェストエンド編
ロケーション情報はギャラリーインデックス:ウェストエンド編

 
  テートモダン完徹 

さ〜て今日は、先日お知らせしましたテートモダンの完徹の日ですね。今朝10時から明日の夜10時までず〜っと営業中ってことです。レストランとカフェは夜中は閉まってしまうみたいですが、展覧会は続行です。夜中のレクチャーもあったりします。どれくらいの人が押し寄せるのか楽しみですねぇ。詳しくは7月12日付けの日誌で。

Tate Modern

 
8月14日 メールでアートを貰おう!

朝メールボックスをあけてみたらとアートが届いてた、って結構いいかもしれません。

The Centre of Attentionの新しい企画「Email Art」なるもので、期間中ここのサイトでメルアドを登録しとくと、毎週一本ずつメールでアートが届くっていう仕組み。公募も受け付けているので、自分も発信したい!という方はトライしてみては?最後の週の作品は、公募者のなかから選ばれるそうですよ。

ちなみに、第一週目はSylvie Fleuryのかなりコミックな画像「IN THE DISTANCE FROGS CROAK IN THE MOUNTAIN RICE FIELDS,」でした。なんとなく響きが俳句っぽいタイトルですねぇ〜。あちらのサイトにサムネイル画像が載っています。

The Centre of Attention
展覧会カレンダー(イーストエンド編)にもリストしてます

 
8月9日 展覧会レビュー

レビューを2本アップしました。両方ともイーストエンドのギャラリーで先月開催されたショーからです。

Barby Asante (バービー・アサンテ)は、カフェ文化と紅茶の歴史をテーマとするインスタレーションとビデオを発表。
Lothar Gotz (ローター・ゴッツ)
は、絵画と装飾と空間デザインの中間にあるようなサイト・スペシフィック作品を発表。

 
8月8日 掻っ攫われたギリシャ彫刻

盗まれたのは約2,500年前の高さ12cmの大理石の彫刻で、時価25,000ポンドと値踏みされた代物。場所はあの大英博物館(British Museum)で、犯行は白昼堂々行われた模様。彫刻が展示されてたGreek Archaic Galleryには常勤の警備員がいなかったという。

行かれたことのある方はご存知の通り、大英博物館にはそれ級の美術品がゴロゴロしています。だからと言って一個や二個盗まれたっていいでしょうと言ってるわけではありませんが、今回のことが大きな話題となっているのには、幾つかのバッドタイミング要素が絡んでいるような…。

まずは事件が起きた7月30日という日。サマー・ホリデーまっ最中のこの日は、大英博物館にとって観光客でごった返す忙しい日。まあこれは毎年のことですが、この日は奇遇にも新館長の初出勤の日でもありました。博物館の人事なんて普通なら話題にもならないのですが、この館長がNational Galleryから来たやり手で、多額の負債を抱え首が回らなくなった大英博物館の救世主として迎えられたNeil MacGregor氏ということで、メディアの目がかなり光っていたよう。

第二の不運は、ここが返還問題が激化しているエルギン・マーブル(Elgin Marbles)を所蔵していること。そう、早くもギリシャ政府から今回の盗難について釈明を求めるお手紙が届いてしまいました。ギリシャ側の管理体制の質の低さを理由に返還を拒み続けてきた大英博物館にとって、これはとっても痛い。案の定、アテネの博物館ではこんなこと一度も起きたことがない!ちゃんと資金を割り当ててるのか!とあちらから言われてしまう始末。

お金。実は、これがかなり大きな問題のようで、大英博物館が抱える赤字額はどうも○百万ポンドにも上るという噂。多額の資金を投入してGreat Courtがオープンしたのが2000年末。でも、来館者が増えた!と喜んだのも束の間で、一年も経たないうちにアメリカで同時多発テロが。海外からの観光客がどっと減り、来館者の60%が海外からという大英博物館の入場者はガタ落ち。期待してたショップやレストランからの収益も伸び悩み、企業へのスペース貸出しも今一パッとせず、この先には従業員15%カットという厳しい現実が待ち構えているよう。

2004年のオリンピックをエルギン・マーブルとともに迎えたい開催国のギリシャ。その熱の入れようは大したもので、来るかわからぬエルギン・マーブルのためにアクロポリスに博物館を建設しようとしているくらい。ぼやぼやしてると、こっち方面でも窮地に落とされてしまうのではないでしょうかね。(トコ)

BBCの記事
The Guardianの記事

 
8月7日 ロンドンの貸しギャラリー

最近よく「ロンドンには貸しギャラリーってないんですか?」というメールを頂きます。どこでもかんでもが素早くギャラリーに様変わりしてしまうロンドンでは,、確かに貸しギャラリーの存在はかなり希薄です。でもだからと言って、存在しない訳ではありません。ということで、今回はこちらの貸しギャラリーをちょっと調べてみました。

 
8月6日 展覧会情報

今月の展覧会リストを載せました。

Eastendの展覧会」:The Centre of Attentionの参加型のEメールアートや、Stuckism Internationalの新べニューでのショーなど7件。

West Endで展覧会」:60年代のアメリカンアートが目立つLisson Gallery、Annely Juda Fine Art、Robert Sandelsonなど9件。

気になる写真展」:テッズ、モッズ、スキンヘッズ、パンクとサブカル系に徹したThe Photographers' Galleryなど4件。

テムズの南側」:ちょっと静かめで今回はHales GalleryとPump House Galleryの2件のみ。

 
8月3日 今週のおすすめ (4)

先週のルシアン・フロイドに続き、今週は彼のモデルとして、そしてパフォーマンス・アーティストとしても知られ、1994年に亡くなったLeigh Bowery(リー・バワリー)にフォーカス。フロイドの時と同じく今回も彼はモデルですが、今回は彼のファッションの奇抜さのせいか、写真というメディアのせいか、それとも写真家の知名度の低さのせいなのか、モデルの彼のほうが主役のような印象。

バワリー登場の展覧会はICAで7月19日から始まった「Artist←→Model」。ポートレート写真における写真家とモデルの関係に焦点をあてたショーで、カメラマンは製作者、モデルは被写体という定番的な役割の構図に疑問を投げかけるもの。

出展アーティストはFergus Greer(ファーガス・グリーア)Richard Kern(リチャード・カーン)。二人ともアート、音楽、ファッション、メディアを取り混ぜたクロス・ボーダー的なアプローチで知られ、80年代のアートに新風を巻き込んだ時のカッティング・エッジとして再評価されています。

1階は最先端モードをパロったような格好をしたバワリーを写したグリーアのショット。写真のなかのバワリーは、キャミソールやワンピースのような服を着て、顔をシュールなマスクや過激なメークで覆っている。人物年齢性別ともに不詳なその姿は、ポートレートというようりモードがかったオブジェを撮ったもののよう。

バワリーが纏ってるエロチックで奇抜なコスチュームは、彼が80年代に友人ダンサーMichael Clarkのためにデザインした「looks」シリーズ。結局はデザインだけに止まらず、Clarkのショーの前座としてこれを纏ってパフォーマンスをすることになった彼ですが、これが話題を呼び数年後にはウェストエンドの今はなき一流ギャラリーAnthony d'Offay Galleryでパフォーマンスを披露。今回のグリーア、ルシアン・フロイドとの出会いのきっかけとなったショーです。

2階はというと、アダルト雑誌から飛び出したようなカーンの女の子達の写真が。去年のHayward Galleryでのアラーキーの東京ノスタルジーのあとでは衝撃も軽かったりしますが、それでも日本での展示は難しそうなエロいものばかり。それもそのはず。何を隠そう、彼はPurpleやSpoonなど最先端トレンド雑誌だけでなく、JuggsやBarely Legalなどのポルノ雑誌のカメラマンだったりもするのです。そんなカーンの写真が他のポルノ写真と一風違うのは、女の子たちの仕草がちょっとシュールなこと。鼻をほじくっていたりウガイしてたり、ゲロをはいてたり便器に頭を突っ込んでたりと、ポルノ写真にそぐわないポーズをとっているんですね。

でも、今回の作品が裸の女の子ばかりだからと言って、カーンを単なるポルノ・カメラマンと思うなかれ。実は彼、知る人ぞ知るN.Y.で80年代前半に起きたポスト・パンク・ムーブメント「Cinema of Transgression」のキーメンバーだったりするのです。ドラッグ、セックス、バイオレンス盛りだくさんの彼のインディー映画は、それまでの現代アートの常識を打ち破る新境地として当時から今日まで多くのアーティストから支持を得ているのです。(トコ)

Artist←→Model、02/07/19-02/09/08、ICA
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このページの掲載内容

ギャラリーでH? (8.31)

今週のおすすめNo.6(8.29)
Masters of Colour: Drain to Kandinsky
展覧会レビュー(8.27)
Esther Planas

今週のおすすめNo.5(8.17)
*Entwistle
*Rocket
*Sadie Coles HQ

テートモダン完徹2 (8.17)

メールでアートを貰おう! (8.14)

展覧会レビュー(8.9)
*Barby Asante
*Lothar Gotz
掻っ攫われたギリシャ彫刻 (8.8)
ロンドンの貸しギャラリー (8.7)
展覧会情報- (8.6)
イーストエンド
ウェストエンド
写真展
テムズの南側
今週のおすすめNo.4(8.3)
*Fergus Greer
*Richard Kern