Anish Kapoor, Shooting into the Corner, 2008-2009
Royal Academy of Arts, The West Roomで
の展示風景
この大砲のバレルに重さ10キロのワックスの弾を入れ、隣の部屋に向かって発射。弾は壁をぶち抜かない程度の堅さに調整されており、それを維持するためか、館内は通常に比べて気温が低め。
大砲が置かれたエリアはロープで隔離されており、観客が入れないようになっている。
Photo: Toyoko Ito


帝国時代の栄華ただようロイヤル・アカデミーに、大砲が出現。「ズドーン」という爆音と共に弾が時速50キロで発射し、一瞬にして突き当たりの壁に玉砕、喚声が一斉にどよめく――。炸裂した弾はもちろん偽物で、顔料を混ぜたワックスを固めたものというが、血糊のようにねっとりとしたそれが壁を流れて床に積もった様は、大量虐殺のシーンを髣髴とさせるに十分。背筋にぞわっと旋律が走る。

こんな凶暴なパフォーマンスが20分に一度。ワックスの分量にして30トン分続くこの展示は、91年のターナー賞受賞者で英国を代表する彫刻家、アニッシュ・カプーアの待望の個展。

展示はカプーアの30年に渡るキャリアから主要作品を押さえた構成になっており、イブ・クライン風にオブジェに顔料をまぶした初期の作品『1000 Names』で始まり、フラッ トな面に凹面加工を施した絵画と彫刻の中間作『Yellow』へと続き、より近作のミラー加工を施した立体へと進む。

絵画のように顔料をまとったり、観客を吸い込んで平衡感覚を奪ったり、周りの世界をあべこべに映し出したり。あの手この手でスカルプチャーの概念を覆す作品群は、矛盾に満ちていてとても新鮮。また、何年か前のテート・モダンでの盛大な展示を想起させる超巨大作品があれば、高尚趣味のカプーアにしては珍しい汚物がトグロを巻いたような新作もあったりで、サイズ、素材、フォルム、すべてにおいてバラエティ豊富。

しかし一番の見どころといえば、冒頭の大砲の結末劇のように、5室をぶち抜いて敷かれたレールの上を動く車両『Svayambh』。30トン分のワックスを固めた車両は実物サイズで、大量の死体をミキサーにかけて固めたかのように真っ赤。そんな毒々しい塊が、格調高い白壁のバーリントン・ハウスの中を戸口や柱にぶつかりながらのっそりと動く姿は圧巻そのもの。美しくもおぞましい悪夢を見ているような錯覚を覚える。こんな作品見たことがない。これは必見である。


Anish Kapoor, Svayambh, 2007
Royal Academy of Artsで
の展示風景
ロイヤル・アカデミーの展示室5室を使ってレールを設置、その上を車両の形をしたペイントの塊(ワックス)がゆっくりと走る。動くスピードは片道1時間半と、よく見ないと動いているのかどうかわからないほどゆっくり。
Photo: Toyoko Ito

Anish Kapoor
Royal Academy or Arts
090926 - 091211



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