Dominique Gonzalez-Foerster
TH.2058


文&写真: 伊東豊子(Toyoko Ito)

ロンドンで非常事態発生!住民は直ちにテート・モダンに避難せよ!

「そんな馬鹿げた話があるか」と思われるかも知れないが、同館のタービンホールに二段ベッド200個を送り込んだフランス人作家ドミニク・ゴンザレス・フェルステル(Dominique Gonzalez-Foerster)にとっては、これはマジな話。みじめな避難生活を少しでも楽しく過ごせるようにと、枕元にはレイ・ブラッドベリの『華氏451度』などのSF小説、スクリーン上にはアンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』などのSF映画と、娯楽までもがちゃんと用意されている。

《TH.2058》といかにもSF小説風の題が付いたこの作品は、50年後のロンドンがテーマ。豪雨でテムズ川が氾濫したとでも、爆弾テロで街がぶっ飛んだとでも、設定の方は観る人にお任せするが、あのテートモダンが半ば動物園のような避難所へと変わっている。

そこで私たちを待ち受けているのが、動物の形をした巨大なアート。六本木ヒルズでもお馴染みのルイーズ・ブルジョワの「クモ」、アレクサンダー・カルダーの「フラミンゴ」、マオリツィオ・カテランの「恐竜」などアニマルアートがベッドと一緒に置かれていて、なんとも異様な光景。しかも、カテランの一点をのぞき、後のものはすべて現物よりも25%大きいという。雨を吸ったとか、放射能を浴びたとか幾つか説があるようだが(ホントか?)、つまりは元の作品よりも大きく作った複製になる。

この作品も、今年のターナー賞をはじめ今の英国の現代美術の流行にもれず、自作に既存の美術品を引用したタイプの作品になる。殊に、ブルジョワの「クモ」は、8年前にこのユニレバー・シリーズのこの会場で発表された作品になるため、その引用度もひとしお高いと言えるが、ゴンザレス・フェルステルの使い方があまりにも意外で豪快でユーモラスでもあるせいか、引用云々と議論を始める気にもならない。

そんなことよりも受ける印象は、「対決!クモラvsフラミンゴン」とか「アート版ジュラシック・パーク」とかおそろしくポップなノリだ。洞窟やジャングルを想起させる風や水の音と、ラジオからかすかに流れてくるボサノヴァの調べ。それらを背景に鼻を突き合わせる巨大なアニマルアート。決して落ち着く環境とはいえないが、折角ベッドもあることだし、クモラの腹の下でH.G.ウェルズの『宇宙戦争』なんかを読んでみるのも乙かもしれない。


Dominique Gonzalez-Foerster
TH.2058


Dominique Gonzalez-Foerster
TH.2058
The Unilever Series
Tate Modern
081014 - 090413
Tate Modern


過去の記事へのリンク:
2007: Doris Salcedo(レビュー)

2006:Carsten Holler(日誌)
2005: Rachael Whiteread(レビュー)

2004: Bruce Nauman(日誌)
2003: Olafur Eliasson(レビュー)
2002: Anish Kapoor(日誌)


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