Grayson Perry, Untitled, 2005
Photograph: Eric Great Rex
Courtesy the artist and Victoria Miro Gallery





グレイソン・ペリーといえば、幼児虐待のシーンを描いた壷と、フリフリドレスを着た幼女の扮装。ターナー賞作家であるだけでなく、英国の現代美術界を代表する“変な”アーティストのひとりでもあるが、その彼がこの度、少しだけ方向転換。幼女を捨てヴィクトリア時代の老女になるとともに、霊柩車や人毛を使った人形などやや悪趣味な展示を披露している。

「不思議の国のアリス」を期待して足を踏み入れた人は、まずその照明を落した渋い内装と、ペリーらしからぬ意外な展示物に驚くことだろう。壁には獣を捕らえるのに使われていた様々な罠類に狩猟銃、床にはボロボロの馬車(実は霊柩車)や錆びた棺、薄汚れたドレスなどが置かれ、ペリーの代名詞である壷さえなければ、どこかの博物館の展示と間違えてしまいそうだ。

この、彼らしくない展示、実は、ペリーがアーティストとキュレーションの二束の草鞋をはく初企画になる。上で触れた霊柩車や狩猟銃など展示品の大部分がリンカンシャーの博物館からの借り物で、そこにペリーの作品が壷、人形、陶器の置物、版画、写真など様々な形となって混入している。


Grayson Perry
The Charms of Lincolnshire
Installation View: The Collection, Lincoln, 2006


「子供を失って気が違ってしまったヴィクトリア時代の農夫の妻をイメージして選び、作った」と言うだけあって、展示は墓場のような暗さ。カントリーライフをテーマにしながらも、そこには人々が憧れるイングランドの田園風景の美しいイメージはなく、大英帝国黄金期の影で"喪の時代"とも呼ばれたヴィクトリア朝の影の部分が重く圧し掛かっている(英国のTVコメディ「リーグ オブ ジェントルマン」に通じる怪奇さとでも言うか)。

今回の展示で興味深いのが、ペリーが自作をアートとは呼ばれない過去の時代の“産物”と一緒に見せていること。ペリーの作品が壷などの工芸寄りのメディアを用い、アウトサイダー色が強いだけに、博物館のコンテクストに自作“アート”を置く試みや、博物館をギャラリーというコンテクストに持ってくる試みが、意味深に感じられる。

それにしても、ここ数年、アーティストがキュレーションを務める企画の多いこと。ブリジット・ライリー、デイヴィッド・ホックニー、マーティン・パー、ジェレミー・デラー、タシタ・ディーン、ブライアン・グリフィス…と名前を挙げればきりがなく、美術館やギャラリーのこの気前の良さを見ていると、キュレーションが名声を確立したアーティストへのご褒美として使われているような印象を受けなくもない。

確かに、アーティストの視点を通じて博物館のコレクションを見るのは新鮮だし、展示すべてをコントロールしたいという大物アーティストのエゴもわかれば、大衆の関心離れが進む所蔵品を抱えるアイデア不足の博物館が、作家の協力を得てそれらに新たな光を当てたいと望む気持ちもわかる。が、正直言って、これくらいの企画だったら博物館のキュレーターでもできそうな気もするが、そこはネームバリューといったところだろうか。“あのグレイソン・ペリーが選んだ”という…。


Grayson Perry, The Charms of Lincolnshire, 2006
Souvenir teatowel
Courtesy the artist and Victoria Miro Gallery


Grayson Perry: The Charms of Lincolnshire
060707- 060812
Victoria Miro Gallery


 


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