Bill Viola, Purification 2005
Courtesy: Haunch of Venison London,
Copyright: Bill Viola, 2006
Photo: Kira Perov,




三年前のナショナルギャラリーの「受難(The Passions)」展で、絶賛を浴びたビル・ヴィオラがロンドンに再上陸。ウェストエンドのホーンチ・オブ・ヴェニソンと、ロンドンブリッジの聖オラフ大学の二会場にて、映像12点で構成された大作「愛/死:トリスタン・プロジェクト」を披露している。

今回の展示品の大部分が、05年春にパリのオペラ・バスティーユで公開されたワーグナー原作のオペラ「トリスタンとイソルデ」(監督ピーター・セラーズ)用に制作した映像からの抜粋だ。ケルト神話を元にする主人公二人の不義の恋が、原作の粗筋を越えた抽象的かつ雄大な映像美となって展開する。

全編を通じて圧巻なのが、ヴィオラの定番モチーフであり、それぞれ死と再生を暗示する火と水の存在。とりわけ目立つのが、一糸乱れぬ水面から激流、さらに逆流まで変幻自在に姿を変え、時に人物とポエティックに戯れながら、神秘的な映像を紡ぐ水の存在だ。


Bill Viola, The Fall Into Paradise 2005
Courtesy: Haunch of Venison London, Copyright: Bill Viola, 2006
Photocredit: Kira Perov


それが最も効果的に使われているのが、ホーンチ・オブ・ヴェニソン三階で上映中の二枚仕立ての映像「purification」(お清め)。7部で構成されたこの作品は、50分と非常に長い作品だが、男女が裸になって禊(みそぎ)のような儀式を執り行う[The Cleansing](洗浄)や、二人が水に溶けて消える[Dissolution](溶解)など、彼の水に対する拘りがたっぷりと堪能できる。また、顔の表情を通じての感情表現や宗教画との接点など、ヴィオラのこれまでの関心事の多くがここに凝縮されている。

この他にも、水中で男女二人が戯れる「Becoming Light」や水中での昇天を描いた「Tristan's Ascension」など秀逸作が多数あるが、やや残念なのが、作風が旧作とかなり似通っているところだ。例えば、5年前にアンソニー・ドフェイ・ギャラリーで公開され、現在テート・モダンにある「Five Angels for the Millennium」でみせた、人物が大音声を伴って水中から一挙に浮上するシーン。ヴィオラ映像の代表モチーフのひとつだが、今回も似たモチーフが少なからず登場し、名声を得た作家にありがちな作品のマンネリ化を感じる。

このように多少残念な点もあるが、このトリスタン・プロジェクトは元を辿ればオペラのために作られた映像。よって、ギャラリーというコンテクストを離れ、舞台の上でオペラ歌手の美声とオーケストラと一緒に上映されたのを観たならば、また受ける印象もきっと違ったことだろう。実際に、舞台を観た少なからずの観客が、映像に気をとられ舞台に集中できなかったとコメントしている。これが褒め言葉か否かの議論はここでは遠慮することにするが、とにかく「ヴィデオアートの第一人者」の作品、それも約4時間分ががタダで堪能できてしまうのだから、それを見逃す手はないだろう。


Bill Viola, Tristan’s Ascension 2005
Courtesy: Haunch of Venison London, Copyright: Bill Viola, 2006
Photocredit: Kira Perov

Bill Viola: Love/Death: The Tristan Project
060621- 060902
www.haunchofvenison.com

会場1)
Haunch of Venison
6 Haunch of Venison Yard
off Brook Street
London W1K 5ES

会場2)
St. Olave's College
Tooley Street
London SE1 2JR



日本の方へ:
10月に東京の森美術館でビル・ヴィオラの大型展が開催されます。

ビル・ヴィオラ: はつゆめ
会期:2006年10月14日[土]〜2007年1月8日[月・祝]
会場:森美術館53階
詳しくはこちら



 


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