Nigel Cooke, Studio Infinity, 2006, oil on canvas
© Nigel Cook, Courtesy Stuart Shave | Modern Art, London and Andrea Rosen Gallery, New York


正方形にクロッピングして、太字でタイトルを入れたら、CDのジャケットにぴったりだし、クラブやイベントのチラシにしてもよさそうだ。人物や物をかたどるラインが今風だし、アニメと実写を組み合わせたような構成がグラフィック的。色彩をおさえた殺伐としたシーンなんて、核戦争後の近未来アニメのようにファンタジーに満ちている。そう、一見、いかにもクールなイラスト集に出てきそうな画像に見えるのだが、それが意外にもキャンバスに油彩という形をとる。それも19世紀の歴史画のように巨大な。

一体、何年ぶりのことだろう。ここサウスロンドンギャラリーで、絵画展が開かれるのは。展示室に入ると、吸い込まれそうなくらい大きな作品が6点と、小品が3点。作品には明らかなストーリーはなさそうだが、終末感のただよう統一されたトーンが、それらがひとつの世界であることを暗示する。どんな世界かというと、自然も文明も枯れ果てて退廃した世界。人は墓堀と怪しげな宗教活動に精を出し、壁の落書きと草花がタバコをふかしながら泣くという、可愛さの余る病んだ世界だ。


Nigel Cooke, Fun (detail), 2006, oil on canvas
© Nigel Cook, Courtesy Stuart Shave | Modern Art, London and Andrea Rosen Gallery, New York

私がナイジェル・クックの絵画をはじめて見たのは2年前になる。テート・ブリテンの若手対象のプログラム「Art Now」でのことで、その独特な構図と極めて精緻な描写に惹かれ、それ以来、目が離せない作家のひとりになった(『美術の窓』(2005年の7月号)の「誌上展覧会:イギリス具象絵画展」でも紹介した)。

そのクックの絵画の魅力のひとつが、添付のリーフレットでも指摘されている、様々な美術的要素が凝縮した小宇宙的なスタイルだ。ロマン派のような叙情的な風景、シュールレアリズムを思わすモチーフに込められた意味の二面性、風刺画のようなブラックユーモアー、アニメのような幻想的な描写、抽象画のようなシンプルさなど、これらの要素が一枚の画布に詰まっている。

そして、これらのスタイルの共存が、ハイ・アンド・ローのミックスともいえる畏怖と親近感を作りあげている。伝統絵画の技術を鮮やかに用いながらも、出てくるモチーフやユーモアが現代的。そしてそれを、クールなイラストやアニメに慣れた感性にうったえるセンスでまとめてる。この点が、ナショナルギャラリーにある宗教画や歴史画を観て素晴らしいのは分かっても、時代錯誤を感じてしまう私のような人間にウケている理由のひとつのように思う。

英国も他の国同様、ターナー賞の候補に画家が選ばれただけで、「これのどこが新しい!」と言わんばかりに新聞に記事が載るご時世だ(サーチ・ギャラリーのキャッチフレーズ「絵画の勝利」むなしく)。このナイジェル・クック展は、そんななか絵画を「コンテンポラリーアート」風に見せる小細工もなく開かれた純粋な絵画展だが、不思議と十分に楽しめる。よく絵画は死んだと言われ、実際あくびが出てしまうものも結構あったりするが、まだ捨てたもんじゃないのかもしれない。少なくともこれを見る限りは。


Nigel Cooke, Brain Party, 2004, oil on canvas
Collection of the Astrup Fearnley, Museet for Moderne Kunst, Norway


Nigel Cooke: A Portrait of Everything
060330- 060514
South London Gallery


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