手前:Bedwyr Williams, Walk a mile in my shoes, 2006
後ろの壁:Pable Bronstein, Display Walls in the style of an earlier ICA Refurb, 2006



アワードの展示についてレビューを書くのはアホらしい。このベックス・フューチャーズ賞のように毎年審査員が総入れ替えする賞の展示を見て、去年に比べてマシだとか言っても始まらないし、選出者を通じて英国全体の美術の傾向を見ようなんてのも無意味。所詮は、その年の審査員の好みだ。

しかしそうは言っても、今年のこの賞のように審査員5人全員がアーティスト(普通は評論家やキュレーターなどが含まれるもの)、そのうえメンバーがチャップマン兄弟やマーティン・クリード、ジリアン・ウェアリングなどの、90年代を風靡した悪ふざけを好む作家ばかりとくれば、そこにある種の傾向が見えたとしてもおかしくない。いや、そこにこそ、期待したくなる。

そしてその期待通りに、駄洒落の効いた作品が並んだ。靴底の形をしたリチャード・ヒューズの馬鹿デカいレンガの花壇(ご丁寧に土が入っている)、ジェイムズ・ジョイスの『Ulyses』内の単語をアルファベット順に並べ替えたサイモン・ポッパーの読めない「ULYSSES」の山(1ページ全部「He」のページがあったりする、書店で一冊10ポンドで売っている)、壁に貼ったスー・トンプキンスの限りなく白紙に近いわら半紙など、電気が点いたり消えたりする部屋でターナー賞をとった審査員がいかにも好みそうな作品が目立つ。


Daniel Sinsel, Untitled, 2006


そして、その馬鹿らしさの究極の例が、テートのトリエンナーレにも参加しているパブロ・ブロンスタインの展示室を仕切る壁と、そこに刳り貫かれた通路。この作品に至っては、環境に溶け込んだそのあまりにもの自然な姿に(何せただの普通の白い壁なので)、監視員にどれが作品なのか聞かなければいけなかったくらいだ。

とまあ、冗談のような作品ばかりだが、それも徹底してやられると逆に感心する。そのひとつが、「審査するまえに僕の靴で1マイル歩いてよ」とポップな看板が掲げられたベドウィル・ウィリアムズのゲタ箱と家具一式。一足ごとに履いて何をしただの、誰からもらっただの、エピソードが添えられたこれらの靴は、13インチ(33センチ)というサイズのために「遠足、ビーチホリデー、結婚、サッカー」の機会を台無しにされたという、作家本人の自伝的作品だ。使い古した人の靴の中をのぞく趣味はないが、ユーモアとペーソスが効いたメッセージが面白くてつい読んでしまう。


Simon Popper, Borromean, 2006


また、徹底しているといえば、地階通路に展示されたジェイミー・ショヴリンの、ここだけで独立した展覧会とも言える、今はなきドイツのエクスペリメンタルバンド「Lustfaust」関連の小物類の展示もそのひとつ。作品というよりはキュレーションと呼ぶのが相応しいこちらでは、後世のバンドに影響を与えながらもその実態がよく分からない先のバンドの輪郭が、ファンが提供してくれたカセットラベルやコメントによって綴られているのだが、その徹底振りが凄いのと同時に、どこまでが事実でどこからが作り話なのかが分からないところがまた魅力的。

過去7年で若手作家の登竜門としての地位を固めたベックス・フューチャーズは、今年からロンドンのICAに加え、ブリストルのアーノルフィニ、グラスゴーのCCAでも同時開催されることになり、全国規模の賞として成熟期に入った。また今年から、会場に設置されたコンピューターおよびインターネットを通じて、一般の人も投票ができるようになり、その結果が最終審査で考慮されるという。誰に幸運の女神が微笑むのか、受賞者の発表は4月22日にICAにて行われる。


Beck's Futures 2006(投票はこちらで)
Can't Wait For Tomorrow, ICA, London (060331- 060514)
Ice Cream Revolution,
CCA, Glasgow (060408- 060514)
Jokes, Girls and Wood,
Arnolfini, Bristol (060413- 060514)


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