Candice Breitz, Mother + Father, 2005
2 six channel installation; 12 synchronizable hard drives, 12 plasma displays, colour, sound, Dimensions variable
Courtesy Jay Jopling/White Cube (London)



世界のアート界は思ったより小さいようだ。6月にヴェネツィア・ビエンナーレで見たばかりの南アフリカ出身ベルリン在住の作家、キャンディス・ブレイツの「Mother + Father」が早くもロンドンに登場し、様々な評論家から一押しの評を受けている(ヴェネツィアはイタリア館の企画展「The experience of Art(アートの経験)」内で展示)。

「Mother + Father」は、『クレーマー・クレーマー』や『ハリウッドにくちづけ』などのハリウッド映画を再編集して、モニター6台でワンセットの映像を、母親版、父親版と2セット一組にした映像インスタレーションだ。母親版の映像では、フェイ・ダナウェー、メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツら女優6名がそれぞれ画面一台一台に。父親版には、ダスティン・ホフマン、ドナルド・サザランドら男優6名が登場。

この作品の面白い点は、複数の映画からのシーンを繋ぎ合わせた結果、既存のストーリーとはまったく別の独自のストーリーが出来上がっていることだ。母親版では、「母親なんてもうまっぴら」などとわめきたてる映像を通じ、母と妻の役に疲れそれを放棄する母親像が描かれ、父親版では、こういう状況下に置かれた父親の典型ともいうべき、逃げた妻への悲しみや怒りを(時に子供に対して)ぶちまける父親像が描かれている。

この壊れた家族関係の描写にブレイツが巧みに使ったのが、映画のスクリプトだ。実際に目を閉じて体験してもらうと分かるが、この作品は声だけでも大方意味が通じるように出来ている。既存映画のサンプリングという点で似た作品にクリスチャン・マークレーの『Video Quartet』があるが、映像とサウンドを軸にするマークレーに対し、ブレイツは映像とセリフ。セリフとそれを語る俳優の表情に観客の全意識を集めるべく、すべての画像から背景が切りとられている。その結果、俳優達の演技が妙にオーバーで人工的に見える。


Candice Breitz, Queen (A Portrait of Madonna), 2005
Thirty-channel installation, Duration: 73 minutes 30 seconds
Courtesy Jay Jopling/White Cube (London)

一方、二階の映像インスタレーション「Queen」は、「Mother + Father」から一転。積上げられた画面30台に映る映像は、ブレイツ自らが撮った映像である上に、出演者もイタリアのマドンナファンとスターからファンへと逆転。30名ひとりひとりをプロ用の録音スタジオに招き、マドンナのアルバム「Immaculate Collection」の収録曲全曲を自由にパフォーマンスさせ、その映像を編集したものだ。

「Mother + Father」と比べて興味深いのが、彼らファンの表情。俳優たちの計算され尽くしたような表情とは打って変わって、マドンナになりきったような、時に見ている側が恥ずかしくなるような熱演ぶりだ。そこには洗練された商業イメージでパッケージされる前の、明日のスターを夢見るアマチュアの典型像ともいうべきものを見てとることができる。

今回の二点は既存映像と自作映像とソースも制作方法も違えば、映像内の情報の伝達方法も語りと歌、出演者もプロとアマと開きがある。しかし、ある種の典型像、それもメディアを通じて私達がこういうものだと受け止めているある種の人間の典型像を示唆している点で共通していたようだ。

Candice Breitz
050907-051008
White Cube


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