Carsten Holler, Mirror Carousel, 2005
Aluminium, mirrors, lights, motor, 5x7.5m
Courtesy of the artist and Gagosian




キングスクロスといううさん臭い場所にありながらも、そのサイズとエレガントさでロンドン一、二を争うあのガゴーシアンに、こともあろうか回転ブランコが登場した。直径7.5メートル、高さ4.7メートルの実物大サイズのこちらは、遊園地のそれに比べると外装が鏡張りで、無数のライトが輪郭を縁取る超豪華版だが、実際に動きもすれば乗ることもできる正真正銘の回転ブランコだ。

賑やかな遊園地にはハッピーを絵に描いたようなイメージがあるが、オープニング翌日の昼間に訪れたガゴーシアンのそれは観客が二、三いるだけの寂しい光景。そこを何とか視覚的トリックでカバーしようと、回転ブランコの鏡が自らの構造を切子面のように細分化し、ライトの列を何層にも増やして、目が眩むようなイリュージョンを作り上げていた。

それにしてもギャラリーに回転ブランコとは、展覧界のタイトルが『Logic(ロジック)』なだけに、よけい不可解に感じられる。しかし、この不可解な点は、カールステン・フラーという作家自身にも当てはまり、ベルギー生れのドイツ人ながらも今年のヴェネツィア・ビエンナーレにスウェーデン代表として参加。カールステン・フラーという名前の他に、A.J.フローリゾーネ、バルドー・ハウザー、バルドー・ハンセンなどの名前を持つなどかなり謎。

そして謎は作品にも通じる。彼の作品には、作家になる前は博士号を持つ植物病理学者だったというだけに、動植物や装置といった科学やテクノロジーへの言及が目立つ。しかし、鳥に興味があると言っては人を飛ばす装置を作ったり、幻覚に興味があると言っては巨大きのこがぐるぐる回る装置をつくったりと、作品を通じて知る彼はまるでコメディー映画のなかの発明博士のようだ。妙な発明品はこれだけにとどまらず、かけると世界が上下逆様に見えるゴーグル、漕ぐと火が点火するガスタンク付きの自転車、ネズミ捕りのような子供の捕獲装置などもあり、こんな装置があったら大変というものが目立つ。

見ようによっては、妙な装置を通じ世の中の常識や摂理に挑んできたと言えなくもないフラーだが、近年は私たちの視覚に挑む作品が増えているようだ。前出のプラダ財団で展示された「きのこ」や一昨年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表したインスタレーションなどがこのいい例で、これらの作品では夥しい数のライトや、ループ型のモチーフ、旋回の動きなどが取り込まれ、鑑賞者を視覚的非合理の世界つまり幻覚へと導こうとしているように思われる。今回の回転ブランコもその点ではある程度成功しているが、やはり不可解なのはなぜ回転ブランコなのかという点だ。しかし、ロジックに挑む人間にそんなことを聞いても仕方がない。取り敢えずは、アートとは回転ブランコにも微笑む寛大なものと思っておこう。

Carsten Holler: Logic
050901-051008
Gagosian Gallery


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