ロンドン南西部に位置するウィンブルドン。毎年6月下旬といえばテニストーナメントが有名だが、この時期はウィンブルドン・スクール・オブ・アートの卒業展が始まる時期でもある。少人数が特徴の学校で作品数も多くはないが、充実度では他校の引けをとらない。

ウィンブルドン・スクール・オブ・アートは1890年に創立された伝統校。ロンドンの中心地から電車でたった15分というロケーションにもかかわらず、緑豊かで静かな環境にある。生徒数はおよそ1000人と、ロンドン芸術大学(旧ロンドン・インスティチュート)やゴールドスミスカレッジに比べて随分規模が小さい。コースもファインアートと舞台美術の2分野のみである。

校風は、アットホームでのんびりとしている。コース内は皆が顔見知りで、制作もマイペースだ。生徒数に対する講師数の割合が高く、全員まとめてある特定の方向に導くというより、一人一人の持っている個性をそのまま伸ばすといった丁寧な指導が実施されている。卒業展はそれを反映して、非常に幅広い作風の作品が共存しているのが特徴だ。今年のファインアートの展示は、キャンバスに絵の具というスタイルの絵画が少なく、映像やアニメーションを使った作品が多く見受けられた。学校自体も今年からメディアコースの充実に力を注いでおり、デジタル・アートが身近な世代という生徒の傾向に合わせ変化しつつある。

 
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アーティスト本人が自分自身の作品について講義を行うという、パフォーマンスを収めたビデオ作品。ドローイングからアニメーションまで、幅の広いジャンルの作品が1時間に渡って紹介される。イギリスの人気コメディアンの影響を受けた、ダークでブラックなジョークが笑いを誘う。
 
タイトルの意味は「落し物」。ロンドン市内2箇所の鉄道の落し物取扱所を訪れて制作された。コンセプトは、「重要性を失い忘れさられたモノに、再び重要性を与える」というもの。持ち主のいない山済みになったベビーカーや入れ歯などを、写真やキャンバスに刺繍を施したもので記録した繊細な作品。
 
雑音を取り除くために電波暗室で使われる電波吸収体を使った作品。竹で組まれた土台の上にはピラミッド形の小部屋が。中に入って声を出しても、吸収されて響かずに不気味な感じ。外部の雑音から遮断された空間の中にいると、妙に知覚が敏感になっている自分に気づく。
 
「その場所で経験されたことを再現する」という空間と経験がコンセプト。卒業展の作品は母校ウィンブルドン・スクール・オブ・アートがテーマ。ウィンブルドンの現在・過去のスタッフ、卒業生の計34名のポートレイトとインタビューを、架空の調査所のインスタレーションで展示。
 
「どこからが人でどこからが物?」という認識の境界線に着目した作品。長方形のボディーに2本の手というシンプルな作りながら、個性を持った人間の様な存在感を出している人形たち。とても居心地が良さそうには見えない彼らに、壁には大きく「あなたは快適?」との皮肉な問いかけが。
 
「ファンタジーという異空間の創造」というコンセプトのとおり、テーマパークのアトラクションに迷い込んだかのような大掛かりでキッチュな野戦病院のセット。中には小さなベッドが並び、消毒薬の臭いが漂う。兵隊や看護婦も生の役者を使って再現するという凝った演出だ。
 
地質学、戦争、昔の絵本など様々な分野から拾い集めたアイデアをコラージュして作り上げられたドリームランド。初めて見るのに、懐かしい雰囲気のする不思議な世界が展開する。A3ほどの紙に細かくびっしり書かれたドローイングと精巧に作られた模型は、見るたびに新しいものを発見できる。
 
ポルノ雑誌のページをひたすら一部を残して消しゴムで消した「Cover to Cover」。費やした時間は5週間。その消しゴムかすが「Colour Field Fresh」。単純な材料と作業から生まれた、強烈なインパクトのイメージたち。人間の欲望の不気味さと滑稽さがむき出しとなった。
 

 

Summer Show 05
Wimbledon School of Art
Merton Hall Road
London SW19 3QA
020 8408 5000
www.wimbledon.ac.uk
2005年6月23から28日まで開催された


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