Monika Sosnowska, Untitled, 2004
Installation at the Serpentine Gallery
© 2004 Monika Sosnowska




「出口はどっちですか?」「そこを右に行って、左に曲って、真っ直ぐです」。黄土色のトンネルの中を歩いていると、方向感覚を失った観客と係員との間のこんなやり取りが聞こえてくる。まあ、迷子になるのも分からなくない。巨大な板を幾何学的に張り合わせて造ったここは、まるで迷路そのもの。ギャラリーのレイアウトが全く変わってしまっていて、自分がどこにいるのかよく分からない。

ポーランドの若手作家モニカ・ソスノヴスカの得意分野は、夢に出てくるようなシュールな立体あるいは空間。それは、開けてもどこにも行けない扉だったり、ごく普通の廊下に見えて半分も行くと天井につかえる先細りの廊下だったり、小さくなったアリスしか住めないミニチュアの部屋だったりと色々。殊に、最後のアリスにはかなり献身的なようで、『Little Alice』という作品を作っているくらいだ。

今回の作品は、その構造とスケールがいかにも建築的なため、先日のグレゴール・シュナイダーの空き家に内装を施した作品(アート・エンジェル)や、ヨーン・ボックのフィールド・アスレチック風のインスタレーション(ICA)を思い起こさせる。でも、勘違いをしてはいけない。ソスノヴスカ自身がこれを「巨大なスカルプチャー」と呼んでいるように、これは法外なサイズの、私たちに小さなアリスの気分を味合わせるスカルプチャーでもある。



Monika Sosnowska, Untitled, 2004
Installation at the Serpentine Gallery
© 2004 Monika Sosnowska

とはいえ正直なことを言うと、私も最初、「これのどこがスカルプチャーなんだ」と思った。が、迷路のところどころに設けられた出口に立ってみて、この疑問は解消された。そこに立つと、迷路の中では分からなかった構造物の造りや輪郭が見てとれる。よく眺めてみると、彼女の作品には建築にしては無駄で馬鹿げた、形重視の傾向が目立つ。抽象的な面で構成されたそれらは、キュービズムの彫刻のパロディーのような印象さえ与える(書きながら、廃案になったダニエル・リベスキンドのV&Aの増築プラン「Spiral」が頭に浮かんだ)。

しかしこの作品が皮肉なのは、作家が「巨大なスカルプチャー」と言いながらも、アリスになってしまった私たちには、容易にそれが分からないところにある。どうあがいても全体を拝むことができない。だからスカルプチャーに閉じ込められていることに気が付かず、アリス同様ただ只管、迷路の中を彷徨い続けることになる。それも、ルイス・キャロルの妙な登場人物が住む世界とは程遠い、ポーランドの70年代の憂鬱をカフカの閉塞感で固めた迷路のなかを。

Monika Sosnowska
041205-050116
Serpentine Gallery, London


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