モマートの火災でチャップマン兄弟の「Hell」など美術品100点以上を失い、落胆していると囁かれていたチャールズ・サーチが活動を再開。若手にフォーカスした展覧会第二弾「Galleon and Other Stories(ガレオン船とその他のストーリー)」を開き、エキセントリックな好みと購買欲の健在ぶりをアピールしている。

展示のハイライトは、サーチが先月28,000ポンドで購入した全長12メートルのガレオン船。ダイナミックかつ精巧に作られたこの船は、中古家具を解体して作ったブライアン・グリフィスの作品。アンティークな素材と形が遠い昔の、海賊の時代へと観る者の想像力を促す。これにカウンティー・ホールのお屋敷めいた内装と、アン・チュウの亡霊まがいの彫刻が加わり、展示室はノスタルジアに満ちた一風代わった民族博物館のような装いをみせている。

 

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小部屋の方は、彼が見つけたばかりの新星達が中心。ロイヤル・カレッジを今年卒業したケイト・マクガイヤは、鶏の又骨(さこつ)22,000本を壁に螺旋状に並べた、気の遠くなるような細かさの作品を発表。マリッジ・ボーンと言われるこのV字型の骨は、先を二人で引っ張って長い方を取った方が先に結婚するという言い伝えのあるものだが、それが8ヶ月分。どんな思いで集めたのだろうか。

同じくサーチ初登場となるマリー・マリンソンは、KFCならぬJFCを作品に。イーストエンドのファーストフード店をモデルにしたインスタレーションには、ばら撒かれたフライドポテトに紛れて、キリストのロゴが載ったパッケージやクー・クラックス・クラン(KKK)の白いフードを連想させるオブジェが散在。おまけにケバブの肉までもがキリストの泣き顔。お堅くなりやすい宗教問題を、学芸会のような軽〜いノリで揶揄してしまえるセンスがこちらっぽい。

 

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このように「Galleon …」も、前回の「New Blood」同様、手作り感を特徴とする若手の立体が中心だが、今回はこれに加えて常設展の方もだいぶ変わった。トレイシー・エミンやクリス・オフィリが廊下から消え、チャップマン兄弟やデミアン・ハーストも小部屋からなくなった。つまり、サーチが最も得意とするYBAたちは、ほんの幾つかの例外を除いて、円形大ホールにすっきりと収まってしまった。

その代わりに増えたのが、リュック・タイマンス、タル・Rなど注目を受ける国外アーティストによる絵画だ。表現主義を思わせる情緒的なものから土臭いフォークロア風絵画まで、ストーリー性を感じさせる作品が小部屋を塞いでいる。また今回、サーチ初登場の新人も5名ほど取り上げられ、ダナ・シュルツや杉戸洋などの作品がボイラールームと呼ばれる白壁の展示室に飾られている。

モマートの火事をYBA主導の狂乱騒ぎにピリオドを打つものとシニカルに捉える人は少なくない。《YBAの美術館》という名目で一年と三ヶ月前に開館したサーチ・ギャラリーで急速に彼らの影が薄れていくのをみていると、その最大の被害者であるサーチ自身、これを受け入れたのではないかと思いたくなる。新たな門出と未来への希望を象徴する「船」で始まる今回の展示は、もしかしたらそんな彼の、前に進まざるを得ない心境を密かに語っているのかもしれない。たとえそれがノスタルジアに埋もれ、先の見えない門出であったとしても。

 

Galleon and Other Stories
040707-0411XX
The Saatchi Gallery

モマートの火災についてはこちら


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