Semi-detached by Michael Landy
Installation at Tate Britain
Photo
: M. Heathcote & J. Fernandes
© the artist



美術館に家が建った。大理石の柱に囲まれた大ホールに、"セミデタッチト・ハウス"と呼ばれる二戸一棟型の家の片割れが聳え立っている。淡いピンク色の外壁に、ところどころ変色した屋根。古ぼけたレンガの煙突に、薄汚れた配水管。いかにもそこら辺の家をそのまま持ってきたような感じだが、美術館という場所柄の為か、このごくありふれた家がSF映画のワンシーンのように違和感をもって眼に映る。実物大にもかかわらず、あたりを圧倒するほど大きく感じる。

テート・ブリテンに現われた「Semi-detached」は、美術作家マイケル・ランディーがエセックス州にある父親の家を再現したレプリカだ。家を写した約300枚の写真をもとに一年がかりで作られた。非常にリアルだが、中に入ることはできない。そのうえ建物は中央で真っ二つに分断され、20メートルくらいの間隔をあけて置かれている。それぞれの切断面はスクリーンとして使われ、ボトルや缶が細々と置かれた棚や日曜大工風のイラストが映像となって流れている。部屋は父親の部屋で、イラストは父親が事故にあうまで趣味で集めていたDIY系のマニュアル本から取ったもの。

この「家」を理解するには、ランディーの父親が鍵となる。今年で64歳になる彼の父親は、トンネル工夫として働きながら一家を支えてきた。しかし今から27年前、ランディーが13歳の時に仕事中に事故に会った。作業をしていたトンネルが崩れ、なかば生き埋め状態になった。幸い一命は取り留めたものの重傷を負い、障害の身となった。以後現在に至るまで仕事には復帰していない。今もこの家で何をするとはなしにただ毎日を送っている。



Semi-detached by Michael Landy
Installation at Tate Britain
Photo
: M. Heathcote & J. Fernandes
© the artist

「僕らを襲った悲惨な出来事」。最近あるインタビューの中でランディーは事故のことをこう振り返っている。「あの事故以来、僕の父は物事に対する関心を失ってしまいました。時間が無限にあっても、何の意味もない。母がいなければ、食べることさえしないでしょう。」「僕たちはいまだに[事故の]結果と付き合っているんです。希望を持てる状況ではないんです」と、27年が経った今でも事故が残した傷跡が消えていないことを語っている。この状況を踏まえた上で家のレプリカを見てみると、家としての機能を失ったレプリカに壊れたランディー一家の姿がだぶって見えてくる。

ランディーは三年前に自分の所持品をすべて処分するという行為に出た。「Break Down」と題されたこのパフォーマンスベースの作品では、ロンドンの繁華街にあるスペースに工業用粉砕機が設置され、仕分けされビニール袋に入れられ目録票に記録された所持品が、二週間に渡って壊され続けた。通行人が見守るなか思い出の品々が、その意味を剥ぎ取られ粉へと姿を変えていった。その後見たTVドキュメンタリーで、身を切られる思いでランディーが最後の最後に処分した物が、事故のあと二度と着ることのなかった父親の羊皮のジャケットだったことを知った。

一切合財を始末したあとは、家を一から建ててしまう。全く逆行している行為にみえながらも、そこには半端を許さないランディーの徹底振りがうかがえる。「作る」「壊す」とその行為は相反していても、それらの行為を通して彼が見ている点は共通しているようだ。それは身の回り品を通じて見ている彼自身の人生、または彼と関わった人々の人生であり、人と物との関係、作られては壊され買われては捨てられるこの世の中における物の存在だったりする。そしてこの「家」も、展示終了後には取り壊されてしまうという。

文:伊東豊子(2004年6月15日)
 © Toyoko Ito, June, 2004

State of Play
040518-041212
Tate Britain, London


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