正確に言うと、やって来たのは彼のパフォーマンス作品、「Reading One Million Years」。過去、ニューヨークを含む、三ヶ国三都市で公開されたこの作品は、ガラス張りの小部屋の中で、一組の男女が延々と24時間7日間にわたって、英語で年号を読み上げるというもの。今回、現在改装中で6月に再オープン予定のサウス・ロンドン・ギャラリーの招待によって、3月29日から一週間、初のイギリス公開が実現した。

この作品の基となっているのは、「One Million Years」と呼ばれる、紀元前998,031年から1961年までが書かれた「過去」と、1981年から1,001,980年までが書かれた「未来」と題名が付けられた、合計20冊の本。この中から、トラファルガー広場では、およそ217,639年分が、16人のプロのパフォーマー達によって交代制で読まれる。

ギャラリー内ではなく、人気観光スポットという公共の場での展示。なかなか野心的な試みですが、果たして人々の反応は?結果をみるべく、フォグレスがインタビューを行ってきました。

先ずは、サウス・ロンドン・ギャラリーのディレクター、マーゴット・へラーさん。「河原温は、現在活躍しているコンセプチュアル・アーティストの中でも、もっとも重要な人物の一人であり、サウス・ロンドン・ギャラリーは以前から彼の作品に携わることに関心がありました」。「トラファルガー広場を選んだ理由の一つは、世界的に有名な作品を幅広い層の観客に観てもらいたいからです」。

お次は、実際に年号を読み上げるパフォーマー。「1時間ひたすら数字を読み続けるのは苦痛なのでは?」と気になるところですが、26歳のオリビア・プレンダーさんによると、「読んでいるうちに冥想状態になり、リラックスできる」そう。人々が周囲に群がり中を覗き込んでいる図は、まるで動物園のパンダ状態ですが、小部屋の中ではほとんど外部の音が聞こえないので、けっこう集中しやすいとか。

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そして最後は、観ている人たち。「高尚過ぎるわ」、「好奇心をそそられるわね」と、60代のイギリス人女性二人組み。続いて、同年代の日本人女性2人組みを発見したので、早速質問。が、「つまらない」の一言で片付けられ、あまりの率直さに愕然。気を取り直しつつ、次はオーストラリアから来ていた家族連れ。「ものすごい忍耐力だと思うけど、時間を無駄にしてるいい例だと思う」と夫婦。

寂しいコメントが続いたので、今度はもっと作品に興味がありそうな20代の女の子をつかまえてみました。ロンドンで美大に通っているイギリス人の彼女は、「面白い作品だわ。トラファルガー広場でやるって、すごくいいと思う」。やっと前向きな意見。この調子で次も・・・と、南アフリカ出身の40代の女性にも聞いてみると、「もしこんなもので金儲けできるなら、世の中狂ってるわよ。何も特別なものはないわね」と、これまたつれない。こんな調子で、午前中のインタビューは終了。

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そして、観光客が去って静かになった夜の広場に引き返してみると・・・観光客と入れ替わりに、仕事帰りやパブ帰りのロンドン子が、夜行性動物のように出没。昼間の観客は一人平均2、3分を作品の前で過ごしていましたが、夜の観客は10分から人によっては30分以上と長め。

先ずは、ブースの中で読んでいる人の交代時に拍手をしていた30代のイギリス人男性二人組みに感想を聞いてみると、「Amazing!」、「Powerful!」、「時間というものをよく捉えた作品だね」「昨年のタワー・ブリッジでの、デビッド・ブレインのクレーンから吊り下げられたガラスのブースでのパフォーマンスはくだらなかったけれど、これはとても意義のある作品だと思うよ」と、なかなか好評。他にも、パブ帰りの若者グループが立ち寄り、その内の一人が「河原温の作品だよ」と友達に説明しだしたりする場面も。あわただしい昼間に比べて、夜は静かに作品との対話を楽しんでいる人が多いのが印象的でした。

個人的な意見に差はあるものの、人々から何らかの反応の引き出すきっかけとなっているという点で、今回のトラファルガー広場での展示は成功したといえるのではないでしょうか。

"Reading One Million Years in Trafalgar Square"
On Kawara
Trafalgar Square, London
8am 040329 - 8am 040405

パフォーマンスは連日24時間
、7日間にわたり公開された。

主催団体:
South London Gallery

 


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