開催前からゴシップに事欠かなかった「New Blood」展。まず2月末にチャールズ・サーチが新しく購入した故ダイアナ妃の肖像画が話題になった。肖像画の作者ステラ・ヴァイン(Stella Vine)がつい最近までストリッパーだったことと、故人を冒涜するかのような野蛮な描写に報道メディアが即座に噛み付いた。

その数週間後には、4年前にヘロインの過剰摂取で死亡し、その死因についてまだ取調べが続いているレイチェル・ウィッティアーを描いた絵を巡り騒ぎが浮上。こちらの作者も同じくヴァイン。本展に出品されると知ったウィッティアーの両親がギャラリーに乗り込んで取り下げを要求。警察もそれに賛同するなどこれまたひと騒動となった。

これらのゴシップが功を奏してか、3月22日のプレス向け内覧会は朝早くからテレビ局や新聞社などの報道陣が集まる賑やかさをみせた。しかし、彼らの関心は会場奥に展示された自作の前で待機するヴァインにもっぱら集中。一方、展示室はひっそりとした空気に包まれたままという二分気味の様相を見せた。

 


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「New Blood」展はサーチ・コレクションが過去18ヶ月間に購入した新作で構成され、そのなかでも副題「New Young Artists」に属す国内外の若手24名が展示の中心を占めている。ニュー・ジェネレーションの紹介という意を含むこの副題には、「Young British Artists」や「Young American Artists」という題名で展覧会を度々開催した90年代のサーチ・ギャラリーを思い出させるところがある。

ニュー・ジェネレーション組みの作品には、かつてロンドン市庁舎だったカウンティー・ホールの古風な内装に合った「サイト・スペシフィック」風の作品が目立つ。なかでも最も完璧なる調和をみせているのが、コンラッド・ショークロス(Conrad Shawcross)の糸紡ぎ機のような立体「The Nervous System」。こちらは足踏水車が先端技術だった時代を思わせる木製の巨大装置。その常識を超えるサイズと目を見張るような華麗さが、カウンティー・ホールの大広間を圧倒している。

ショークロスの装置の横には、その形象的特長に調和するようにベン・メイマン(Ben Mayman)の有機的な縄目模様の立体、マット・カルダーウッド(Matt Calderwood)のトイレットペーパーでできた避難用ロープなどが展示されている。さらにこの調和はブライアン・グリフィス(Brian Griffiths)の馬車にも通じ、まるで市庁舎時代の調度品を壊して作ったとでも言うように、馬車はアンティーク調の机や椅子で出来ている。

 


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見せ場を心得た作品は個室の方にも見られ、昨年ヴェネツィア・ビエンナーレに出品したた土屋信子(Nobuko Tsuchiya)が不思議博士のラボのようなファンタジックな世界を展開。同じくヴェネツィア組みのベーリンデ・デ・ブルーケア(Berlinde de Bruychere)の部屋には、ヨガでもするように身体を捩った馬が、リアルかつグロテスクに展示されている。

作品個々の見ごたえは、このように十分。だが、「New Blood」展全体としての印象となると、話は少々別だ。若手の作品というだけで展示全体をまとめるテーマがなく、展示も常設展示に紛れるように点在してしまっている。「New Young Artists」として新たに加わった作家が24名、作品が65点。これとは別枠で今回加わった新作が31点。常設展示品の中からこれらの作品を見つけ出すのは決して容易ではない。

このフラストレーションを解消し展示を楽しむには、「New Blood」というタイトルを忘れるのが賢明かもしれない。それに代わって、常設展示の大々的な「模様替え」と受け止めて見るのならば、新作も豊富で新旧の相性も抜群、見ごたえのある体験となるだろう。ギャラリーの定番「ホワイト・キューブ」とは一味違う、古風な環境で現代アートを見れるというユニークさ。おもちゃ箱をひとつずつ開けてゆくような館内レイアウト。英国一と言われるコレクターの鑑識眼の効いたコレクション。楽しめる要素は沢山ある。

 


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New Blood
New Young Artists / New Acquisition
040324-
The Saatchi Gallery


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