photo: © 2003 Kuma



テートモダンに陽が昇った。

産業衰退を噛締めるように空洞化した旧発電所。そこに神の恵みとでもいうように陽が降り注いでいる。ふんわりと漂う霧に包まれながら天をみあげると、遥か彼方に遠退いたそこには、人間が哀れなまでにちっぽけな存在として映し出されている。

「イギリス人を馬鹿にしているんですか?」と辛い質問が記者会見で飛んだこの作品のタイトルは「The Weather Project(気象プロジェクト)」。世界中のギャラリーに自然現象を巻き起こしているデンマーク人作家オラファー・エリアソンによるインスタレーションで、イギリス人が二人寄り集まれば必ず話し始めると言われる「天候」がテーマとなっている。

巨大シェルターをターナーの油彩のようなロマンチックな夕暮れ時に変えてしまったエリアソン。だがその素材は、ライト、ドライアイス、鏡と舞台装置などでよく見かけるもの。太陽は半円状のスクリーンとその裏に取り付けられたライトがその正体。それが丸く見えるのは天井一面に貼られた鏡の仕業。霧はドライアイスを使用した噴霧装置の成せる技という具合だ。

この作品の意義は体感にあるというエリアソン。知識という形で頭に潜入したさまざまな先入観や固定観念から自らを解放し、彼が仕掛けた装置のなかに身を置きそれを感覚的に味わうこと、実際に体験して得た認識と知識との違いを知ること、それらがこの作品のポイントとなっているようだ。

それにしてもゴシック教会のように聳えるそこに立っていると、首は自然に天を仰ぎ、「はじめに神は天と地とを創造された」などという言葉が頭に浮かんでしまう。自然現象を作り出しているからといって神になろうとしているわけではないと作家自身は語っていたが、畏怖の念を抱いてしまうような空気がそこには感じられる。

写真:クマ、 文:伊東豊子、October, 2003

Olafur Eliasson
The Unilever Series
031016-040321
Tate Modern


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