Christian Marclay
Video Quartet, 2002
Four-channel DVD projection, with sound
96 x 480 in. (243.84 x 1219.2 cm)
Courtesy Jay Jopling/White Cube (London)


モンローにプレスリー、バーグマンにボガート。今時、ハリウッド映画のクリップを使った映像作品なんて特に珍しくはないが、まるでオーケストラの指揮者のように映画の一大コラージュを作り上げたクリスチャン・マークレイの「Video Quartet」は格別だ。

この映像と音の四重奏は、何千もの演奏や歌のシーンを集めてコンピューターで編集したものを、横一列に並ぶ巨大スクリーン4枚に映したものだ。数秒刻みで切り替わる映像には、ピアノやバイオリン、トランペット奏者などの演奏シーンから、熱唱、絶叫、激突、銃撃といった白熱シーンまでが展開し、時に調和をもって、時に分裂した不協和音となって4枚のスクリーン上を流れ続ける。

作品は一見、支離滅裂なように見えるが、じっくり追ってみると、始まりから中間部を経て終盤部へと展開する三部形式のように構成されていることに気付く。出だしはこれから演奏会が始まることを伝えるように、手書きの楽譜や譜面台が待つステージの映像から始まる。そのあと
ピアノやバイオリンの音あわせが続き、それが終わったところでマリア・カラスの雷鳴のような声が4画面から響き渡り、演奏本番である中間部に入ったことを告げる。

山場である中間部は懐かしの銀幕のスターらが次々と登場する一方で、口笛、警笛、タップ音、クラクション、悲鳴、銃声など様々な音が小気味よいリズムを添える。なかでも一番の見所は悲鳴をあげる女優達の映像が小刻みに流れる場面で、軽快でコミカルな映像の展開に思わず笑いが込み上げてしまう。暫くご機嫌な映像が続いたあとプレスリーが撃たれ、バイオリンが宙を舞い、車が海に突っ込んだところでクライマックスを迎え終盤部へと入り、最後はチェロやトランペットのしっとりとした演奏で終わる。

映像とサウンドを自在に操るマークレーは、音楽と視覚芸術の両分野にまたがるアーティストとして知られている。生まれはカリフォルニア州サン・ラファエロ。幼少年期の大部分をスイスで過ごし、1977年にマサチューセッツ芸術大学に入学するためにアメリカに戻っている。卒業後カリフォルニア州ベイ・エリアのパンク系のクラブでDJを始めたのをきっかけに音楽活動に入り、前衛音楽の大家ジョン・ケージの影響を受けて偶然性を重視した即興演奏のほうへと進んだと言われている。

アーティストとして活動する傍ら現在もDJの仕事も続けている彼だが、DJと聞いて思いつくのが、「Video Quartet」で彼が見せたサンプリングとミキシングの手腕だ。今思い出すと、まるで四台のターンテーブルを操るように4枚のスクリーンを扱っていたように思えてならない。他人の音楽を使って独自の音楽を作り出すDJ特有のアプローチが最大限に活かされている作品と言えよう。

パフォーマンスではターンテーブル12台を同時に操ることもあるという即興を得意とするマークレーだが、そんな彼でも今回ばかりは制作にかなりの時間がかかったようだ。サインフランシスコ近代美術館から制作依頼を受けたあと、ビデオを借りてきてはスタジオで早回しで観るという行動を繰り返し、映像を探すだけでも一年以上かかったという。その後、市販のソフトを使ってのコンピューター編集作業にさらに半年が費やされたという。

音という徹底したテーマのもと抜群のセンスで映画をミキシングした「Video Quartet」は観るたびに新しい発見がある素晴らしい作品だ。だがそれにも増して凄いことは、音楽を観る、あるいは、映像を聴く、という神経細胞のシナプスが交錯するような体験ができてしまうことだ。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2003年8月



"Vido Quarted"
Christian Marclay
030711 - 030830
White Cube



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