Masakatsu Kondo, Birch Woodland 2001
写真提供:David Risley Gallery


近藤正勝の作品は、画家という言葉が持つイメージを裏切らない正統派の絵画だ。分野は昔ながらの風景画で、細かい筆さばきで森や山などの自然が壮麗に描かれている。新緑が眩しい春の草原、枯葉で一面がオレンジ色に染まった林など、そこには「絵に描いたような」という言葉が似合うような、理想郷のような自然美が展開されている。

しかし、彼の風景画は一見写実性を訴える振りをしながらも、私たちが目にする現実の自然とはどこかが違う。まず色調が、フィルターを通して自然を見ているかのように現実離れしている。真っ白の雪から覗く大地が溶岩のように赤かったり、森が完璧なまでに緑に染まった木々で埋め尽くされていたり、別の惑星にならこんな風景があるかもしれないと思わせるような超現実ぶりを感じさせる。

この現実離れした印象は、絵画に近づいていくごとにさらに深まる。彼の風景画は、葉や幹や大地においては塗ったというよりは、まるで筆で判を押したように楕円状の絵の具の集まりで構成されている。そのために絵に近づくにつれて葉や幹がその構成要素である粒子へと分解され、しまいには景色全体がカモフラージュ模様でできたような抽象画へと解体されてしまう。加えて、これら点描の木々や大地に対比するように、池の表面や空が滑らかなグラデーションで描かれているため、違和感がより一層深まり、超現実的なイメージとして目に映ることになる。

絵画の制作には雑誌や書籍からの写真やそのコピーを用い、これらをプロジェクターにかけてキャンバスにトレースしているという。自然界の現実を忠実に表現することよりも、自然のあるべき理想像や典型像に関心があると或る記事に書かれていたように、このあとは彼が頭に抱く自然の理想像や典型像をもとに、一つずつ色が置かれていくのだろう。表現メディアが多様化しコンセプトの重要さが強調される現代アートのなかで、伝統芸術たる絵画は厳しい立場にあるのかもしれない。しかし、彼の光彩離陸なる超現実の前では、そんな厳しい現状などどこ吹く風と思えてしまう。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2003年8月

"Botany"
Masakatsu Kondo
030703 - 030809
David Risley Gallery


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