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ここ数年、日本では美容整形がちょっとしたブームなっていると聞きます。その分野の専門化の手で美人にしてくれるテレビ番組もあれば、それこそ美容院にでもいくような軽い感覚でできるプチ整形もあるそうですが、それもこれも根底にあるのが女子の多くが共有する美人願望と思えば、まあ特に理解できない事ではありません。それに比べ、同じ整形は整形でも、アートプロジェクトという名のもとで、顎を削ってみたり胸を膨らましてみている作家の方がよっぽど謎だったりします。

さて、今回、この謎を突きつけてくれたのが、元スロッビング・グリッスルのリーダー、ジェネシス・P・オリッジとその妻レイディ・Jの二人。この二月にアートプロジェクト「We are but one」の一環として、二人して豊胸手術を行ったということです(上の写真はその後に撮ったP・オリッジのセルフポートレート。ちなみに彼は男性です)。このプロジェクトは、僕たちは一つという意味のタイトルが示すとおり、整形手術によって二人の肉体的特長を近づけていくのを目的とするもの。すでに顔にも少し手がつけられたようで、P・オリッジはレイディ・Jと同じ場所にホクロを、レイディ・Jは彼の輪郭に合わせて顎の形を変えています。この整形プロジェクトはまだ続行中のようで、最終的には男女両者の特徴を寄せ合った両性具有的存在ブレヤー・P・オリッジ(Breyer P-Orridge)が完成するという話。(すでに共同体への再生は始まっているようで、今回の展示では上の作品を含め幾つかがこの名前で発表されていました)

日本ではパンク系ミュージシャンとして知られているP・オリッジですが、ここ英国ではかつて新聞が「sickest man in Britain」と報じたほど、広きに渡って悪名が高かったりします。アートの分野では、まだセックスもコンドームも常連テーマになってない70年代に、ガールフレンドの使い古しタンポンを展示して大騒ぎに。さらには、エリザベス女王の写真と卑猥なポルノ写真とをコラージュした作品を発表し、これがもとで国会にまで召喚されたということ。その後スロッビング・グリッスル、サイキックTVなどのバンドで音楽活動に励む一方で、サタニストと呼ばれる所以でもある宗教団体「Three Temple Ov Psychick Youth」を創設。この団体が幼児に対する猥褻的行為の疑いで取り調べを受けることとなり、疑いはどうも晴れたようですが、結果的には家族ともども英国を離れて暮らす追放者の身となりました。

このように時代とともにスキャンダルを巻き起こしてきたP・オリッジですが、意外にも、マンチェスターで育った幼少の頃はいじめられっ子だったということ。彼の可笑しな名前の半分は、聖書の授業で創世記(ジェネシス)を担当したことに始まり、気弱な少年はそのあだ名をありがたく受け入れるしかなかったといいます。(後ろの名前はもっとずっと後に、食生活の支えとなっていた某食品会社の製品名から取ったものだそうです)その後、Hull大学に進んだものの一年でドロップアウト。ローリングストーンズのコンサートを見にロンドンへと上京。そこで何がどうなってか、アングラなパフォーマンスグループに仲間入りすることになり、内に潜んでいた「sick」な一面が引き出されていくことになったようです。

Breyer P-Orridge
Transgendered Sacred Heart #1, 2003

Expanded polaroid C Print
(From "P-ANDROGENY" Series)
写真提供:A22 Gallery

   

キャサリン・ヤス展の展示風景:「ポートレート」シリーズから3作

初めての本格的個展と言うだけあって今回のショーには、ICAでの「Prostitution(売春)」展('76)で発表された問題のタンポン作品から冒頭の整形プロジェクトまで、活動の要となってきた作品が展示されていました。オブジェ、写真、具象、抽象とその表現は様々でしたが、その多くが彼の最大テーマであるセックスを暗示。宗教的トーンの強い作品も目立ち、今回の整形プロジェクトの記録写真とイエスキリストに扮するP・オリッジのセルフポートレートからなる作品は、昔のキリスト教の祭壇画のパロディのように見えなくもありませんでした。

でも、さて、作品の衝撃度の方はと言うと、彼のドラマチックな人生が語るほどのインパクトはなく、タンポンを使ったオブジェはかつてダリなどのシュールレアリスト達が作っていたオブジェくらいのモダン度でしたし、事のあとのコンドームや汚れた下着が落ちていたトレイシー・エミンの自前ベッドに比べればずっと可愛いものでした。確かに、整形の過程を記録した写真からは何とも毒々しい印象が伝わってきましたが、超アヴァンギャルドなパフォーマンスを写真で説明された時に感じる、祭りの後のような虚しさを感じてしまったことは否めません。30年のキャリアを経てもまだ新境地を開拓しようとするその意欲には敬服しますが、やはり募るのは、ある保守党の議員が彼のことを「文明の落伍者!(wreckers of civilisation!)」と罵倒した、あの70年代に見てみたかったという思いでしょうか。

 

Breyer P-Orridge
Amnion Folds, 2002
Series of 12 expanded polaroids2
写真提供:A22 Gallery

   

伊東豊子(Toyoko Ito)、2003年7月

Painful and Fabulous
(The Lives and Art of Genesis P-Orridge)
030604-030628
A22 Gallery



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