Anya Gallaccio, Beat: As long as there were any roads to amnesia and anaesthesia still to be explored, 2002
Installation at Tate Britain
Courtesy Lehmann Maupin © The Artist
photo: Steve White
テート・ブリテンでの展示風景

氷は溶けて水となり、花は萎れて枯れ落ちる。そこでは腐敗のプロセスが展開され、永遠性を重視しがちなアートというものに水を掛ける。そんな短命な素材を好んで選ぶAnya Gallaccio(アーニャ・ガラッチオ)が、テートブリテンで砂糖とオークの木を使った新作を発表している。

「Beat」はターナーやコンスタブルなど、テート・ブリテンが所蔵する風景画をもとに制作しされたインスタレーションだ。館内のあちこちに展示された英国の田園風景を観て歩き、作品が展示されるホールの特徴を配慮した結果、この作品が生まれたという。

ホールに入ると巨大なオークの群れが視界をさえぎる。それらは根、枝、葉を切り落とされ、ホールを支える大理石の柱と似たような格好で悠然と立っている。その向こうにはオレンジ色とレモン色の薄い板が、カール・アンドレのモダン彫刻のように置かれている。一見プラスチックタイルのように見えるが原材料は意外にも砂糖だそうだ。



Anya Gallaccio, Beat : Now the day is over, 2002
Installation at Tate Britain
Courtesy Lehmann Maupin © The Artist
photo: Steve White
テート・ブリテンでの展示風景


インスタレーションに使われたオークはレディングの森で伐採された樹齢200年の大木という。それらの種が蒔かれた二百年前の英国といえば、いち早く突入した産業革命のまっ最中。都会化が進む現実から目を背け自然にロマンを求めた画家達が、長閑かつ雄大な田園風景をギャンバスにしたためた頃でもある。

当時の画家達にとって樹木が大切なモチーフであったことは言うまでもない。なかでも船の材料に用いられたオークは大英帝国海軍を支える物資として特に重宝され、さしずめ伝統と歴史を象徴する樹木の王様といった存在だったらしい。

そんなオークが手足を切り落とされ、巨大オブジェと化して美術館に押し込められている。ホールの柱と造形的ハーモニー成しているそれらを見ていると、伝統が引っこ抜かれ鑑賞物化されてしまったような虚しさを感じずにはいられない。

時間とともに訪れる素材の変化を好む彼女にしては今回はその点が控えめだが、裏事情を探ってみると、当初の予定では砂糖のインスタレーションで変化が表現されるはずだったようだ。かつて「Freeze」展で溶かした鉛を床に流したように、溶かした砂糖をオークを支える大地のようにホールに流し、徐々に固まっていく砂糖の上を人が歩き回るという風にしたかったらしい。ところが、砂糖を靴につけたまま館内を歩かれては他の作品に影響があるという美術館側の意向によって、この企画は実現されなかった。変化が転じて無変となってしまったが、これはこれでまた印象的だ。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2002年10月

Anya Gallaccio
"Beat"
02/09/16 - 03/01/20
Tate Britain



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