Richard Patterson, Blue Minotaur, 1996
photo: kuma, 2001 ©

無名の若手が主流だったサーチのアンダーウッドストリートのべニューに、メジャー系が並んでいる。トレイシー・エミンやグレン・ブラウンの一昔前の油彩が、オンボロの建物の薄汚れた壁に掛けられている。今でこそ一流ギャラリーの白い壁がキープされている彼らだが、これを描いた当時はこれがあたりまえだったのかもしれない、とふと思う。

展覧会のタイトル通り、風景を扱った作品が壁を埋め尽くしている。が、自然をコピーしたような「風景画」っぽい作品はほとんど無い。そんな作品は、バルセロナの夜景を撮ったCraigie Horsfield(クレイギー・ホースフィールド)のモノクロの夜景ぐらいだろうか。他はみな、模倣やコラージュ、グラフィック化やデジタル操作に特徴づけられ、彼らの関心が「ランドスケープ」という言葉の旧友である写実性から遠いところにあることを感じさせる。



左:David Salle, Figure in a Landscape(部分)2001
右奥:Carroll Dunham, Mound B (部分)1991-2
photo: kuma, 2001 ©

なかでも目立ったのが、90年代の特徴の一つである既存の作品をベースにした「模倣」的な作品だ。David Salle(デイヴィッド・サール)はトマス・ゲインズバラの"Mr and Mrs Andrews "を、カラフルな模様でできた貼り絵風の油彩に仕立てている。Glenn Brown(グレン・ブラウン)はサルバドール・ダリのエロスに満ちた幻想の世界を "Dali Christ"のなかで120%再現している。「ランドスケープ」とジャンル付けするよりは「西洋美術史」と呼びたくなってしまう。

ポスター、新聞、雑誌、テレビ、インターネット、と媒体によってビジュアルが氾濫する今日。 私達の脳裏に焼きついてしまったイメージ情報は膨大だ。実際に見たことがなくたって、知ってるものは沢山ある。おかげで海なんて言われた時にも、浮かんでしまうのは実際に見た風景よりも媒体から得たステレオイメージだったりする。

アーティストにしても同じだろう。美術館を含む様々な媒体で目にしたビジュアル情報が、交錯しながら彼らの記憶に刻み込まれてしまっているのだろう。そう考えると、彼らのランドスケープに既存のイメージやコラージュやピクセレーションが氾濫していたとしても何ら不思議はないような気がする。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2002年6月

"Landscape"
020509-020630
The Saatchi Gallery


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