Royal College of Artの修士コースCurating Contemporary Art の生徒らによる展覧会「Fair」が先週開かれました。アートフェア形式を取るこの展覧会には世界14都市からギャラリー、アートスペース、アーティストらが集まり、地理的にあるいは業界の壁によって普段はなかなか接することのできない彼らの活動に、一般の人が触れる機会が設けられていました。

「Fair」展では、創作とビジネスというバランスの取りにくいアート活動の両翼に焦点が当てられていました。集められた団体は両者の存在を意識しているものばかりで、ユニークな企画で両立を模索している団体もあれば、目的のためにあえて片方を切り捨てているグループもあり、その受け止め方は様々。

さらに展覧会の一企画として、ロンドンの商業ギャラリーHales Gallery(ヘイルス・ギャラリー)とSadie Coles(セイディ・コールス)のオーナーからギャラリー側の話を聞ける機会も設けられていました。ちなみに私が訪れた23日には、Sadieさんが商業ギャラリーからみたフェアの魅力を語ってくれました。世界中からコレクターやギャラリーが集まるフェアは情報交換と人脈作りに欠かせないイベントとというお話でした。そしてさらに、BazelやNYのような国際フェアがないロンドンにおいて今回の「Fair」展はその貴重な第一歩、とキュレーターたちの努力を高く評価するコメントがなされました。

参加団体の中から2つほど印象に残ったものを下にご紹介されて頂きます。

まずはチェコで活動するPas(パス)。アーティスト2名(Thomas Vanek, Jiri Skala)とキュレータ(Vit Havranek)が運営する非営利団体で、2000年の設立以来アーティストやキュレーター、ライターとの連携を通じ様々なイベントを実施。

Pasが今回「Fair」のために用意した企画は、「Videotrip」という観光撮影プロジェクト。一般から参加者を集い、ノルウェー出身のビデオアーティストJesper Alvaer(イェスパー・アルヴァー)と一緒にプラハ市内を撮影して回るというもの。

企画に合ってと言うのでしょうか、PasのブースにはギャラリースタッフではなくEla Toursという旅行代理店の社員が座っていました。今年の5月と9月に撮影ツアーを実施するということで、もしよかったら参加してみませんか?と申し込み書を渡されました。

385ポンドでロンドン−プラハ間の航空券と宿泊費込みというツアーの参加条件は、ビデオカメラを持っていることと、撮影したビデオをアーティストがコピーできることの2点。これらのビデオからJesperがプラハの観光ガイドを制作するということ。アートと観光ビジネス、アーティストと観光客を結びつけるユニークさに興味を感じました。

Kolnerstrasse(コールナストラッサ)はアーティスト2人(Alexander Jasch, Jens Ullrich)がデュッセルドルフに開いた展示スペース。オープンの動機は、若手アーティストが展示&実験できるスペースが乏しいということ。

「Fair」では埃まみれの床に屋根裏部屋から出してきたようなテーブルと椅子を据えた作品が発表されていました。テーブルにはCDデッキが置かれ、窓際のスピーカーから今回のコラボレータであるChristian Jendreiko (hobbypop MUSEUMのメンバーとしても活動)の曲が流れていました。高校の部活動の部室を思わせるような小汚さが美大という場所と合わさって妙に自然に感じられ、椅子(作品の一部だそうです)に座っていたJensさんに思わず、これ作品?って聞いてしまいました。あたりにギャラリーの名前を出したデスクもなかったため(そぐわないので取っ払ったということ)、作品なのかスタッフの休憩所なのか戸惑ってしまったわけです。

公営&商業ギャラリーで定番となっているホワイト・キューブ(White Cube)という空間は、時間、歴史といった概念を排除していて嫌い、というJensさん。この部屋の床やテーブルに積もった埃は、大学中の掃除機をもってきてばら撒いたもので、空間に歴史を生み出すとともに歩き回る観客によって常に姿を変えていく生きた存在。

その埃で目に留まったのが、テーブルの表面に指でなぞられた文字。尋ねてみると、昨日会場を訪れたYoko Onoが書いたものだという。その後JensとJaschは彼女への敬意をこめて水を張ったガラスのコップをテーブルの下に置いたそうです。昔彼女が道端で拾ったガラスのコップを作品に使っていたというのがその理由。相手の活動と考えを考慮したうえでそれに相応しい形で答えるという両アーティストの行動に深い感動を覚えました。

Kolnerstrasseの場合「Fair」展の関心事である創作とビジネスの両立に関しては、あえて創作一本に絞っているよう。カタログに載せられたインタビューの中で、"No more thinking about the economic situation.(経済的な状況についてはもう考えない) "と創作サイド一本でいくという気持ちが語られていました。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2002年3月

"Fair"
Royal College of Artの修士コース:
Curating Contemporary Artの最終学年の学生
によるキュレーション
02/03/19 - 02/03/24


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