ダニー・モニハン, 「えひめ丸」,アネ・ファジオナト

Danny Moynihan, Ehime Maru 2001
Anne Faggionatoでの展示風景
Photo: Courtesy of Anne Faggionato

詩的正義という言葉がある。語源は英語の "poetic justice" で、悪事を働いた者がその行為に相応しい形で懲らしめられるという意味に近いかと思う。隠喩と似た文学的技法であり、文学はもとより芸術に欠かせない概念だ。

Danny Moynihan (ダニー・モニハン)のインスタレーション「Ehime Maru」は、一見、枯山水の石庭を再現したもののよう見える。秩序正しく波打つ小石のカーペットが床一面に広がり、中央には一筋の川が流れている。しかし、近寄ってよく見てみると、川に見えたものは実はおびただしい数の魚の群れであることに気付く。水揚げされた青魚からブツ切りのマグロの肉片までがビッシリと並んでいる。

「Ehime Maru」は、今年2月9日にハワイの真珠湾沖で米軍の原子力潜水艦USS Greeneville (SSN772)と衝突した、愛媛県立宇和島水産高校の実習船のことである

この静寂を乱す魚の姿に、日本の水産業の環境破壊的な行為が象徴的に表されている、と解釈してみるとMoynihanの作品は読めてくる。えひめ丸を沈めた原子力潜水艦はグリーンヴィル(緑の街)であり、搭載されている魚雷は通称フィッシュと呼ばれている。つまり、大海原を荒らす悪鬼が魚を僕とする緑の街により退治されたわけである。この喩えのなかで、えひめ丸は日本の水産業のシンボルとなり、その事故は彼らによる悪行に下された天罰に置き換えられてしまっているのだ。

隠喩を用いある出来事に詩的正義を吹き込んでいるMoynihanの作品の芸術性とアーティストとしての表現能力は評価されるべきである。一種のユーモアも感じられる。しかし、えひめ丸の事故では高校2年生4人、教諭2人、乗組員3人が命を失っている。詩的許容の名のもとに道徳が欠落してしまったようだ。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年12月

Danny Moynihan
"Ehime Maru"
011018-011117

Anne Faggionato
20 Dering Street
London W1S 1AJ
020 7493 6732
www.anne-faggionato.com

地下鉄:Oxford Circus (Bakerloo, Central & Victoria Line)
Bond Street (Central, Jubilee Line)
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