Danielle Arnaud の「A Month in the Garden」は、趣向がやや凝っている。

テムズ川をLambeth Bridgeで渡るとその南岸に、カンタべリー大司教のロンドン宮殿Lambeth Palaceとそれに隣接するSt. Mary-at-Lambethという教会がある。現在はMuseum of Garden Historyとして使われているこの教会の庭には、17世紀の装飾庭園が再現され、そこには当時の著名な園芸家でこの博物館設立のきっかけとなったトラデスカンツ家の墓がある。Vauxhall Festival 2001のイベントとして開かれたこのショーでは、この庭 が展示場所として選ばれている。

16人の現代作家による作品は、博物館の常設展示場と装飾庭園にそのまま紛れ込ませる形で展示されている。これらの作品は、植物や自然にちなんだ主題と
控えめなアプローチのもと、博物館の特殊な雰囲気を損なうのを恐れるかのように展示環境に自然に溶け込んでいる。



Lisa Z. Morgan, Ten Peonies, 2001
10 black plant labels with text
Photo: © 2001, kuma

庭園に忍び込まされた作品の謙虚さは並大抵ではない。Astrid Pawlowizkiの枝に取り付けた電球「Light Matter」も、Sophie Hortonの木の幹を覆うカバー「Untitled」も、Lisa Z. Morganの花壇に差し込まれた立て札「Ten Peonies」も、皆みごとに庭園の中に溶け込んでしまっている。中でも、植物図鑑からとったようなMorganの説明文はいかにも最もらしく、作品だと確信を持つには文章を一つ一つ丁寧に読まなければならないくらいだった。

室内では、作品判別の難易度はかなり下がる。花や自然を題材にした絵画やドローイングなどが、常設展の解説文や展示ケースの間にそれとなく掛けられていているだけで、屋外のようなひねりはない。部屋の奥には、鮮やかなステンドグラスと並列して幾何学模様が織り成すイメージが映しだされている。Helen Maurerの作品で、ガラスを組み立てて作った庭の風景をOHPを用いてを壁に投影したものだ。ライトで照らされた新旧のイメージの共演に面白みを感じるものの、庭で体験したような意外性はない。



Helen Maurer, Light Lounger, 2000
projector and glass
Photo: © 2001, kuma

巧妙に隠された作品を捜して、こうして古びた教会と庭園の中を歩き回っているうちに、最近V&Aで行われたGive & Take展のことが頭をよぎった。とても似ている。両者とも、現代アートが博物館のコレクションに侵入する形式をとり、鑑賞に当たっては、観客が見取り図を頼りに作品を捜して歩くというアプローチをとっている。歴史的重みが感じられる両博物館のコレクションも、現代美術とは一見縁が薄いように見えながらも、実はその影響力は大きいという似た性質を見ることができる。

しかし、このような類似点はあるものの、「A month in the garden」の作品には、新ミーツ旧にありがちな対立的な姿勢は不思議と感じられない。Museum of Garden Historyのコレクションとの調和を保ち、観客を草花の世界へと導いていく作品群からは、伝統や歴史への言及や反発とは違った、園芸という枠組みのなかで何かを表現をしようとするアーティストの素朴な気持ちが伝わってくる。

また、「庭」という作品の展示には珍しい環境を選ぶDanielle Arnaudのキュレーションからは、現代アートが「アート」という特別なものではなく、生活や文化に自然に溶け込むことの出来るごく普通のものであるというメッセージが伝わってくる。自分の家をそのまま展示場所として使っている彼女のLambeth Northのギャラリーも含め、彼女の場所へのこだわりには、美術館やギャラリーで定番となっているアートを環境から隔離する「白い壁」への抵抗感みたいなものが見受けられる。Vauxhall Festival 2001という地域コミュニティの祭典の一部である今回のショーにとって、環境との融合によって生まれたこの身近さこそ、訪れる人たちの心を惹きつけるキーであるかのように感じられてたまらない。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年8月



"A Month in the Garden"
An Exhibition at the Museum of Garden History
010701-010729

会場:
Museum of Garden History
St Mary-at-Lambeth
Lambeth Palace Road
London SE1 7LB
地下鉄:Lambeth North (Bakerloo Line)
月―日1030-1700

展示会についての問い合わせ先:
Danielle Arnaud
123 Kennington Road
London SE11 6SF
020 7735 8292
www.daniellearnaud.com




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Astrid Pawlowitzki, Light Matter, 2001
glass bulbs and dried flowers
Photo: © 2001, kuma

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