今やテレビのような存在のInternet。Eメールはもちろん、チャット、情報収集、ショッピングにバンキングなどとすっかり生活の一部となってしまった。当然のことながらアーティストや美術館へのインパクトも大きいようで、大御所とも呼べるTate Britainが今回「Art and Money Online」という企画展を開いてしまったくらいだ。

このショーでは「Internet Art (インターネット・アート)」という基本的にはインターネット上の情報を用いた作品3点が展示されている。「Internet Art」というとネット上で見れるデジタルフォーマットの作品を連想してしまうが、実際のところニュアンスはちょっと異なりインスタレーションとしてギャラリー内に展示されている。まだアナログ時代にいるTate Britainの来館者達にインターネットのカルチャーを伝えるためなのか、デジタルとアナログをミックスした作品が目立つ。

まず、ロイター社の株式市場データを用い今回展示室一つをプラネタリウムにしてしまったのがLisa Autogena とJosua Portway。インターネットのここ数年の現象「商業化」に焦点を当てたこのインスタレーション「Black Shoals Stock Market Planetarium」では、星ひとつひとつが株式市場に上場している会社に相当する。株の売買が行われる度に、インターネット上のロイターのデータを介して星が点滅し、株式市場の忙しない動きを表す仕組みになっている。ポエティックで現実感に欠けているが、逆にそこが実際は多くの人にとって他人事である株式市場を反映しているようでいて面白い。


Lisa Autogena & Joshua Portway, Black Shoals Stock Market Planetarium, 2001,
Photo: Courtesy of the artists

Jon ThomsonとAlison Craigheadの場合、ホームページそのものが作品だ。壁に設置された巨大スクリーンにはCNN(ケーブルニュースネットワーク社)のホームページが拡大表示され、その前にはタッチスクリーンを埋め込んだコントロール用の台が置かれている。ここでインターネットサーフィングでもしろということなのだろうか。戸惑っていると係官が、「メランコリー」や「ドラマチック」などとかかれたメニューから、音楽を選べるようになっていると教えてくれた。これらの音楽、ニュースの内容に合ったムード音楽をとアーティストがCNNのページに付け加えたものだ。とてもキッチュだが、実際にこういうキッチュなアプローチで情報配信が行われているのが今のインターネットなのだから、そこは当然仕方がない。

これと対照的にレトロ感が溢れているのが、その奥に展示されたRedundant Technology Initiativeの「Free Agent」だ。コンピュータスクリーンを縦横6台ずつ積んだインスタレーションには、黒い画面にグリーンの文字が光り、一昔前のオフィスを思わせる。モニターは小さく古ぼけてみえ、文字はコードっぽい。古く見えて当然だ。実際、使い古しなのだから。このグループ、インターネットユーザー間で長年支持されてきた理想「情報はタダで」を実行している人達で、ハードウェアは企業からの不要品、ソフトはオープンソース、コストは自分達の労働だけだという。作品もインターネット上で公開し、コピーレフト的発想でコピーしようが使おうが自由だという。この概念は、作品の複製や著作権に敏感なアート界と一線を隔するだけでなく、メディアとするインターネットの文化を反映していて興味深い。

全体的にインターネットの商業化、それもパブリックスペースであるインターネットの企業による汚染といった意味での商業化、に対する批判的姿勢が強く感じられた。確かにインターネットには他のメディアにはないユートピア的な雰囲気が蔓延しているため、今回のアーティスト達の主張はよく理解できる。しかし、このインターネット、元を辿れば冷戦という現実の中、米国で開発された軍事的産物であることは周知のことだ。どうもこの事実は今回のアーティストとキュレータの意識からは漏れてしまったようで、インターネットカルチャーの全体像がレフトウィング的な思想に埋もれてしまっているように感じらずにはいられなかった。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年6月

 

"Art and Money Online"
The 2001 art now
Tate Britain
010306-010603

Tate Britain
Millbank
London SW1P 4RG
020 7887 8008
www.tate.orge.uk

地下鉄:Pimlico (Victoria Line)
月−日:1000-1750


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Redundant Technology Initiative, Free Agent, 2000-2001
Photo: Courtesy of the artists


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