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遺影を思わせる黒縁の額が二つ壁に掛かっている。中には黒を背景に灰色に身を包んだ男と女が悲痛な面持ちで映っている。しばらくすると、静止していたかに見えた男女の顔面がじわじわと歪み上体もよじれ、二人の苦悩が時間軸から外れた静寂の中でゆっくりと展開されていく。ビデオアートの巨匠Bill Violaの新作「The Silent Mountain」(2001)だ。

ビデオという感じは不思議としない。ドライなポートレートという言葉もその苦渋をなめ尽くしたような姿にはどこかしっくりとこない。TFTスクリーンの中の人物はいかにもそこら辺にいそうな普通の男女なのに、伝わってくる重苦しい悲壮感はどこか昔の宗教画に通じるものがある。そういえば、二枚のフレームが蝶番で繋がれているところも、どことなくルネサンス期の二枚折の祭壇画に似ている。




Bill Viola, Catherine's Room, 2001 から第4番目のフレーム
Photo: Courtesy of Anthony d'Offay Gallery

隠遁生活のようなシーンが左から右へ展開する「Catherine's Room」(2001) からも似たような印象を受けた。小さなスクリーン5枚から成るこの作品には、自室で過ごす女の朝から就寝までの生活が五つの時に分けて映されている。ビデオ特有のドキュメンタリー的なところはなく、一日が一生を暗示しているようなシンボリックな演出とコマ分けされたストーリー展開は、どこか多翼祭壇画に組み込まれたキリストや聖人の人生などを綴ったパネル画といった風情に仕上がっている。



Bill Viola,Five Angels for the Millennium, 2001からDeparting
Photo: Courtesy of Anthony d'Offay Gallery

しめやかなナショナルギャラリー調の1階とは打って変わって、ビデオ5作から成る「Five Angels for the Millennium (2001)」が展示された2階は映画館ばりだ。巨大スクリーン5枚からは海面下の神秘的な世界の映像が、サウンドシステムからは波や泡の轟音が流れてくる。何も起こらない画面を前に根気強く待っていると、白い服をまとった男の体が死体のようにゆらゆらと現れ、泡の渦に吸い込まれるように轟音とともに一瞬にして消え去る。ビデオ「Passing」などでお馴染みのシーンだが、鮮烈なイメージと迫力のサウンドは感覚を釘付けにするのに十分だ。

ビデオという単一のメディアにもかかわらず、表現方法は両極端という今回のViolaのショー。内容の神秘さと卓越した技術にこのコントラストが加わり、久しくない満足感を味わった。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年6月



Bill Viola
"Five Angels for the Millennium and Other New Works"
010502-010721

Anthony d'Offay Gallery
23 and 24 Dering Street
London W1
020 7493 4443

地下鉄:Oxford Circus (Bakerloo, Central & Victoria Line)
Bond Street (Central, Jubilee Line)
月−金1000-1730 土1000-1300


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