Void Galleryの裏庭に掘られた墓穴に立つBuckleyさん。
photo: kuma, 2001©

墓堀りとアート。大概の人には「いったい、何の関係があるの?」と思えるほどミスマッチに聞える言葉の組み合わせだが、アイルランド人アーティストDenis Buckley (デニス・バックレー)にとってはそうでもないようで、この日もギャラリーVoidの裏庭でお墓を掘っていた。

ギャラリーの中を突っ切って裏庭に出ると、雑草と砂利に囲まれた庭の真中に大きな穴が掘り起こされている。そう、墓穴だ。深く掘られた両サイドからは、たった今まで作業に使われていたスコップがそれぞれのび、中央には巨大な石の塊がまるで埋められた棺のようにで〜んと陣取っている。

唖然として見ていると、ちょっと予想外のことがあってね、とBuckleyさんが話しかけてきた。掘ってたら、たまたまその場所に大きな石が埋まっていて、それ以上作業を続けることが出来なくなってしまったという。穴の中央を占める例の石の塊のことだ。なるほど‥と納得する一方で、「なんでまたこんなことを?」という疑問が頭のなかで膨れ上がり尋ねてみた。

墓を掘るのは今回が始めてだという。別に自分自身の墓を掘っている訳ではなく、墓を掘るという行為を通して世の中に存在するものの儚さを考えてみたかったという。存在する或いは生きるということは、着実に古くなり年をとり最終地点である墓場へと一歩一歩近づいている、ということを考えてみたかったということのようだ。

ここ英国では墓堀りという仕事は長年アイルランド人達が従事してきた労働だった、と彼は続ける。近年ではハイテク技術系労働者として入ってくるケースが多くなりすっかり情況は変わったものの、19世紀以来長年に渡り彼らが英国人の墓を掘ってきたのだという。かつて自国の人たちが強いられた労働を再現するというBuckleyさんの行為は、彼らに対するオマージュとも、また彼らの運命を弔い開放するための儀式とも受け取れる。

この弔いと開放の行為、そのメッセージはアイルランドという枠を越えどの国や社会にも存在する人種差別という社会問題を突いているように思える。人種間の対立や確執といったことが悲劇的な殺人事件に発展することが珍しくないここロンドンでは、かなり重みのあるメッセージに感じられる。

伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年6月

 

"A Grave Dug for Freedom"
Denis Buckley
010427-010506

Void Gallery
511 Hackney Road
London E2 9ED
020 7729 9976
www.voidgallery.com

地下鉄:Bethnal Green (Central Line)
バス:26, 48, 55
金−日:1200-1800


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