フィルム「City Self/Country Self, 2000」から:画面の人物は都会人に扮するRodney Graham自身

City Self / Country Self, 2000
Lisson Gallery での展示会風景、photo: © Kuma, 2001



Rodney Graham の作品は難しい。作品の内容はどれを観ても単純であり、幾つかのメディア(映画、写真、音楽)に対してのオマージュ/反論として解釈することができる。共通点としては、全て19世紀以降に開発された機械的な複製が可能なメディアであり、ベンヤミン的な解釈にも誘惑されやすい。使用されている原理も理論的な無限ループや、ビジュアルなコントラディクションやユーモアが共通していることが言える。色々な解釈がされているが、彼自身からのコメントはほとんど皆無である。

Lisson Gallery(リッソン・ギャラリー)の地下の展示場に設置された「City Self / Country Self」(2000) は35mmのシネカメラで撮影された短いコスチューム劇である。オリジナル・フィルムをDVDへコピーし、無限ループ化することにより、つなぎ目が見えない様こしらえてある。テレビや映画同等の仕上がりに出来ており、更にサラウンドシステム等を取り入れたことにより、映画館的な効果が出ている。微妙なのは内容である。

19世紀の町並みを連想させる背景の中で二人の男達が交互に写される。一人は田舎者の格好をしており、もう一人は都会の流行服を身に付けている。教会や懐中時計が12時正午を秒読みするなかで、二人は出会いに向かって歩きつづける。時計が正午になると同時に都会人は田舎者の尻を走り蹴りする。路上に落ちた帽子を田舎物が頭に戻す所でフィルムは元に戻り、同じ出来事が永遠に繰りかえされる。

彼の以前彼の映画系作品も同じく無限ループを適用しており、ここに一つのテーマを感じる事ができる。更なるヒントは映画が展示されている部屋の奥に設置されていたガラス・ケースの中にあった。赤いガラスの下に収められた本はタイトルページに開けられていて、"Images qui succedent a la contemplation d'objets d'un grand eclat ou meme d'objets bien eclaires"が読むことができる。この本の作者Joseph Plateau (1801-1883) はフェナキスタスコープ(phenakistascope)と言う銀塩式動画(映画)が発明される前に流行った一種の紙芝居的な動画を可能にする玩具だ。この手の玩具は全て数十枚の絵を回転式の裏地に固定し、絵と絵の間又は前に開けられた隙間からのぞくことにより、動く絵の錯覚を楽しむ物である。


フェナキスタスコープ

東京の恵比寿にある東京都写真美術館にこの様な玩具が展示されていたことを覚えているがその横にあったのがカメラ・オブスキュラである。過去に彼は「Millennial Project for an Urban Plaza 」(1986)で都心の広場に植えられた木が見える建物の中にカメラ・オブスキュラを造り、複数のレンズを通して写し出された画像を観察する一種の劇場を提案している。更に「Camera Obscura Mobile」(1996)と言う題名の作品では、19世紀の郵便用馬車を改造して作成した「移動式カメラ・オブスキュラ」だった。最近の無限ループを使った映画のシリーズもフェナキスタスコープを介して、銀塩カメラの前の時代へつながりを意味している様である。特に今回の作品の中では、時代設定が19世紀の初頭であり、ちょうど産業革命が人口を田舎から都会へ移動し始め、社会に変動を起こし、カメラ・オブスキュラやフェナキスタスコープから銀塩カメラの原型となる技術が発明された時代でもあった。そもそもこの様な課題は、ベンヤミンいわく機械的な複製に纏わる物では無く、どちらかって言うとJonathan Craryの Techniques of the Observerで指摘されている論に近いものでは無いかと思う。彼のアイデアは銀塩カメラの発明以前にも現実の複製と記することの出来る技術が存在しており、その様な画像に対しての感覚は文化の中に定着していたと言う説である。Rodney Graham が難しい理由はベンヤミン論は最近の社会系美術評論に多く広がっていて、解釈の際適用すると作品が新メディア対して悲観的な立場をとっている様に見えるからだ。Craryの説は未だに専門的な分野でしか流通していないがGrahamの動機に方向性を求める際参考になることは確かである。

美術史を学んだ後、写真、映画や音楽CD等を通して活動を続けるアーティストとして、現代美術と過去の美術のメディアによるパラダイム・シフトの原点にフォーカスを当てるのは正統派を意味するのかもしれない。

© クマ、2001年1月


Rodney Graham, 'What is happy, baby?'
001207-010127

Lisson Gallery London
52-54 Bell Street & 67 Lisson Street,
London, NW1 5DA
020 7724 2739
http://www.lisson.co.uk

地下鉄:Edgware Road (Bakerloo, Circle, Hammersmith&City Line)

月-金1000-1800、土1000-1700


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