12月23日はクリスマス用の買い物が出来る最後の日。ウエスト・エンドでは、華やかに飾られた名門店の中を色鮮やかな包みを抱えた人達が・・・って言うところなんだけど、僕はそうゆうのが苦手だ。ショッピングって名目で家を出たので、ICAの本屋さんでプレゼントを探そうと思いながらThe Mallへ向かった。着いたら、雑誌TimeOutで何日か前読んでいた、オランダ人アーティスト、Aernout Mik(アーノウト・ミック)の 「3 Crowds」の展示中で、プレセントのことはすっかり忘れて展示の方へ足を向けてしまった。

展示会は三部のビデオ作品から構成されていて、スクリーンとインスタレーションのコンビでディスプレーされていた。最初の部屋では、気圧ポンプとゴム素材を用いた「呼吸」している壁が入り口に設置されていた。これが、その先で放映中のビデオで使われているレンズのズームの動きと妙に波長が合っていて、調和したテンポを感じさせる(作品名「Lumber」)。映されていたシーンには、泥沼化した地面に人が横たわったり座ったりしていて、僕が行った年のグラストンベリー・フェスティバルを連想させた。

最初の部屋から出るといきなりICAの喫茶店の中。「なんだこれだけかァ?」って戸惑っていると、先の方に「こちらへ」って目印があり、展示会は二階に続く。

Pinataって言うと、メキシコやカリフォルニアではお祭りやクリスマスの時子供たちが目隠しをしてスイカたたき感覚で割る、お菓子が詰められた人形のこと。Mikの「Pinata」は中年のオッサンやオバサン達が真剣な顔して、一部屋の中で家具や石膏の物体を叩き壊しているシーンを二台のビデオ・カメラで映した作品。この作品も一種のテンポが保たれていて、一定の時間毎に上からぶっかかってくる土を無視して、一生懸命宗教的な熱意で破壊って言う行動に集中している人間の姿が目に染み付く。確かにお祭りのPinataも昔は宗教的役割があり、宣教師達が中南米の儀式とキリスト教のお祭りを合体させ、信仰と同時に広まった行事だった。

もっとも印象深かったのは、三作目の「Sliding Room」。遠近感覚を強調させるように造られた細長い通路の先に一台のvideo画面が置かれ、どこかの壁に掛かっているろう人形の頭を映している。通路の壁の裏からは、人が動いている音が聞こえている。カメラがゆっくりとズーム・アウトするとある部屋の一角が見えてきて、そこに人がいる。更に見続けると、壁の向こうから聞こえてくる音は録音ではなく、実際に人がいて、一種のperformanceであることが解る。最近DVD等でサラウンド・システムやサブ・ウーハ系の音響効果に慣れているせいか、人気を感じるまで時間がかかった。

時間と距離で離れた出来事をビデオが観客に近づけるのではなく、観客と近くの出来事との間に距離を生んでいる。作品を生に演じることで身近な経験を生むのではなく、壁をつくっている。作品と観客、その関係は何か?聞き飽きた乗りだけど「Sliding Room」からはこんなことを新たに考えながら出てきた。12月23日ということもあり、ICAには全く人がいなく1時間半程ほぼ一人で見て回ることが出来た。作品を味わう環境としては最適だったと思うが、今回のタイトルには相応しくない感じもする。クリスマス・ショッピングの人ごみは毎年経験できるが、Mikの「crowd」を独り占めする機会は今後ないだろう。

クマ、2000年12月


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Aernout Mik展、ICA

3 Crowds展, Aernout Mik

001201-010107
平日1.50GBP, 土日2.50GBP,
会員無料

ICA Institute of Contemporary Arts
The Mall, London SW1 5AH
020 7930 3647
http://www.ica.org.uk

地下鉄:Charing Cross (Northern & Bakerloo Line), Embankment (Northern, District & Central Line)

開館時間:平休日1230-1930