アートと出会う場と言えばまず美術館というのが一般的かもしれないが、現代アートの場合はコマーシャルギャラリーの方が面白い場合がよくある。日本語に訳すと画廊になるが、ここ数年ロンドンでは「画廊」という言葉がミスマッチに感じられるようなニュータイプのギャラリーの進出が目覚しい。今回訪れたギャラリー、現在Marc Quinn展を開催中のWhite Cube 2はその代表格と言える。

White Cube 2 (ホワイトキューブ2) はデミアン・ハースト(Damian Hirst)やトレイシー・エミン(Tracy Emin)らヤングブリティッシュアーティスト達のディーラーとして有名なJay Jopling(ジェイ・ジョップリン)が去年の春オープンした、Duke Streetのスペースに継ぐ二軒目のギャラリーだ。1920年代の工業用建物を改造したもので、その広々とした真っ白のスペースには、作品が完璧なライティングのもとゆったりとした間隔で並ぶ。受付にはアーティストに関する資料とカタログが閲覧用に用意され、キュレータに質問をしている若い学生風の人達の姿が目に付く。画廊というよりは美術館っぽい印象を受けた。

さて今回のショーでは、自分の血液を用いたセルフポートレート彫刻で有名なイギリス人アーティスト、Marc Quinn(マーク・クイン)の新作の絵画と彫刻が展示されていた。展示室に足を踏み入れると、四角い部屋をぐるっと取り囲む鮮やかな色彩の一連の新作絵画(Italian Landscape)にまず目が行く。Quinnは以前に満開の花々で溢れる花壇をそのまま冷凍保存してしまうという突飛な作品を発表している。今回のItalian Landscapeにはこの 凍った花壇を撮影した写真が使われている。写真特有の色あせを克服するために新開発されたPermanent pigment(不変顔料)を用いキャンバスの画布に印刷された作品は、写真とも絵画とも呼べるようで、従来の枠にそう簡単には収まらないようだ。

サラッと見ることのできた絵画に対し、彫刻の方はかなり重みがあった。今回展示された3作の彫刻のうちメインルームに置かれた2作は、Quinnが1999年以降取り掛かっている切断手術体験者を題材とした一連のポートレート像に属す。最初の作品Alison (8 months)は、アーティストが実際に出会った両腕がなく足が異常に短い妊娠8ヶ月の女性の裸体像だ。台の上に腿までしかない両足を投出し、無防備に座っているその姿はかなりショッキングだ。次の作品Alison Lappe and Parysでは、産後のAlisonと息子Parysがどことなく聖母子像を思わせるポーズと穏やかな雰囲気で模られている。二作とも、ギリシャ彫刻を思わせる純白の大理石とその滑らかなラインが、クラシック彫刻の理想美とはかけ離れた哀れな肉体を強調する結果となっている。この技巧と題材の摩擦によって生じる緊張感が作品にシュールな雰囲気を与えているように感じた。

Reincanateと題され花瓶をあらわした残りの一作は、Quinnお得意の冷凍血液による彫刻だった。入り口近くに設置された冷凍庫内に収められたQuinnのワイン色の花瓶からは真っ白い一輪の蘭がスッと顔をだし、その意外な美しさに一瞬気味の悪さを忘れてしまった。

伊東豊子(Toyoko Ito)、2001年1月


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White Cube 2、Hoxton Square
White Cube 2、 photo: © toko, 2000